RET融合遺伝子陽性の肺がんに対する全国規模のスクリーニングと新規分子標的治療薬の医師主導治験を開始
個別化治療を目指した新たな新薬開発モデル
2013年1月15日
独立行政法人国立がん研究センター
独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田 知光)早期・探索臨床研究センターでは、RET融合遺伝子(1)陽性の肺がん(以下RET肺がん)の大規模スクリーニングと新規分子標的治療薬・バンデタニブ(2)の第II相臨床試験(医師主導治験)を世界に先駆けて実施いたします。
昨今、遺伝子解析技術の進歩により、肺がんにおける新しい遺伝子異常が相次いで発見されています。これらの遺伝子異常を有する肺がんには、分子標的治療薬の効果が高いことが基礎研究でわかっていますが、その多くは低頻度であるため、臨床試験を行うのに十分な患者数を集めるのが難しいのが現状です。
RET融合遺伝子は、2012年3月に報告された肺がんの発生・増殖にかかわる重要な遺伝子で[論文1から4]、RET肺がんの患者さんの割合はわずか1から2%とされています。バンデタニブはRET融合遺伝子の働きを阻害する新規分子標的治療薬であり、RET肺がんの患者さんに対して効果を示す可能性があります。当センターでは、全国規模の遺伝子診断ネットワークを構築し、医師主導治験を早期にスタートさせることで、RET肺がんの患者さんにいち早く有効な新薬を届けることを目指しています。
詳しくは関連ファイルのプレスリリースをご参照ください。
RET融合遺伝子について
RET融合遺伝子は、2012年3月に日米韓の3ヵ国から同時期に報告された遺伝子異常で[論文1から4]、肺がんの発生・進展ならびにがん細胞の生存に強くかかわっています。日本からの報告は2編あり、うち1編は国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野の河野隆志分野長のグループによるものです。当センターでは、RET融合遺伝子の発見から1年未満という短期間でRET肺がんに対するバンデタニブの臨床試験を実現化し、同剤の早期臨床応用を目指しています。
バンデタニブについて
バンデタニブは経口の治験薬です。がんの増殖にかかわる「RET」や「上皮増殖因子受容体(EGFR)」、がん細胞が栄養を取り込むための血管をつくる「血管内皮増殖因子(VEGF)」等のタンパク質の働きを抑えることで、がんの増殖を阻止すると考えられています。すでに海外では、進行性の甲状腺髄様(ずいよう)がんの治療薬として、2011年4月にアメリカ、2012年1月にカナダ、同年2月にヨーロッパで承認されていますが、国内では未承認の薬剤です。甲状腺髄様がんの形成・進展にはRET活性が主要な役割を担っていることが確認されており、バンデタニブは特にこのRETの活性を抑える働きにより、効果を示すと考えられています。
参考論文
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