バイオバンク横断検索システム第3版の公開~疾患特異的臨床情報の追加、データの拡充~
2021年9月30日
国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構
国立大学法人東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパン
ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク
国立大学法人岡山大学病院バイオバンク
国立大学法人京都大学医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンター
国立大学法人東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンター
国立大学法人筑波大学附属病院つくばヒト組織バイオバンクセンター
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
発表のポイント
- わが国の主要なバイオバンク(注1)が保有する試料・情報を一括で検索できるバイオバンク横断検索システムをバージョンアップし、新たな検索項目として、疾患特異的臨床情報(注2)を追加し第3版を公開しました。
- 各バイオバンクが保管する試料・情報の対象を拡大し、総計約47万人からの約103万検体、約23万件の情報が一度に検索可能な世界最大のシステムになりました。
概要
日本で主要なバイオバンク(注3)を運用する7機関は共同で、全国のバイオバンクが保有する試料・情報を一括で検索できるバイオバンク横断検索システムをバージョンアップし、バイオバンク横断検索システム第3版を公開しました。
産業界やアカデミアの要望を受けて、がんの疾患特異的臨床情報の項目を新たに追加しています。また本項目の追加に併せて、参画する各バイオバンクの登録情報を更新し、総計約47万人からの約103万検体、約23万件の情報が一度に検索可能な世界最大のシステムになりました。
今後は、更にコーディネート機能とマッチング支援の実現を進め、バイオバンク横断検索システムを利用して、ゲノム医療研究開発や創薬開発に必要となる多様な試料・情報がより効率的に利活用されることを目指します。
詳細
今回のアップグレードに合わせて行われた更新
1.疾患特異的臨床情報の項目を新たに追加
疾患特異的臨床情報の項目を新設し、がんの組織型を検索項目に追加しました(図)。各バイオバンクが保有するがん症例の試料・情報は、産業界のニーズが極めて高いものです。がん症例によって治療方法、予後管理は大きく異なり、がんの組織型を追加したことは、疾患発症、治療経過・予後の研究を行おうとしているバイオバンク横断検索システムのユーザーの利便性を大きく高めるものと期待されます。
検索項目「がんの組織型」の対象:
領域横断的がん取扱い規約(注)に掲載されている22種類のがんのうち、出版済みの臓器癌取扱い規約がある21種類のがんが対象
口腔癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、原発性肝癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、悪性骨腫瘍、悪性軟部腫瘍、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌、腎癌、副腎腫瘍、腎盂・尿管・膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍
(注:日本癌治療学会、日本病理学会による)
個別のがん種の扱い
がん種ごとに、各臓器特異的ながんの専門学会が策定した各種がん取扱い規約に準拠した階層的な分類により検索可能とした。
図:バイオバンク横断検索システムで食道癌を検索した事例(http://biobank-network.jp)外部サイトにリンクします
2.バイオバンクの収載データ情報の拡充
参画しているバイオバンクの試料・情報の登録情報を更新し、総計約47万人分からの約103万検体、約23万件の情報が一度に検索可能な世界最大のシステムになりました。
今後の展開
バイオバンク横断検索システムは、対象となるバイオバンクが試料・情報の収集・保管を拡充していくのに合わせて、検索対象も順次拡大しています。今後もわが国におけるヒト試料・情報の利活用の効率的な推進の基盤としての役割を果たしていきます。
また、今後拡充していく新規の機能として、コーディネート機能とマッチング支援の実現に向けて準備しています。バイオバンク横断検索システムを利用して必要な試料を希望する際に、ニーズに最も適合した試料・情報の迅速な入手をコーディネートするウェブ申請システムを設計し、マッチング支援を実装していくための機能開発を進めています。
こうした拡充や機能充実を通じて、ゲノム医療研究開発や創薬開発に必要となる多様な試料や情報が効率よく利活用されるために、わが国のさまざまな特徴あるバイオバンクのネットワーク形成と、横断的な試料の利活用、データシェアリングを促進し、ゲノム医療に必須の社会インフラとしてのバイオバンク・ネットワークへ継続的な成長に寄与していきます。
- 事業名:AMEDゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(B-Cure)
- プログラム名: ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム
- サイト名:バイオバンク横断検索システム
- 言語:英語 ・日本語
- URL:http://biobank-network.jp(外部サイトにリンクします)
参考
バイオバンク横断検索システム 初版プレスリリース
2019年10月28日発表
バイオバンク横断検索システムの運用開始~国内のバイオバンク7機関で保有する65万検体の試料・20万件の情報が一括で検索可能に~
https://www.amed.go.jp/news/release_20191028-01.html(外部サイトにリンクします)
バイオバンク横断検索システム 第2版プレスリリース
2020年11月25日発表
バイオバンク横断検索システム第2版の公開―85万検体の試料品質管理情報、高度化にあたっての提供者の同意に関する情報を一括で検索可能に―
https://www.amed.go.jp/news/release_20201125-02.html(外部サイトにリンクします)
研究プロジェクトについて
バイオバンク横断検索システムは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム)の研究開発事業の一環として、ゲノム医療実現推進に向けたバイオバンク・ネットワークを構築して、バイオバンクの利活用を促進することを目指しています。
用語解説
注1:バイオバンク
生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う仕組み。横断検索システムでは7機関の12バイオバンクの試料・情報を検索することが可能。
注2:疾患特異的臨床情報
それぞれの疾患に対して、その疾患の臨床における詳細な情報による分類等を行ったもの。
注3:日本で主要なバイオバンク
ここでは、バイオバンク・ジャパン(BBJ)、東北メディカル・メガバンク計画(TMM)、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)、京都大学医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンター(KUB)、東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンター(TMD)、筑波大学附属病院つくばヒト組織バイオバンクセンター(THB)、岡山大学病院バイオバンク(OBB)の7機関のバイオバンクを指す。なお、NCBNは、以下の6つの研究機関が設けるバイオバンクからなるネットワークである。
NCBN構成機関:国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター