国立がん研究センター中央病院
がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査を先進医療で実施
TOP-GEARプロジェクトで構築した検査システムの保険適用を目指し検証開始
2018年4月3日
国立研究開発法人国立がん研究センター
in English
先進医療Bでの遺伝子検査の登録は2018年11月1日をもって終了しました
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉)中央病院(病院長:西田俊朗、所在地:東京都中央区)は、患者さんのがんに関する遺伝子を1回の検査で網羅的に解析し、抗がん剤の選択に役立てる遺伝子検査を4月9日より先進医療Bで実施します。
(患者さん向け先進医療の説明ページ https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/information/20180403/index.html )
この遺伝子検査は、国立がん研究センターが日本人の特徴を踏まえ開発した試薬「NCCオンコパネル」を用いて、がんに関連する114個の遺伝子変異と12個の融合遺伝子変異を1回の検査で調べることができます。この「NCCオンコパネル」での検査をはじめ、解析に使用するプログラムの開発、解析結果に基づいて方針を決定するエキスパートパネルの実施方法や院内の体制などは、中央病院での臨床研究「TOP-GEAR(トップ-ギア)プロジェクト」(2013年7月開始UMIN000011141)で検証を進めてきました。そして現在、一連の検査システムとして構築し、シスメックス株式会社とともに体外診断用医薬品・医療機器としての薬事承認、保険適用を目指しています。
先進医療Bは、保険適用の対象にするかどうかを検討するため、有効性・安全性を臨床研究で評価するものです。本先進医療は「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」として実施します。
対象は、16歳以上の標準治療がない、または標準治療があっても終了(見込み含む)している固形がんの患者さんあるいは原発不明がんの患者さんで、国立がん研究センター中央病院のほか、今後、がんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療連携病院の一部とも協力し、205例から最大350例の患者さんに参加していただきNCCオンコパネル検査の有用性を検証します。その後、遺伝子検査の結果に基づき、既承認薬だけではなく未承認薬や適応外薬を用いた企業治験や医師主導治験なども含めた薬剤選択を行い、その有効性についても確認し保険適用を目指します。
背景
遺伝子解析技術の進歩により、がんの原因となる様々な遺伝子変異が相次いで発見されてきました。遺伝子変異を有する一部のがんには、対応する分子標的薬の治療効果が非常に高いことも分かり、乳がんにおけるHER-2遺伝子増幅、非小細胞肺がんにおけるEGFR 変異、ALK融合遺伝子や悪性黒色腫におけるBRAF変異では、対応する分子標的薬による治療が既に保険診療で行われています。これらの遺伝子変異を調べる検査は、1回の検査で1個の遺伝子変異を調べるものです。
一方、近年、遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる次世代シークエンサーの開発により、治療対象になる多数の遺伝子変異を網羅的に短時間で検出することが可能になりました。また、がん種が異なっても(原発部位・臓器が異なっていても)同じ遺伝子に変異がある場合や、同じ分子標的薬が有効な場合もあることが分かってきました。このような背景から、特に標準治療がないがんや標準治療の効果がなくなった患者さんについて、がんの遺伝子を網羅的に調べ、個々の患者さんのがん組織の遺伝子変異に合った薬剤を選択する治療が望まれていました。
この、患者さんのがん組織の遺伝子変異に適した治療を行うがんのゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画においてその推進が掲げられ、全国どこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制の整備が進められています。
「NCCオンコパネル」による遺伝子検査について
この遺伝子検査では、1回の検査でがんに関連するたくさんの遺伝子変異を調べ、抗がん剤の選択に役立てることができます。一方で、遺伝子検査の結果、遺伝子に異常が見つからない場合や、異常が見つかっても治療に使用できる薬剤がない場合もあり、これまでの臨床研究において遺伝子変異に合う薬剤投与ができた患者さんは約10%です。下記、対象者や費用等も踏まえ、主治医等とよくご相談の上、お受けください。
本研究の対象者
- 年齢が16歳以上である。
- 全身状態が良好である。
- 病理学的診断によって悪性固形腫瘍(固形がん 注:2)と診断されている。
- 治癒切除不能または再発の病変を有する(1)または(2)の腫瘍。
(1)標準治療がない、標準治療が終了している、もしくは終了が見込まれる固形がん
(2)原発不明がん(注:1)
注:1 固形がん
がんのうち血液を作る臓器である骨髄やリンパ節から発生する白血病やリンパ腫をのぞいた、かたまりを作って増殖するタイプのがん(例:胃がん、肺がん、乳がん等)のことです。
注:2 原発不明がん
がんが発生した臓器(原発部位)から離れた部位で進展したがん(転移巣)が先にみつかり、原発部位がわからないがんのことです。全固形がんの3%から5%を占める。
本研究の方法
- 先進医療の説明(インフォームドコンセント)を行います。
- 遺伝子解析を行う腫瘍組織を準備し、解析可能か確認します。
- 腫瘍組織と比較するための採血を行います。
- 腫瘍組織および血液からDNAを抽出し、NCCオンコパネルにより解析を行います。
- 網羅的遺伝子変化の解析結果は、院内または連携病院のエキスパートパネルと呼ばれる複数の専門家で構成される委員会によって、「意義づけ」が行われます。
- 遺伝子解析結果を担当医へ返却します。
- 遺伝子解析結果は担当医から説明されます。
検査にかかる期間
検査には数週間かかり、患者さんに結果を戻すまでには1カ月弱を見込んでいます。
NCCオンコパネルでの検査対象遺伝子
「NCCオンコパネル」に搭載されている遺伝子は114個で、遺伝子異常によって機能が活性化した場合に意義がある遺伝子と、機能が欠失した場合に意義がある遺伝子に分けられます。活性化遺伝子異常を認めた場合に治療方針決定の補助となりうる遺伝子(赤字)、機能喪失遺伝子異常を認めた場合に治療方針決定の補助となりうる遺伝子(青字)は以下の通りです。また114個の遺伝子のうち、12個については、治療方針決定の補助となりうる融合遺伝子(茶色)についても調べます。
費用
先進医療技術である遺伝子解析に必要な費用は全額自己負担となり、それ以外の検査や診察の費用は一般の保険診療と同様の費用を負担いただきます。
また、遺伝子検査の結果、遺伝子に異常が見つからない場合や、異常が見つかっても治療に使用できる薬剤がない場合でも下記費用はかかります。
遺伝子検査にかかる費用
約67万円(このうち一部を研究費で補てんするため患者さんの負担額は約47万円)
上記に加え、本研究に必要な検査や診察にかかる費用(注:3)の目安
約2万5千円(3割負担の場合)
(注:3)生検の有無等により異なります。また、結果に基づく治療の費用は含みません。
研究期間(予定)
登録期間:1年(2018年4月9日~2019年3月31日)
追跡期間:半年(2019年4月1日~2019年9月30日)
登録数
205例以上350例以内
患者さんなど一般の方からのお問合せ先
国立がん研究センター中央病院
相談支援センター
電話番号:03-3547-5293(平日10時から16時まで)
報道からのお問合せ先
国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局広報企画室
郵便番号104-0045 東京都中央区築地5-1-1
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ファックス:03-3542-2545
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