トップページ > 研究組織一覧 > 分野・独立ユニットグループ > 希少がん研究分野 > 研究室紹介 > 研究の奥の細道
研究の奥の細道
11月14日 第12回多地点合同メディカル・カンファレンス(オンライン)
第12回多地点合同メディカル・カンファレンス「がんロコモ診療の最前線~運動器のケアはがん治療を明るくする!」を聴講しました。がん患者さんの多くが運動器官に障害のある「がんロコモ」の状態になっていること、治療成績・QOLの向上にエクササイズが重要であることなどを学びました。日常生活にエクササイズを取り入れることで、日々のQOLを向上させるだけでなく、がん罹患へ備えることができるのではないかと思いました。
近藤ラボでは、朝の抄読会・勉強会のあとスクワットやストレッチを一緒にすることで日常生活に運動を取り入れています。前向きに頭を働かせるには運動が効果的だと思います。軽いエクササイズで身体を動かすところから仕事を始めることで一日の疲れが軽減する気がする、とラボメンバーから好評です。個人メニューとしては、ラボメンバーはそれぞれスポーツを楽しんでいるようです。私はブラジリアン柔術(BJJ)に取り組んでいます。高校・大学と柔道部でしたが、BJJでは柔道とは異なる考え方・身体の使い方が必要で、リセットしないといけないことが多く新鮮です。
「Jiu jitsu and cancer」でYouTubeを検索すると、米国のBJJの達人ががん(肉腫)から復帰し活躍している様子が掲載されていました(FloGrappling presents: Alex Martins, A Cancer Survivor's Story)。また、がんに罹患したときの不安な気持ちや、BJJががんの克服にどのように役立っているかについて、BJJプレーヤーが語っています(Jiu Jitsu vs Cancer)。米国ではBJJはメジャーなのでしょうか、がん患者さんを支援するBJJの大会が定期的に開催されているようです(Tap Cancer Out)。がんサバイバーの親族による基本的な技の解説も(BJJ vs Cancer With Jack Taufer)。スポーツを通じてがんの治療を社会的な活動につなげていけるというのはおもしろいと思います。
11月5-6日 ISBER Regional Meeting(St. Petersburg、フロリダ、米国)
International Society for Biological and Environmental Repositories (ISBER) Regional Meeting に参加しました。希少がん研究では研究に使用する臨床検体の入手が一般に難しく、バイオバンクの有効活用が必要です。今回の学会では米国におけるバイオバンクの課題やこれからのAIの利用、持続可能なバイオバンクの在り方などについて情報収集してきました。また、近隣の大学を訪れバイオバンクの運用の様子を見学してきました。
10月20-24日 Human Proteome Organization (HUPO)(ドレスデン、ドイツ)
Human Proteome Organization (HUPO)の年会に参加しました。希少がん研究分野からは6名が参加し、シンポジウム、モーニングセッション、ポスターで発表をしました。Clinician Awardを2名(安達、大崎)そして優秀演題賞を2名(安達、岩田)が受賞しました。私はHUPO年会には第一回目(ベルサイユ、フランス)から参加しています。今世紀初頭はプロテオミクスが世界的にブームで、今よりずいぶん多くの方がHUPOに参加していました。その後、HUPOを立ち上げた国内外の研究者のほとんどの方が引退し、第二世代、第三世代へと移行して現在にいたっています。技術開発の多様性が全般に乏しくなっている一方で、データ解析が発展したり、Human Protein Atlasにおいて長期間にわたる研究の成果が上がり次世代の研究者が育っていたりする点は特筆に値します。がんのプロテオーム解析については、ゲノムデータと合わせて多層的に解析する研究がここ数年のトレンドで、メジャーながんについては米国を中心に一通り調べられた感があります。一方で腫瘍組織の複雑性や治療抵抗性などがん研究の本質的な難しさに迫るような研究はほぼ未着手で、プロテオーム解析が役に立つのかどうかが試されます。
集合写真 ソウル国際大学のJe-Yoel Cho教授に参加していただきました。
ドレスデン市内の「世界一美しい牛乳屋さん(Dresdner Molkerei Gebrüder Pfund)」にて。
10月19日 International Cancer Proteogenome Consortium (ICPC)(ドレスデン、ドイツ)
