コンテンツにジャンプ

トップページ > 研究所について > OUR RESEARCH FOCUS > 標的タンパク質分解誘導薬E7820の腫瘍縮小効果をJ-PDXライブラリーで確認し、医師主導治験を開始

キーワード:PDXモデル、バイオマーカー、創薬開発標的タンパク質分解誘導薬E7820の腫瘍縮小効果をJ-PDXライブラリーで確認し、医師主導治験を開始

標的タンパク質分解誘導薬E7820の腫瘍縮小効果を J-PDXライブラリーで確認し、医師主導治験を開始バナー
本研究は、研究所でJ-PDX ライブラリーを用いた薬剤のスクリーニングとバイオマーカー解析に基づき、中央病院・東病院での医師主導治験に結びついた成果です。

  • J-PDX ライブラリーとは

PDX モデルは、がん患者さんの腫瘍組織を免疫不全マウスに直接移植することで作成され、がん患者さんの腫瘍の特性を維持した担がんモデルです。患者さんでの薬剤の治療効果を動物実験で高い確度で予測できると期待されています。国立がん研究センターでは、日本人がん患者由来のJ-PDX ライブラリーを構築し、がん種横断的に659モデルと世界有数のPDX を保有し(2025年1月22日時点)、創薬開発への活用を進めています。図1

図.J-PDX ライブラリーがん種別登録検体数(2024年10月30日時点)

  • J-PDXを用いた創薬への取り組み

国立がん研究センターとエーザイ株式会社は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)CiCLE 事業「希少がんならびに難治性がんに対する抗がん剤治療開発を加速させる創薬研究手法に関する研究」において、エーザイ創製の新薬候補品に対して、J-PDXを用いて臓器横断的に非臨床試験を行い、希少がんならびに難治性がんを対象に医師主導治験を実施し、臨床での有用性を確認するとともに、承認申請をめざしています。

  • E7820とは?

今回J-PDXを用いて有効性の評価を行ったE7820は、選択的なタンパク質分解に関わるDCAF15とスプライシング因子RBM39を結合させる分子糊として作用し、RBM39を選択的に分解するスルホンアミド系抗がん剤です。RNA スプライシングの異常が誘導され、がんの増殖を抑える効果が期待されます。

  • J-PDXでのE7820 の有効性

J-PDXライブラリーに含まれる42モデル(膵がん12モデル、胆道がん12モデル、胃がん9モデル、子宮体がん9モデル)に対して、E7820を100mg/kgもしくは200mg/kgを21日間連日経口投与し、有効性を評価しました。この結果、100mg/kg投与で38.1%(16モデル)、200mg/kg 投与で54.8%(23モデル)で腫瘍縮小効果が確認されました。中でも、胆道がん、子宮体がん、胃がんの順に腫瘍縮小したモデルが多く認められ、がん種によって効果が異なることが分かりました。
 さらに、E7820の有効性に関連するバイオマーカーを探索するため、PDXモデルの全エクソンシークエンスおよび全トランスクリプトーム解析を実施しました。この結果、BRCA1BRCA2またはATMといった、DNA 修復機構の一つである相同組換え修復関連遺伝子の変異が、E7820によって腫瘍が縮小したPDX モデルに高い頻度で認められ、バイオマーカーとなる可能性が示唆されました。成果の詳細は、論文をご覧ください。
S Kohsaka et al.NPJ Precis Oncol.2024

  • J-PDXの結果に基づく医師主導治験の開始

これらの結果に基づき、国立がん研究センター中央病院および東病院では、「固形がんに対するE7820の日本人における安全性および有効性を評価する第I相医師主導治験(NCCH2303、研究代表者:中央病院 先端医療科長 山本昇)」を開始しました。本試験において、E7820の忍容性の確認および推奨用法・用量を決定した後、国立がん研究センターとエーザイ株式会社は、特定のがん種やバイオマーカーを有する固形がんに対する有効性を確認する第II相、さらには承認申請用試験の実施を検討し、薬事承認をめざしています。

  • 今後の展望
製薬企業での創薬開発に、国立がん研究センターのJ-PDXライブラリーを用いることで、薬剤候補の評価とバイオマーカーの探索、臨床試験へ速やかにつなげられる可能性が示されました。国立がん研究センターは一体となって、全てのがん患者さんへ最適ながん医療の提供に引き続き取り組んで参ります。

プレスリリース・NEWS

J-PDXライブラリーについて

詳しくは以下のHPにもご紹介しておりますのでご覧ください
https://j-pdx.ncc.go.jp

研究者について

細胞情報学分野 分野長 高阪 真路
分子薬理研究分野 分野長 濱田 哲暢
分子薬理研究分野 ユニット長 柳下 薫寛

キーワード

PDXモデル、バイオマーカー、創薬開発