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研究プロジェクト

スプライシングを含むRNA異常を標的とした病態・創薬研究

がんにおけるTrans-elementの異常

RNAスプライシングとは、mRNA前駆体(pre-mRNA)からintronを除去して成熟mRNAを産生するプロセスのことを指します。

スプライシングにおいて、スプライシング「する」側の要素をTrans-elementと呼びます。スプライシングを司るスプライシング因子(Splicing Factor; SF)は主なTrans-elementと言えます。

SFをコードする遺伝子群の変異(以下SF変異)が造血器腫瘍に高頻度に認められることが2011年にはじめて報告されて以来、SF変異がスプライシング異常をきたす機序や、SF変異を治療標的としたがん治療の可能性について、精力的に研究が進められてきました。

SF変異は、骨髄異形成症候群(30-75%)、慢性骨髄単球性白血病(~50%)、二次性急性骨髄性白血病(~55%)などの骨髄系腫瘍だけでなく、慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphocytic leukemia; CLL; ~20%)などのリンパ系腫瘍や、乳癌、肺癌、膵癌などの固形腫瘍にも比較的高頻度(~10%)に認められることがその後の研究で明らかになりました。

 

がんにおけるCis-elementの異常

一方、スプライシング「される」側の異常、つまりCis-elementの異常もがんでは高頻度に見つかります。

こうしたCis-elementの異常は、例えばSFが結合してスプライシングをする際の目印となるようなSplice siteの配列を破壊してしまうような遺伝子変異が例として挙げられます。


 Cis-Trans.jpg

 

がんにおけるRNAスプライシング異常は、こうしたCis/Trans-element両者の異常を指します。

両者をそれぞれ創薬標的とすることは今後のがん治療において一つの重要な位置を占めると考えられ、今後のがん治療成績を向上する原動力となることが望まれています。


がんRNA研究分野の研究内容のご紹介


CRR_research_2024.jpg

未発表であったり、知財の関係ですべてを掲載することはできませんが、このページでは当研究室での取り組みの一端を、スプライシングに関係あるものもないものも、大きなテーマごとにご紹介します。
個別のプロジェクトの概要などはリンク先に記載しています。

 

研究テーマ1: がんにおけるRNAスプライシング異常

がんRNA研究分野では、幅広いテーマについて、基礎研究からトランスレーショナルリサーチ、そして臨床研究の立案まで手掛けていますが、その中で一つの軸としているのが「がんにおけるRNAスプライシング異常」です。いくつかのプロジェクトが動いています。

成果例 → プレスリリース:「大規模公共トランスクリプトームデータを活用した疾患関連変異の新規スクリーニング手法の開発」

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研究テーマ2: がん核酸治療法開発

上記のRNAスプライシングにも関連しますが、ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)を用いたがん核酸治療法の開発を行っています。
主に2つのプロジェクトが動いています。

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研究テーマ3: 大規模患者コホートデータを用いたオミクス解析

がんRNA研究分野では、PIの吉見(もともと血液内科医)の専門でもなく、スプライシングとも関係ない膀胱がんのコホートデータ解析を重点的に実施しています。人との御縁というのは面白いものですね。470人規模の患者検体全例に対してWhole genome sequence/Exome sequenceとRNA sequence、>40抗原の蛍光免疫多重染色データを取得して、臨床データと紐づけて様々な観点から解析を実施しています。この貴重なデータセットから発見された大きな知見については、研究室の新たな軸として複数のプロジェクトが走っていますが、ここでは記載しません。

成果例 → プレスリリース:「膀胱がんの FGFR3 異常が腫瘍免疫微小環境と免疫療法の効果に与える影響を解明~大規模膀胱がんコホート解析で新規治療標的同定に期待~」

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研究テーマ4: 造血器腫瘍の病態解析

PIの吉見はもともと血液内科医ですし、同じく血液内科医の武藤主任研究員、中央病院臨床検査科の松井科長が加わったことから、PIレベルの白血病研究家が3人もそろった充実体制となりました。引き続き造血器腫瘍の解析に力を入れています。

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研究テーマ5: GPCRを標的にしたがん治療法の開発

こちらもどちらかというと人との御縁がきっかけで誕生したプロジェクトです。
GPCRは膜表面に発現することから創薬対象にしやすく、古くから創薬標的として様々な研究が進められてきています。
バイオセンサー開発の専門家とタッグを組むことにより、異分野融合型のがん治療開発に取り組んでいます。

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研究テーマ6: その他(臨床試験・共同研究など)

がんRNA研究分野では、RNAに関係あってもなくても、基礎研究から医師主導治験の提案まで、幅広いプロジェクトを手掛けています。共同研究が多く公開できる情報は限られますが、多岐にわたる事業を進めています。

例1
プレスリリース:多施設共同第2相医師主導治験 附随研究

例2
中央病院に医師主導治験の提案(プロトコール作成中)

例3
プレスリリース:ALK受容体の構造解析とがんにおける機能の解明(国際共同研究 発表済み)

De Munck S, et al. Structural basis of cytokine-mediated activation of ALK family receptors. Nature. 2021 Dec;600(7887):143-147. PMID: 34646012

例4
SRSF2の意外な機能を解明(国際共同研究 発表済み)

Ma HL, et al. SRSF2 plays an unexpected role as reader of m5C on mRNA, linking epitranscriptomics to cancer. Mol Cell. 2023 Dec 7;83(23):4239-4254.e10. PMID: 38065062.

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