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有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)
更新日 : 2023年9月29日
公開日:2021年11月26日
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有棘細胞がんについて
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表皮有棘層の細胞が癌化する皮膚癌で、基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚癌です。古くは広い範囲のやけどのあとから発生するものや放射線照射後の慢性皮膚炎から発生するものが多かったのですが、近年は紫外線の影響を受けた頭皮、顔面の皮膚に発生するものが増えています。その他に慢性炎症、ウイルス、放射線などが関与していることがわかっています。早めに専門医を受診して診断がつけば90%は手術だけで治癒が期待できます。
診断
治りにくいびらんや潰瘍、紅色の結節で出血しやすいもの、硬い角化性結節などが出現したら有棘細胞がんを疑います。病変が大きくなると浸出液や悪臭を伴ってくることもあります。見た目の所見から有棘細胞癌を疑った場合、生検を行い病理組織診断により確定診断します。
治療
通常病変辺縁より0.5~2cm程度離した手術により切除することが一般的です。基底細胞がんと同様に切除後の皮膚欠損が大きく、傷を縫い閉じることが難しい場合、再建術(植皮もしくは局所皮弁)を行うことがあります。
病変の大きさや深部への広がりの程度によって、リンパ節転移をきたしている可能性が疑われる場合、センチネルリンパ節生検という検査を組み合わせ、所属リンパ節転移の有無を判定することがあります。また明らかな所属リンパ節転移がある場合はリンパ節郭清も併せて行います。
放射線治療は手術に比べ根治率はやや劣りますが比較的高い効果があることが示されており、切除が困難な部位に発生した例や、年齢や合併症などで手術が難しい場合に選択されることがあります。近年では有棘細胞癌でも抗がん剤と放射線治療を同時に行うと治療効果が高まることが示されており、根治切除が難しい症例に対して放射線化学療法を行うこともあります。
化学療法は手術治療が不可能な進行例や遠隔転移をきたした例に適用されます。
転移をきたす例が稀であるため、新しい抗がん剤の開発が遅れており、手術できない場合やがんが再発、転移して広がっている場合に治療できる病院は限られています。そのような中、当院では現在抗PD-1抗体による薬物療法の臨床試験を実施しています。
希少がんリーフレット
執筆協力者
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- 山崎 直也(やまざき なおや)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
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- 高橋 聡(たかはし あきら)
- 国立がん研究センター東病院
- 皮膚腫瘍科
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- 並川 健二郎(なみかわ けんじろう)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
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- 緒方 大(おがた だい)
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
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- 中野 英司(なかの えいじ)
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科