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国立がん研究センター

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講演会:「図書館でのより良い医療情報提供のあり方を考える2024~市民の課題を解決する図書館であるために~」

開催日時

  • 開催日:2024年11月20日(水曜日)
  • 開催時間:15時~17時10分 

プログラム

[第1部] シンポジウム

講演会開催趣旨

国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 患者市民連携推進室 室長  
八巻知香子

医療者が知ってほしい、理解してほしい医療情報

がんの基礎知識、標準治療の考え方、気を付けてほしい情報
国立がん研究センターがん対策情報センター本部 副本部長  若尾文彦

糖尿病の基礎知識、大事なこと、こんな情報は役立つ
国立国際医療センター研究所・糖尿病情報センター/病院
糖尿病内分泌代謝科 医師 井花庸子

妊娠期・授乳期の妊婦さんが心配する健康問題、薬のこと、知ってほしいこと
国立成育医療研究センター
妊娠と薬情報センター 医師 藤岡泉

図書館、患者・市民の立場からの意見

コーナーづくりや利用者対応での信頼できる「がん」情報の提供に関すること
和歌山県立図書館 総括司書  松田公利

患者・市民の立場から図書館に望むこと
認定NPO法人希望の会 理事長 全国がん患者団体連合会 理事 轟浩美

総合討論

 

[第2部] がん情報ギフト「結ぶ」事業 実施報告会

那須塩原市図書館(栃木県):「がん情報支援」のおはなし会
〈共同実施機関:一般社団法人アソシエ/乳がん患者会マンマぴあルーチェ〉

取手市立ふじしろ図書館(茨城県):健康一番・健診は大事 図書館からがん情報を発信します
〈共同実施機関:取手保健センター〉

  • 取手市立ふじしろ図書館は録画での報告のため、直接アーカイブをご視聴ください。

聖路加国際病院(東京都):がんをよく知り 自分らしく生きる道を探す
〈共同実施機関:中央区立京橋図書館/聖路加国際大学PCC開発・地域連携室〉

名古屋医療センター(愛知県):図書館で育む、がんと緩和ケア
〈共同実施機関:愛知県図書館〉

概要

11月20日、第26回図書館総合展のオンライン出展企画として「図書館でのより良い医療情報提供のあり方を考える2024~市民の課題を解決する図書館であるために~」を開催、図書館、医療機関、行政関係者など167名の参加がありました。

八巻室長の画像
八巻室長

第1部 シンポジウムでは、がん、糖尿病、妊娠期・授乳期というタイプの異なる疾患・健康状態を取り上げ、図書館からの健康医療情報提供のあり方について考える講演会、続いて総合討論を行いました。

始めに八巻知香子・がん対策研究所患者市民連携推進室室長が本イベントの開催趣旨を説明しました。

若尾副本部長の画像
若尾副本部長

その後「医療者が知ってほしい、理解してほしい医療情報」として3名が登壇。若尾文彦・がん対策情報センター本部副本部長は「がんの基礎知識、標準治療の考え方、気を付けてほしい情報」をテーマに講演。がんが「珍しい不治の病」というイメージはいまだに根強く、ネット上には間違った有害な情報が溢れている状況を踏まえ、がんに関する予防・検診、治療などの基礎知識を紹介しました。また、新しい情報を見つけたときに懐疑的・批判的に情報を見極めるヒントも紹介。さらに、信頼できる情報源の一つとして、「がん情報ギフト」を活用していただきたいと結びました。

井花先生の画像
国立国際医療研究センター・井花医師

次に、国立国際医療センター井花庸子先生が「糖尿病の基礎知識、大事なこと、こんな情報は役立つ」と題して講演。糖尿病とは何か、インスリンと高血糖との関係、糖尿病の罹患傾向、症状や合併症、治療法の多様さなどを明快に説明しました。最後に、一般の方が入手できる医療情報に関する注意点について解説しました。

