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キーワード:胆道がん、ゲノム解析、FGFR2融合遺伝子日本人でのゲノム解析から創製された新薬が胆道がんの治療薬として承認
胆道がんは、日本をはじめとするアジアでの発症が多く、日本における5年生存率は20%以下と、予後が非常に悪い難治性のがんであり、新たな治療法の開発が強く求められています。
国立がん研究センター研究所のがんゲノミクス研究分野では、2012年頃からこの難治性がんである胆道がんにおける新たな治療標的を発見することを目的に、日本人の胆道がん260例を対象としたゲノムシークエンス解析を開始しました。研究の結果、胆道がんにおける重要な遺伝子異常の全体像を解明し、2015年にその成果をNature Genetics誌に発表しました。この論文は掲載誌でも注目のトピックとして取り上げられ、国内の多くの報道機関からも取材を受け、大きな注目を集めました。発見された遺伝子異常の中でも、FGFR2融合遺伝子は、間野研究所長が肺がんで発見されたALK融合遺伝子と同様に、チロシンキナーゼという酵素が常に活性化されることでがん化を引き起こします。このことから、肺がんにおけるALK阻害剤の成功例を踏まえ、FGFR2の活性を抑える薬剤(FGFR阻害剤)が胆道がんの治療にも有効である可能性が期待されました。
そこで日本発の胆道がん治療薬の開発に向け、エーザイ株式会社が創製した FGFR阻害剤「タスルグラチニブ」を用いた共同研究を開始しました。我々が日本人症例で同定した 5 種類のFGFR2融合遺伝子に対する阻害効果を検討した結果、優れた効果が得られたことから、エーザイ株式会社と国立がん研究センターはタスルグラチニブの胆道がん治療用途に関する特許を共同で出願し、さらに臨床試験へ進むこととなりました。臨床試験の実施にあたっては、国立がん研究センター中央病院・東病院の肝胆膵内科をはじめ、国内の多くの施設の医師の皆さまから多大なご協力をいただきました。その結果、国際共同第II相試験において同薬剤の有効性が示され、遺伝子の発見から9年後の2024年9月24日に「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」の効能・効果で新薬として承認されました。この承認により、難治性がんである胆道がんに対する治療薬の選択肢が増えるだけでなく、ゲノム診断を基盤とした個別化医療の推進や予後の改善が期待されます。
同定されたFGFR2融合遺伝子
共同開発したFGFR2阻害剤(タスルグラチニブ)
本研究成果は、当センターが有する以下の強みを最大限に活用した好例であると考えています。質の高い臨床検体を集積するバイオバンク、ゲノム解析をはじめとする世界トップクラスの研究力、創薬開発における企業との緊密な共同研究体制、そして薬剤を患者さんに届けるための臨床医との密接な連携、これらが一体となって本研究の成功を支えました。さらに、本研究は、がん医療の実用化を目指す国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」からのご支援を受け、実現したものです。この支援により、研究から実用化への道筋を切り拓くことができました。ゲノム研究者として、研究成果が薬剤として形をなし、患者さんのお役に立てることはこの上ない喜びです。このような貴重な機会に恵まれたことに、心より感謝しております。最後に、貴重な検体をご提供いただきました患者の皆様、未来の技術進歩を信じて長期間にわたり検体を収集・保存してくださった中央病院病理診断科の先生方、そして粘り強く研究に取り組んでくれたがんゲノミクス研究分野の研究室の皆さんに、心から深く感謝申し上げます。
プレスリリース・NEWS
研究者について
がんゲノミクス研究分野 分野長 柴田龍弘
キーワード
胆道がん、ゲノム解析、FGFR2融合遺伝子、タスルグラチニブ