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キーワード:造血器腫瘍、遺伝子パネル検査、個別化医療国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト®」の製造販売承認取得について
造血器腫瘍(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)は10万人当たり年間約45人が発症する比較的高頻度の悪性腫瘍で、20歳未満では全がんの約4-5割を占めております。造血器腫瘍では様々な遺伝子異常が生じており、その発症や病態に関わっているとともに、治療標的にもなりうることが報告されています。遺伝子パネル検査は一度に多数の遺伝子異常を検出することが可能な検査法で、固形がんを対象とした検査が既に保険適用されていますが、造血器腫瘍では国内外ともに薬事承認された検査はありませんでした。
固形腫瘍と造血器腫瘍では、認められる遺伝子異常の種類が大きく異なることや、検査の目的が固形腫瘍では「治療法選択」が主であるのに対し、造血器腫瘍では「治療法選択」だけではなく「診断」と「予後予測」も目的となること、などの理由から、固形腫瘍とは異なる独自の開発が求められていました。さらに、造血器腫瘍で生じている遺伝子異常には、変異(塩基置換)、融合遺伝子/ 構造異常、コピー数異常など様々な種類があるため、遺伝子パネル検査においても様々な異常を同時に検出できることや、造血器腫瘍の腫瘍細胞は末梢血、骨髄、リンパ節など様々な組織に含まれるため、多様な試料を用いることが可能であることが望まれております。さらに、骨髄系腫瘍では、RUNX1やDDX41などの遺伝子の生殖細胞系列異常が発症に関与しており、腫瘍細胞だけではなく生殖細胞系列のゲノム検査も必要とされております。
研究所分子腫瘍学分野では、九州大学や京都大学、名古屋医療センターなどの国内の主要施設、および、大塚製薬株式会社と共同研究コンソーシアムを形成し(図)、造血器腫瘍領域におけるゲノム医療の実現を目指すため、変異だけでなく、融合遺伝子/ 構造異常、コピー数異常も検出し、さらに、体細胞異常に加えて生殖細胞系列異常も検出可能な、造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査の開発を行いました。
医療機関の共同研究コンソーシアムによる遺伝子パネル性能の検証と国立がん研究センターにおける、実臨床を通した臨床的有用性の検証を実施
さらに、中央病院・東病院において前向きコホート研究を行い、176人188検体の患者検体(成人および小児から得られた初発および再発検体)を用いて、本遺伝子パネル検査による包括的ゲノムプロファイリングを行いました。その結果、検体の種類では骨髄液や末梢血などの生細胞だけでなく、ホルマリン固定パラフィン包埋検体でも高率に解析可能であることが示されました。97% の患者で1個以上の遺伝子異常が検出され、1人の患者につき中央値7個の遺伝子異常が検出されました。血液がんで高頻度に異常が認められる遺伝子異常の検出力は既存の遺伝子パネル検査と同等以上であり、本遺伝子パネル検査の高い性能が示されました。重要な点として、診断、治療法選択、予後予測を行う上で臨床上有用であると考えられる遺伝子異常が、それぞれ82%、49%、58% の患者で検出され、遺伝子パネル検査は特に診断、次いで予後予測に有用であることが示されました。
これらの結果に基づいて、大塚製薬株式会社が開発を進めて、2024年9月に造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイトⓇ」として、国内における製造販売承認を取得しました。本製品は、厚生労働省から先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、国内で初めて製造販売承認された造血器腫瘍及び類縁疾患を対象とした遺伝子パネル検査であり、体外診断用医薬品「ヘムサイトⓇ診断薬」と医療機器プログラム「ヘムサイトⓇ 解析プログラム」により構成されています。本承認により、日本における造血器腫瘍領域において、個別化医療が大きく進歩し、よりよい医療に貢献することが期待されております。
プレスリリース・NEWS
- 国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイトⓇ」の製造販売承認取得について(2024年9月20日)
研究者について
分子腫瘍学分野 分野長 片岡 圭亮
中央病院 血液腫瘍科 科長 伊豆津 宏二
キーワード
造血器腫瘍、遺伝子パネル検査、個別化医療