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悪性黒色腫(メラノーマ)
更新日 : 2023年9月29日
公開日:2021年11月26日
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お知らせ
(収録日:2023年1月20日)
★「オンライン 希少がん Meet the Expert」【第6回 悪性黒色腫(メラノーマ)-最新の治療と副作用対策-】を一部動画公開しました。
悪性黒色腫について
悪性黒色腫はメラノサイトという細胞が癌化して発生する悪性腫瘍です。人種差があり、白人では頻度の高い疾患ですが、日本人は10万人あたり1~2人とされ希少がんとして扱われています。多くは褐色~黒色の色素斑や腫瘤として見られます。良性のほくろとの区別が重要です。一般的に非対称で不規則な形、病変境界の不明瞭さ、色調の濃淡差、大きさがやや大きい、表面が隆起しているなど良性のほくろといえない所見を有していることが多く、これらの所見を総合的に加味して診断します。まれに色素の少ない赤色調の病変があり、診断が非常に難しい場合があります。
皮膚の悪性黒色腫
古くから見た目の特徴により悪性黒子型、表在拡大型、結節型、末端黒子型の4つに分けて扱われてきました。近年では紫外線に暴露された程度などによって分ける新たな分類法も用いられていますが、基本的には治療法に大きな差はありません。
皮膚の悪性黒色腫は白人には多く日本人には少ないため、治療方法は海外で確立されたものが多いですが、日本人特有のきめ細かさを加えた諸外国以上の方法で治療を行うことを心がけています。
粘膜・眼部の悪性黒色腫
粘膜・眼部悪性黒色腫は鼻腔・副鼻腔などの頭頸部粘膜、食道・直腸などの消化管粘膜、尿道・膣などの尿路生殖器、眼瞼結膜、脈絡膜などの眼部にも発生することがあります。欧米に比べアジアではこの部位に発生する悪性黒色腫の割合が高いことがわかっています。それでも1つ1つの臓器に発生する悪性黒色腫の数は少なく、多くの診療科にまたがっ
て診療を行ったり、情報の共有をする必要があり、また手術方法、放射線治療、薬物療法すべてについて、熟知している専門家が限られています。このため、これらは皮膚腫瘍ではありませんが、私たち悪性黒色腫を熟知している皮膚腫瘍科医が主体となる必要があると考え、日々診療に当たっています。
治療
悪性黒色腫には病状の進行度を判断するために病変の厚さ、潰瘍の有無、所属リンパ節・他の臓器への転移の有無などの程度により治療法がことなります。
臓器転移を生じていない例では手術による切除、所属リンパ節の生検もしくは郭清術、および術後補助療法が行われます。病変は境界より0.5~2cm程度離して切除します。所属リンパ節の転移が明らかでない場合は、センチネルリンパ節生検を、所属リンパ節転移が明らかな場合はリンパ節郭清術を行います。
手術により完全な摘出が難しい場合や、臓器に転移がある場合は、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの化学療法を主体とし、外科治療、放射線治療を加えた集学的治療が行われます。
一般的に放射線治療が効きにくい癌と考えられて来ましたが、近年では免疫チェックポイント阻害薬との併用による上乗せ効果が期待されています。また、脳転移に対する定位放射線治療(ガンマナイフやサイバーナイフなど)は効果的で、通常の放射線治療に比べて予後が半年以上延長することが示されています。骨転移に対して痛みを軽くする効果も、他のいろいろながんと同じくらいの効果があります。
薬物療法については当施設を含め、皮膚がん診療に積極的に取り組んでいる施設の努力の甲斐もあり、ドラックラグ◆が解消され、海外とほぼ同等に免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使用することが可能になっています。(◆海外では使える薬剤があるのに日本の患者さんには使えない、手に入らない状態)
希少がんリーフレット
啓発ポスター
患者会支援団体の皆さんとの連携・協働を通して作成した
「5月は悪性黒色腫(メラノーマ)啓発月間」ポスター
執筆協力者
- 山崎 直也(やまざき なおや)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
- 高橋 聡(たかはし あきら)
- 国立がん研究センター東病院
- 皮膚腫瘍科
- 並川 健二郎(なみかわ けんじろう)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科
- 中野 英司(なかの えいじ)
- 国立がん研究センター中央病院
- 皮膚腫瘍科