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リハビリテーション(りはびりてーしょん)
更新日 : 2024年4月11日
公開日:2014年4月28日
当センターは、中央病院578床、東病院425床を有するがん専門病院です。その特性から、五大がんなどだけでなく希少がんの治療過程においても、必要であればリハビリテーションが行われます。当センターのリハビリテーション科が関わっている主な希少がんのリハビリテーションについて紹介します。
中央病院リハビリテーション室
東病院リハビリテーションセンター
リハビリテーション部門には、リハビリテーション専門医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、義肢装具士(PO)といった職種の専門職が配置されています。
- 理学療法(PT):主として基本的動作能力の回復を図るために運動療法、歩行練習を実施し機能回復、社会復帰を目標に実施します。
- 作業療法(OT):応用的動作能力の回復を図るため、日常生活動作の練習を実施します。時に手工芸やアクテイビティを用いて認知機能や精神機能改善をはかります。また適切な福祉用具の選定を行ったり住宅改修の助言を行います。
- 言語聴覚療法(ST):脳腫瘍によるコミュニケーション障害(失語、構音障害など)に対して練習を実施します。また頭頸部腫瘍の治療過程では発声・構音、摂食・嚥下の問題にも専門的に対応します。
骨の肉腫・軟部肉腫
治療過程でリハビリテーションが必要な場合に介入しています。組織型や治療方法、治療担当科は多岐に渡り、リハビリテーション科が介入する場合の多くが、手術後の機能障害改善を目的とした介入が大半を占めます。障害部位別に上肢は作業療法士(OT)、下肢は理学療法士(PT)が実施しています。手術は、腫瘍細胞の取り残しがないように広範囲に切除することが基本となっているため、手術部位や隣接する臓器により障害は多様です。また表在性の腫瘍ではADL(日常生活動作)の障害は比較的少ないものの、深部の腫瘍ではさまざまなレベルでADLの低下がみとめられます。
骨肉腫は、わが国では200人前後の発生数と予想されていますが、そのうち50%以上が10歳代に好発します。膝関節周囲に発生することが多く、大腿骨、脛骨、上腕骨、骨盤の順になります。成長途上にある患児の場合、骨肉腫の治療後に起こり得る障害として、成長障害に起因する骨の変形や左右の脚の長さが異なってしまう(脚長差)などがあげられます。治療後に生じた変形や脚長差に対して適切な装具を作成し、骨軟部腫瘍医や理学療法士(PT)、義肢装具士(PO)がチームを組んでそのマネジメントを行います。
手術は、患肢温存術が主体ですが、一部切断術が施行される場合があります。切断術が施行された場合は、義手や義足の練習が必要となります。こうした場合、専門の医療機関である鉄道弘済会義肢装具サポートセンターとも密接に連携をとりながら、リハビリテーションを進めています。
また当センターで上肢切断術を受けた患者さんが「当事者会」を発足させ、患者さんが中心となったネットワークを構築し、情報交換会も開催されています。これから同様の手術を受ける予定の患者さんが、手術を受ける前にこの会のメンバーと会うことができるようなシステムも構築しています。
脳腫瘍
大きく原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の大きく2つに分けられます。原発性脳腫瘍の神経膠腫と中枢神経原発悪性リンパ腫が中心となっています。腫瘍ができる部位により運動麻痺や感覚障害、視野障害、高次脳機能障害、失語などのさまざまな障害を呈するので、脳血管障害(脳梗塞など)に類似していると言えます。しかし進行性の疾患であるという点は、脳血管障害と大きく異なります。
神経膠腫(グリオーマ)
神経膠腫に対する治療課程は、腫瘍摘出術+テモダール(抗がん剤)+放射線治療です。術後、化学療法および放射線治療と平行してリハビリテーションが実施されます。特に膠芽腫の治療過程で高率に発生する体のだるさ(倦怠感)や白血球や血小板が減少する(骨髄抑制)、放射線治療による脱毛(ボディーイメージの変化)をモニタリングしながら適切なリハビリテーションを実施していく必要があります。
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)
生検手術後、化学療法(HD-MTX(抗がん剤))により治療されます。当センターで生検手術を受ける患者さんは、術前からリハビリテーション科が介入しています。障害(例えば、運動麻痺や失語など)があればリハビリテーションを継続し、障害がない場合であっても、術前から化学療法終了時点で、認知機能や身体機能、日常生活動作の評価を実施しています。リハビリテーションは、運動機能や高次脳機能障害の改善を目的とすることが第一要件ですが、リハビリテーションの多角的評価結果を、脳脊髄腫瘍医に情報共有しており、がん治療の効果判定を補完するという役割も担っています。
口腔がん
頭頸部はたくさんの器官や神経が集中しており、その原発部位と進行度によって治療方法が異なります。呼吸・発声・飲み込む(嚥下)などの重要な機能があるため、その機能を保つ事を目的として手術をしない治療を希望する患者さんも増えていますが、治療成績の向上を目指して、外科的治療、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療の開発が行われています。口腔内にがんが発症する確率は全悪性腫瘍の中で1~5%といわれています。口腔がんは生命に関わる重大な疾患であることはもちろん、生活するにあたって重要な役割を果たす「呼吸をする」「食べる」「話す」といった機能が損なわれるため、深刻な問題となります。
当センターでは、口腔がんの手術後のほぼ全例において言語聴覚士(ST)が介入し、リハビリテーションを実施しています。腫瘍の切除範囲にもよりますが、口腔がんの術後は舌の可動性などの制限により、言葉をはっきりと話せなくなります(発声・構音障害)。また、口腔内で食べ物をまとめたり、のどへ運搬することが難しくなるため、噛んだり、飲み込むことの障害が生じます(摂食嚥下障害)。そのため、口の動きや飲み込みなどについて各検査を行い、その結果に基づいて各個人に合った発声・構音・嚥下のリハビリを提供します。また主治医や病棟看護師、管理栄養士らと協力しながら病棟内でのリハビリテーション、栄養状態の管理、食事形態の検討などを行い、術後後遺症の緩和や生活の質(QOL)を保てるようチームで関わります。
中央病院・東病院のリハビリテーション診療体制
中央病院(築地)
- リハビリテーション科専門医 1名
- 理学療法士 4名
- 作業療法士 3名
- 言語聴覚士 2名
- 義肢装具士 1名(週1回)
東病院(柏)
- 骨軟部腫瘍医 1名
- 理学療法士 5名
- 作業療法士 1名
- 言語聴覚士 2名
- 義肢装具士 1名(週1回)
組織型や病理診断が希少であっても、ひとりひとりの患者さんにとってよりよい結果と満足度を得ていただけるよう、主治医と緊密に連携しつつリハビリテーションを進めています。
執筆協力者
- 櫻井 卓郎(さくらい たくろう)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター中央病院
- 作業療法士
- 上野 順也(うえの じゅんや)
- 希少がんセンター
- 国立がん研究センター東病院
- 理学療法士