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乳房外パジェット病(にゅうぼうがいぱじぇっとびょう)
更新日 : 2023年9月29日
公開日:2021年11月26日
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お知らせ
(収録日:2023年4月14日)
★「オンライン 希少がん Meet the Expert」【第14回 乳房外パジェット病】を一部動画公開しました。
乳房外パジェット病について
アポクリン汗腺というにおいのする汗をつくって出す部位の細胞が変化して発生すると考えられています。「がん」という名前がついていませんが、がんの一種で、典型的な場合、外陰部や肛門の周りまたは腋窩にできて何年もの長い間、表皮の中という浅い部分で大きく広がります。真皮に浸潤すると転移する力をもちますが、リンパ節転移を起こした場合の手術方法の確立が遅れていることや、リンパ節転移が多発したり、内臓転移を起こしたりした場合の抗がん薬による治療方法の開発がほとんどされていないため、このように進行した場合の治療経験のある病院が有棘細胞がん以上に限られています。乳房外パジェット病は70から80歳代の高齢の患者さんの多い病気です。そして60歳代以下の若い人に発症する場合、高齢者に比べ真皮に浸潤する時期が早く、リンパ節転移を起こしやすいことが考えられ、注意が必要です。
診断
多くの例が外陰部(尿路や生殖器の出口付近)や肛門の周りに生じることから、発症当初は見た目だけで頻度の高い陰部湿疹や真菌(カビの一種)感染などの疾患と区別することが難しい場合があります。そのため、外用薬などで状態が改善しない場合は生検による病理組織診断で確定診断します。
治療
通常病変辺縁より1~2cm程度離した手術により切除することが一般的です。切除後の皮膚欠損が大きく、傷を縫い閉じることが難しい場合、再建術(植皮もしくは局所皮弁)を行うことがあります。病変の大きさや深部への広がりの程度によって、リンパ節転移をきたしている可能性が疑われる場合、センチネルリンパ節生検という検査を組み合わせ、所属リンパ節転移の有無を判定することがあります。所属リンパ節に転移がある場合は転移の程度によりますがリンパ節郭清が必要です。本疾患はときに病変の境界を見極めるのが難しい例があり、再発や転移も少なくありません。
リンパ節転移が広範囲に及んでいる場合、手術との組み合わせや単独で放射線治療を行うこともあります。またまれですが、根治的な手術療法が困難な場合や臓器転移がある場合は、化学療法を主体とした治療が行うこともあります。
◆機能温存手術について
乳房外パジェット病は病気の発生する部位の特性上、がんの根治性と機能(肛門や尿道の排泄機能や性機能)温存という2つの観点から治療を選択する必要がある疾患です。
当院では数多くの治療経験から、可能な限り機能温存を重視した治療選択を行うよう心がけています。その一つの試みとして、従来であれば人工肛門を増設し、根治性を求めていた例に対し、内視鏡治療との併用で肛門機能を温存しつつ根治的な切除を行う治療法を症例により取り入れています。
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執筆協力者
- 山崎 直也(やまざき なおや)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
- 高橋 聡(たかはし あきら)
- 国立がん研究センター東病院
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- 並川 健二郎(なみかわ けんじろう)
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