International Cancer Proteogenome Consortium (ICPC)の代表者会議に参加しました。情報共有したり国際共同研究を行ったりする場として、本コンソーシアムは機能しています。本コンソーシアムでは、日本は肉腫のプロテオゲノミクスを担当しています。今回、日本からは国立がん研究センターとがん研究会の2施設が発表しました。肉腫を組織型横断的かつ多層的に解析するとどのようなことがわかるのか、これからも調べていきたいと思います。
代表者会議の集合写真 韓国国立がんセンターのJong Bae Park教授と国旗をつなげています。
9月19-21日 第83回日本癌学会学術総会(博多)
日本癌学会学術総会に参加しました。希少がん研究分野からも多数の演題を出しました。私は「患者由来がんモデルと多層的オミクス解析を用いた肉腫研究」と題してモーニングセッションにて講演しました。最初はふだん話しているような学術的な話しにしようと思いましたが、せっかく朝早くから来ていただくので今まで話したことのない内容としました。私は日本癌学会にはかれこれ30年以上参加しています。日本のがん研究はどのように流れてきたのか、研究者としてその流れをどうとらえるものなのか、ということを30年の定点観測の感想としてお話ししました。
会場前で記念撮影
9月18日 第44回日本分子腫瘍マーカー研究会(博多)
日本分子腫瘍マーカー研究会の年会に参加しました。本会は分子腫瘍マーカーの学術集会としてはかなりレベルが高く、毎年楽しみにしています。今回は、国立がん研究センターに在籍されたことのある本田一文先生が会長を務められました。来年は金沢です。
9月6日 第42日本ヒト細胞学会 感謝状
日本ヒト細胞学会の花崎和弘会長より、感謝状を拝受しました。学術集会の開催について感謝状をいただくのは初めてで感動しました。学術団体を運営する幹部はこのような細やかな気遣いが重要なのだと、改めて思った次第です。
8月26日 沖縄科学技術大学院大学(OIST)(沖縄)
休暇を兼ねて、来年以降に企画する新しい学術集会の会場の下見に、沖縄科学技術大学院大学(OIST)を訪れました。担当の事務の方には丁寧に学内を案内していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。海外の研究施設を思わせるすばらしい建物で、サンゴ礁を一望にするカフェテリアなど交流スペースも十分にとられており、国際会議では参加者に好評だろうと思いました。周辺の宿泊施設なども調査して帰宅しました。
8月21-23日 日本患者由来がんモデル学会・日本ヒト細胞学会 合同学術集会2024(東京)
日本患者由来がんモデル学会・日本ヒト細胞学会 合同学術集会2024を開催しました。二つの学会の合同開催ということで今まで以上に盛況な会となりました。発表いただいた方々、参加者の方々、そして展示・広告・企業講演で協賛いただいた企業の方々にお礼申し上げます。来年は今年以上によい会にしたいと思います。
8月2-3日 第9回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム(仙台)
第9回クリニカルバイオバンク学会シンポジウムに参加しました。新しいバイオバンクの立ち上げに関する報告など、たいへん勉強になりました。情報交換会では演者と直接お話しすることができました。
7月12日 第10回細胞凝集研究会(佐賀)
第10回細胞凝集研究会に参加しました。細胞を立体的に培養するとなにがよいのか?平面培養よりも三次元培養は生体内腫瘍を反映していると言える根拠は何なのか?オルガノイドが登場して10年以上が経ち、できることとできないことを考える時期ではないかと思いました。
7月26-28日 日本プロテオーム学会2024年大会・第20回日本臨床プロテオゲノミクス学会 合同大会(青森)
日本プロテオーム学会2024年大会・第20回日本臨床プロテオゲノミクス学会 合同大会(JHUPO第22回大会・JSCP第20回大会 合同大会)に出席する予定でしたが、体調を崩し自宅療養となりました。私が日本プロテオーム学会側の代表、野口玲先生が日本臨床プロテオゲノミクス学会側の代表ということで、片側の代表が不在での開催でしたが、首尾よく盛況のうちに終えることができたようです。学会を主催するときに開催場所は重要です。便利なところが必ずしもよいわけではありません。日常生活から離れた場所に研究者が集まり意見交換することで、新しいアイデアが思いつくことはよくあります。海外ではあえて交通に不便な辺鄙な場所で学術集会がしばしば開催されており、おそらくそのような考えから企画されているのだろうと推測しています。青森ではプロテオミクスの学術集会が開催されたことはなく、参加者の方々には楽しんでいただけたのではないかと思います。
6月29-31日 第71回日本実験動物学会総会(京都)
