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国立がん研究センター

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肝がんの検査・診断について

更新日 : 2023年10月16日

前回の動画▷肝がんの病気について

検査について

肝がんが疑われる場合、診断をつけるためには、超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査といった画像検査と血液検査(腫瘍マーカー)を組み合わせて行います。また、見つかった腫瘍が良性か悪性か、また、肝細胞がんとその他のがんを鑑別するために、針生検*1などの検査を行うこともあります。

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人も、3~6カ月ごとの定期的な超音波(エコー)検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています。

*1 針生検:肝臓の腫瘍部分に直接針を刺して、少量の組織を採取し、顕微鏡で調べる検査。

超音波(エコー)検査

体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像化して観察する検査です。肝臓内のがんや血管の位置、がんの大きさや個数、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無などを調べます。ただし、がんのできた場所によっては検査が難しく、皮下脂肪が厚い場合も十分な検査が行えないことがあります。

患者さんの状態や、がんがある部位によっては、血管から造影剤を注射して検査する造影超音波検査を行うこともあります。

(超音波(エコー)検査とは?https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/echo.html

画像検査 (CT、MRI検査など)

がんの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べるために、造影剤を用いたCT検査やMRI検査を行います。CT検査は、X線で体の断面を画像にすることができます。 

MRI検査は、強力な磁力と電波を使い、磁場を発生させて行う検査で、体の内部をさまざまな方向から画像にすることができます。MRI検査はX線を使わないため、放射線による被ばくはありませんが、造影剤を使用することがあります。

(CT検査とは?https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/ct.html
(MRI検査とは?https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/mri.html

血液検査(腫瘍マーカー)

腫瘍マーカー*2とは、がんの種類によって特徴的に産生される物質で、血液検査などによって測定することができます。肝細胞がんの腫瘍マーカーには、AFP(アルファ・フェトプロテイン)、PIVKA-II(ピブカ・ツー)、AFP-L3分画(AFPレクチン分画)があります。腫瘍マーカーの数値は、がんが大きくなるにつれて大きくなります。がんが小さい場合は、2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています。

しかし、がんがあっても、これらのマーカーがいずれも陰性のこともあれば、肝炎や肝硬変、その他のがんでも、陽性になる場合があるため、診断には画像診断もあわせて行います。

治療方針を決定する際に、肝機能を調べる目的で血液検査を行うこともあります。

*2 腫瘍マーカー:がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質のことで、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られる。がんの診断の補助や、診断後の経過や治療の効果をみるための指標として用いられる。

(腫瘍マーカー検査とは?https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/marker.html

病期(ステージ)について

がんの進行の程度は、病期(ステージ)であらわされます。肝がんのステージは、早期のがんから進行するにつれてI期~IV期まであり、IV期はさらにIVA期とIVB期に分類されます。ステージは、がんの個数、大きさ、がんが肝臓内にとどまっているか、リンパ節や肝臓以外の臓器に転移(遠隔転移)があるかによって決まります。ステージの分類には、いくつかの種類がありますが、日本では、「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版[補訂版]」(日本肝癌研究会編)」、もしくは国際対がん連合(Union for International Cancer Control:UICC)が採用している「TNM悪性腫瘍の分類」を用いてステージを説明するのが一般的です。なお、分類法によっては、同じステージでも内容が異なることがあるため、注意が必要です。

▼肝がんの病期分類(日本肝癌研究会)
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▼肝がんの病期分類(UICC第8版)

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肝障害度、Child-Pugh分類

肝がんの多くは、慢性肝炎や肝硬変の肝臓に発生するため、がんと分かったときには、患者さんの肝機能がかなり低下している場合もあります。そこで、がんの進行の程度(ステージ)とあわせて、肝臓の障害の程度(肝予備能:肝臓の機能がどれくらい保たれているか)も考慮して、治療方針を決定します。肝障害度は、肝臓の機能がどの程度損なわれているかを示すもので、腹水の有無や程度、血清ビルビリン値(mg/dL)、血清アルブミン値(g/dL)、ICGR15(%)、プロトロンビン活性値(%)の5つの項目ごとに、肝障害度をA、B、Cの3段階で評価します。

また、肝硬変の程度を把握するために、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類が用いられることもあります。どちらの分類でも、AからCに進むにつれて、肝障害の程度は重くなります。また、最近は、血清ビリルビン値と血清アルブミン値のみから肝機能の程度を評価するALBIグレードという評価方法もよく用いられており、肝切除術やラジオ波焼灼療法などの根治的治療を行う際の評価に適しているといわれています

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日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版,P15.より作成

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