藤岡先生の画像
国立成育医療研究センター・藤岡医師

最後に、国立成育医療研究センター藤岡泉先生が「妊娠期・授乳期の妊婦さんが心配する健康問題、薬のこと、知ってほしいこと」をテーマに講演。妊娠中・授乳中によく生じる悩みについて、マイナートラブルについては科学的根拠が乏しい分野にて信頼性の高い書籍が乏しい状況、一方で、合併症として妊娠高血圧症候群では多くの研究がなされ科学的根拠が多い分野となり、学会や公的機関の情報が参考になる現状を語りました。さらに「妊娠と薬の基本的考え方」や、参考になる本・サイトが紹介しました。

松田氏の画像
和歌山県立図書館・松田総括司書

続いて、「図書館、患者・市民の立場からの意見」として、2つの講演がありました。

1つ目は、和歌山県立図書館の松田公利氏による「コーナーづくりや利用者対応での信頼できる「がん」情報の提供に関すること」。図書館司書の役割として、信頼できる資料を見極めて収集し、必要な人に届けることの重要性が強調されました。そのためにも公共図書館は医療専門機関等と連携して、確かな情報・知識を得るための環境づくりに取り組むことの必要性が説かれました。

轟氏の画像
NPO法人希望の会・轟理事長

2つ目は、認定NPO法人希望の会/全国がん患者団体連合会の轟浩美氏による「患者・市民の立場から図書館に望むこと」。根拠の乏しい情報の危うさについて、夫ががんを告知されたときの経験をもとに語られました。インターネットでの検索上位が広告として表示される科学的根拠が乏しい情報であったことなど、溢れた情報に溺れることで、標準治療の理解から遠のく可能性があることを指摘。最後に、図書館が人生の選択の根拠となる情報を知る権利を守り「誰一人取り残さない情報取得」の場となることへの期待が述べられました。

講演後の総合討論では、それぞれの登壇者がコメントを述べ、参加者からの質問に答えました。
「外部の医療機関等と具体的にどういった連携をしているか」という質問に対しては、和歌山県立図書館・松田氏が「選書にあたって図書館の現場で判断がつかないときに、連携先の担当者に問い合わせる」といった事例をご紹介。また、若尾副本部長からは、がんのことについてはがん相談支援センターで誰でも相談できるので活用してほしいと語りました。

「闘病記と医学書は分けて配置したほうがいいか」という質問に対し、認定NPO法人希望の会・轟氏は「配置場所が離れていると、医学書は「医療者が読むための本」と思ってしまい、近づくこともない」「ふだんは選ばないような本を手に取れる環境整備が必要ではないか」と回答。また、井花先生からは「糖尿病の視点でみると、体験記はすごく大事な要素」とした上で、「医学書と同じ場所に配置しつつ、体験談はすべての人に当てはまるものではないことがわかる掲示ができればよいのではないか」との認識が語られました。

「医療情報に関して複数の病院や専門医から意見を聞いた方がよいか」との質問に対し、藤岡先生からは「様々な機関とつながるのも難しいと思うので、関係が持てたところに聞いていただくといい。さらに、意見を聞きつつ図書館が、利用者と医療機関・専門医との橋渡し的役割を担っていただけると有難い」と述べられました。最後に、八巻室長が「医療側としても各機関で連携し、信頼できる情報の提供に継続して取り組んでいきたい」と述べ、第1部を結びました。

当日の登壇者たちの画像

 

第2部では、がん情報ギフト「結ぶ」事業として、2023年度に実施された図書館と地域の他機関が協働した企画について、那須塩原市図書館、取手市立ふじしろ図書館、聖路加国際病院、名古屋医療センターの4施設より、がんやその情報リテラシーの向上、がん相談支援センターの周知を目的としたイベント、音楽会・絵本読み聞かせ・がんサバイバーからのお話会の開催など、それぞれの企画開催の様子や具体的な取り組みについて紹介されました。また、各企画とも総じて、図書館・医療機関・教育機関のみならず、人と人を結ぶ活動に展開させ、地域社会への貢献を果たせたことが語られました。

参加対象者

  • 図書館でがん情報・医療情報を取扱う関係者
  • がん情報・医療情報に関心のある方

主催(共催)

国立がん研究センター「がん情報ギフト」プロジェクト
国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部「ナショナルセンターによる医療情報発信の基盤整備事業」

本講演会は、正力厚生会2024年度医療機関助成および令和6年度国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部横断的研究開発費横断的研究推進費にて実施しました。

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