理事長年頭のご挨拶
皆様、新年あけましておめでとうございます。
昨年は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)蔓延への対応が求められ、当センターにおいても医療の提供や新たな医療技術開発の研究推進に少なからずの影響を受けました。その中で、センターとして大きな運営上の損失が発生することもなく、がん患者さんが被る不利益も最小限に止める形で、最高のがん医療をがん患者さんに届けるというセンターとしての本来の使命を果たすことができたのは、職員の皆様の不断の献身的ご尽力があったからこそと深く感謝しています。改めてお礼を申し上げたいと思います。国内の新型コロナウイルス感染は依然として高いレベルで続いており、余談を許さない状況に変わりはありません。がん患者さんや職員の皆様の健康と安全を確保するためにも、引き続き緊張感を保ちながら、個々に規律を守って臨む必要があると考えています。
一方で、このような状況においても、年間約100万の新規がん患者さんが発生しています。治癒可能ながん患者さんを確実に救うためにも、コロナ禍における適切ながん医療提供の仕組みを築き上げる必要があります。加えて、ゲノム医療や医療AI、低侵襲手術など、治癒率やQOLのさらなる向上と死亡率低減を目指した新規医療技術の開発は当センターに求められる重要な使命であることに変わりはありません。2019年6月に保険収載されたがん遺伝子パネル検査のC-CAT(がんゲノム情報管理センター)へのデータ集積は着実に進められており、2021年からは集積データの幅広い利活用についての本格的な検討が進められることになります。血液等のリキッドバイオプシーを用いた低侵襲ながん医療技術の開発研究やAI技術を駆使した次世代の内視鏡外科技術の開発も一層の加速が図られることと思います。さらに今年からは、がんの全ゲノム解析等実行計画がAll Japan体制で開始されることになりますが、同時に全ゲノム解析の成果をいち早く患者さんへ還元することも求められており、当センターにとっても大きなチャレンジと捉えています。さらに、革新的な医療技術等の開発研究を、特にアジア地域を中心とした国々への国際的展開を図るための国家間連携の構築とその安定的な運営、公衆衛生科学・社会医学分野の基盤研究及び実装科学研究の一層の深化と強化は新たな命題であり、その達成のための「社会と健康研究センター」と「がん対策情報センター」の組織再編もまた当センターの新たな目標に向けての重要な取り組みとなります。
国立がん研究センターに対しては、様々な社会的環境の変化に応じた柔軟かつダイナミックな対応力が常に期待されています。築地・柏の両キャンパスが連携協力しながらも互いに切磋琢磨することで、当センターが日本のみならず世界をリードするがん医療・がん研究の牽引車とならんことを皆さんと一緒に目指していきたいと思います。
職員及びご家族の皆様のご健康とご多幸を祈念するとともに、センター全職員の益々のご活躍を心より願っています。本年もご協力のほど、宜しくお願いいたします。
令和3年1月6日
国立がん研究センター理事長 中釜 斉