第71回日本実験動物学会総会に出席しました。患者由来がんモデルの一つが実験動物です。がんのモデルとして、もっともヒトに近いと考えられています。昨今は、薬事承認に動物実験を必須としないことをFDAが発表し、実験動物に代わるモデル系の必要性が注目されています。本学術集会は、さまざまな疾患研究の視点から実験動物を眺めるよい機会になりました。
5月14-17日 Europe Biobank Week 2024(ウィーン、オーストリア)
Europe Biobank Week Congress 2024に出席しました。本会は、バイオバンクをテーマにした学術集会としてはヨーロッパ最大規模であり、今年は650名が参加しました。希少がんの研究では、複数の国・地域そして施設から試料を集める仕組みが必須です。その意味で、バイオバンクの世界的な現状や動向に興味をもっています。Europe Biobank Week Congress 2024では、さまざまな目的や規模のバイオバンクの運営に携わる関係者が西ヨーロッパ全域から集まり、現状の課題や将来性について討議されました。来年はBologna(イタリア)で開催とのことです。バイオバンクの動向を知り希少がん研究に活かすために来年も参加したいと思います。
3月29日 小野君送別会(東京)
長崎大学・連携大学院の小野拓也君の送別会を行いました。小野君は修士のときから5年半にわたり、近藤ラボで研究をしました。4月からは企業の研究所で活躍します。これから研鑽を積み、どこかでまた一緒に研究できるといいですね。
3月21-24日 World Veterinary Cancer Congress 2024(東京)
World Veterinary Cancer Congress 2024に出席しました。ヒトでは希少がんである肉腫が、ペット動物のイヌ、ネコでは頻度が高いという点に興味をもっています。たとえば、イヌでは骨軟部肉腫は全がんの約10-15%を占めますが(文献1)、全がんの10%というとヒトではだいたい前立腺がんや乳がんの罹患率に匹敵します(文献2)。また、ネコではもっとも頻度が高い悪性腫瘍は肉腫です(文献3)。そして、ゲノム・トランスクリプトーム解析ではヒトとイヌの高い類似性が発表されています(文献4)。また、ヒトで用いられている薬を小動物に適応拡大する試みが盛んに使われています(文献5)。「なぜ希少がんは希少なのか」という、希少がん研究に普遍的な問いに対する答えが意外なところにあるのかもしれません。また、ヒトと動物の比較から、希少がん・肉腫の予防に役立つ発見が期待できるかもしれません。
文献
- Gustafson DL, Duval DL, Regan DP, Thamm DH. Canine sarcomas as a surrogate for the human disease. Pharmacol Ther. 2018 Aug;188:80-96. doi: 10.1016/j.pharmthera.2018.01.012. Epub 2018 Mar 9. PMID: 29378221; PMCID: PMC6432917.
- がん情報サービス(最新がん統計):https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
- Dobromylskyj M. Feline Soft Tissue Sarcomas: A Review of the Classification and Histological Grading, with Comparison to Human and Canine. Animals (Basel). 2022 Oct 12;12(20):2736. doi: 10.3390/ani12202736. PMID: 36290122; PMCID:
- Harrison BM, Loukopoulos P. Genomics and transcriptomics in veterinary oncology. Oncol Lett. 2021 Apr;21(4):336. doi: 10.3892/ol.2021.12597. Epub 2021 Feb 26. PMID: 33692868; PMCID: PMC7933772.
- Giuliano A, Horta RS, Vieira RAM, Hume KR, Dobson J. Repurposing Drugs in Small Animal Oncology. Animals (Basel). 2022 Dec 29;13(1):139. doi: 10.3390/ani13010139. PMID: 36611747; PMCID: PMC9817697.
3月21日 秋山先生おめでとうございます(千葉)
千葉大学整形外科から研修に来ていた秋山太郎先生が、このたび学位を取得し、合わせて学府長賞(成績優秀賞)を受賞しました。秋山先生は、肉腫を対象として患者由来がんモデルから網羅的解析そしてバイオインフォマティクスまで幅広いアプローチをとって研究に取り組んできました。臨床医として活動しながら、これからも研究者の視点を持ち続けていただきたいと思います。
3月19日 第86回長崎大学 大学院セミナー(長崎)
国立がん研究センターは長崎大学と連携大学院の協定を結んでいます。私は6年ほど前から連携教員として大学院生の教育に参加しています。このたび、第86回長崎大学大学院セミナーにて、「患者由来がんモデルを用いた希少がんの研究」と題する講演をしてきました。同じようなタイトルで毎月のように講演をしていますが、聴衆に合わせて内容を変えています。当日は多くの教員そして学生の方に聴講していただき、活発に意見交換をすることができました。
3月19日 長崎大学学位記授与式(長崎)
修士課程から指導していた小野拓也君(長崎大学)がこのたび晴れて学位を取得することになり、その授与式に参加しました。私の研究室に来たころに比べて長足の進歩を遂げた小野君は、この春から企業の研究者として活躍します。同じバイオの分野ということで、またどこかで一緒に研究することもあるでしょう。
3月15日 大野君送別会(東京)
東京バイオテクノロジー専門学校から研修に来ていた大野君がこのたび卒業することになりました。大野君は細胞の培養からプロテオーム解析までさまざま実験を学びました。全自動二次元電気泳動を用いた解析ではタンパク質の精製から画像解析そして統計解析まで担当し、その結果を論文にまとめているところです。4月からは企業の研究所で活躍します。どこかでまた一緒に研究できるといいですね。
2月9-10日 第7回日本サルコーマ治療研究学会(名古屋)
第7回日本サルコーマ治療研究学会学術集会(JSTAR2024、名古屋国際会議場)に参加しました。二日目午前のセッションでは近藤ラボより岩田秀平先生が「軟部肉腫のプロテオーム解析のランドスケープ」、野口玲先生が「骨巨細胞腫の治療開発のための薬剤同定:患者由来肉腫モデルとマルチオミクス解析を用いて」と題して講演をし、私が同セッションの座長を務めました。岩田先生はこのたびの発表で、「優秀演題賞」を受賞されました。名古屋はおいしいものがたくさんあり(味噌おでん、味噌かつ、台湾そば、手羽先、モーニングなど)、知的好奇心だけでなく胃袋も十分に満たされた有意義な出張でした。
2月3日 (東京)
東京バイオテクノロジー専門学校の「学外卒業研究発表会」に出席しました。発表会では大野裕翔君がポスター発表をしました。10年以上前から近藤ラボには同専門学校から毎年実習生が来ており、8名の実習生が実験技術を習得し就職されています。大野君は「統一されたタンパク質抽出法と全自動二次元電気泳動装置を用いたマウス臓器の再現性良いプロテオームの解析:プロトコールの標準化に向けて」と題する演題での発表でした。たくさんの質問にてきぱきと答えており、成長したものだと感慨深いものがありました。
集合写真。左から、小野拓也君、大野裕翔君、私
1月11日 Cell Line in The 21st Century(ローザンヌ、スイス)
Lausanne Universityにて開催された「Cell Line in The 21st Century」にて「Patient-derived sarcoma cell lines for pharmaco-proteogenomics」と題して講演しました。本シンポジウムは、世界最大の細胞株データベース「Cellosaurus」を構築するAmos Bairoch教授(Swiss Institute Bioinformatics)が企画されたものです。AmosさんはSwiss-Protを開発した研究者としてプロテオミクスの分野ではもっとも著名な研究者の一人です。Amosさんも私もプロテオミクスから細胞株に興味をもつようになり、興味の方向性は違うものの大胆に分野を横断して活躍するところは共通していると思いました。
スピーカーの集合写真