コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > プレスリリース > 研究班独自の患者体験調査に基づく提言書を作成

患者体験調査平成30年度調査からみえた実態を政策反映へ研究班独自の患者体験調査に基づく提言書を作成

2020年11月7日
国立研究開発法人国立がん研究センター

 

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)を中心とする厚生労働科学研究費補助金「次期がん対策推進基本計画に向けた新たな指標及び評価方法の開発のための研究」研究班(班長:東 尚弘、所属:国立がん研究センターがん対策情報センターがん臨床情報部)(以下、研究班)は、2018年度から2020年度のがん対策推進協議会患者・家族委員および一般社団法人全国がん患者団体連合会有志の皆様とともに、「患者体験調査に基づく提言書(以下、提言書)」を作成しました。

2020年10月14日に国立がん研究センターがん対策情報センターから公表された「患者体験調査 平成30年度調査」報告書(注1)で明らかになった実態を、今後のがん対策に最大限に生かしたいという強い思いから、調査に深く関わった関係者の有志が中心となり、報告書とは別途「提言書」として意見をまとめ、公開するに至りました。

平成30年度患者体験調査に基づく提言書
厚生労働省科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)
「次期がん対策推進基本計画に向けた新たな指標及び評価方法の開発のための研究」

本提言書のポイント

  • 本提言書は「患者体験調査 平成30年度調査」報告書(注1)に基づき、調査で明らかになった実態を、今後のがん対策に最大限に生かしたいという強い思いから、患者関係者、研究班有志で作成
  • 本提言書の目的は、客観的視点、中立的な患者体験調査報告書とは異なり、さまざまな立場における主観的議論と自由な発想を取り入れ、よりよいがん医療につなげることにある
  • 患者体験調査で課題が存在することが明らかとなった「患者への情報周知」「医療者に対する周知」「就労支援」「AYA世代のがん対策」「希少がん対策」など、項目を幅広く網羅
  • 各項目を「提言」「具体的な方策の提案」「提言の根拠」の3つで構成
  • 幅を持たせるため「提言」は抽象的表現としたが、「具体的な方策の提案」で実現可能性の高いアイデアを提案し、現場での実行性を担保
  • 各項目に「対応する第3期がん対策基本計画の記述」を記載することで、提言と関わりのある現行の施策を明確化し、「提言の根拠」で政策反映へのメッセージを強調
  • 患者体験調査から推測が困難な「高齢患者」「障害のある患者」「難治がんの患者」などの課題は、今後、特別な解析や適宜追加調査を行う必要がある

 平成30年度患者体験調査に基づく提言書

概要

本提言書は、「患者体験調査 平成30年度調査」報告書(注1)を基に、多少の主観が入ることを恐れず、今後に役立つ提言および提案を可能とするため、患者体験調査の計画、実施、結果解釈に深くかかわった研究班員と2018年度から2020年度のがん対策推進協議会患者・家族委員および一般社団法人全国がん患者団体連合会の有志が中心となり、今後のがん対策に向けた提言をまとめたものです。

新しいアイデアの議論をできる限り可能とするため、それぞれの分野について、我々として強く主張する「提言」、課題解決のためのより具体的な「提案」、そしてそれらの根拠をまとめました。提案はより自由な発想を記載し、検討の種を提供するという位置づけとしています。

項目立て構成

  • 情報提供・周知に関する事柄: 1・2.患者、3.医療者、4・5.個別事項の情報
  • 医療提供体制: 6.地域連携、7.緩和ケア
  • 療養生活関連: 8.就労支援、9.経済的担、10.社会的つながり
  • 知識の普及: 11.臨床試験、12.ゲノム医療
  • 特別な集団に関する事柄: 13.AYA世代、14.希少がん

提言書の構成

【提言】

患者体験調査で浮かび上がった、焦点を当てるべき各主題であり、対策の方向性を示すものです。

【具体的な提案】

各主題に対して、考えられる方策(アクション)について列挙しています。具体的な方策は、実施が容易なものや困難なもの等、様々存在しますが、まずはアイデアとして一定以上の実現可能性な事柄をあげています。

【根拠】

提言と具体的な方策の提案について、その根拠や背景にある考え方、データについて説明しています。患者体験調査の結果を基としていますが、現在行われているがん対策活動や他の関連調査なども併せて考察をしています。

作成に参加いただいた患者関係者(敬称略 50音順)

  • 一般社団法人 グループ・ネクサス・ジャパン
    天野 慎介
  • 東京医科歯科大学医学部附属病院 血液内科
    坂下 千瑞子
  • 一般社団法人 CSRプロジェクト
    桜井 なおみ
  • 認定NPO法人 希望の会
    轟 浩美
  • NPO法人 パンキャン・ジャパン
    眞島 喜幸
  • NPO法人 愛媛がんサポートおれんじの会
    松本 陽子
  • NPO法人 がんサポートかごしま
    三好 綾
  • サッポロビール株式会社
    村本 高史

資料

注1)患者体験調査 平成30年度調査 -概要-

2012年に閣議決定された第2期がん対策推進基本計画から、がん対策を評価する指標を策定し、進捗評価を行うことが盛り込まれた。2014年度に第1回目を実施。2017年度より第3期がん対策推進基本計画が施行され、2021年度に実施予定である中間評価に向むけて、2019年度に2回目の患者体験調査を実施。2020年10月14日に国立がん研究センターがん対策情報センターから公表された。

 患者体験調査に基づく提言書 提言一覧 令和2年10月

「診断時の患者への情報周知」

提言 : 患者や患者の家族が診断直後から知っておくべき情報へアクセスできるような仕組みの整備を進めるべきである。

「相談支援センターの活用」

提言 : 患者が主治医以外に相談できる医療スタッフがいることを知り、必要な情報を継続的に取得、また支援を受けられる体制を確実にするために、すべての患者ががん相談支援センターを知り必要時に円滑に活用できる体制を整えるべきである。

「医療者に対する周知」

提言1 : 適切な患者支援をするため、がん医療に当たる医療者に対して以下のこと(提言書の本文中に示した患者へ情報提供が必要な事項)について周知あるいは教育の機会を提供するべきである。

提言2 : 特に、AYA世代は様々な生活背景の特殊性や細かく急速に変化するニーズがあること、数多くの項目について、他の年代の患者よりも不利な状況に置かれていることを医療者側が意識するように周知するべきである。

「妊孕性温存に対する対応の強化」

提言 : 妊孕性に影響のある治療を受けるすべてのがん患者に対し、挙児希望の有無の確認と必要十分な説明が確実に行われるとともに、希望する患者が妊孕性温存を実施できる体制をより強化するべきである。

「セカンドオピニオン制度の拡充」

提言 : がん患者がセカンドオピニオン制度をより活用できる環境を整備すべきである。

「地域医療連携の強化」

提言 : 医療機関の連携をさらに強化し、患者の紹介・転院がよりスムーズに行える体制を整備するべきである。

「緩和ケア」

提言 : 身体的・心理社会的な痛みや苦痛なく過ごすことができるように、診断時からの緩和ケアを提供するとともに、痛みや苦痛に対する迅速な対応を確保する体制を整備するべきである。

「就労支援」

提言 : 医療機関、企業の両方において治療と仕事の両立支援に関する啓発・教育を行うとともに、その取り組みに対する評価・推進策を整備していくべきである。

「経済的負担」

提言 : 経済的な負担については、どの程度の負担を許容すべきか、また救済のレベルなどについて、開かれた議論を行い、一定の方向性を見出すべきである。

「社会とのつながり」

提言1 : 患者が家族や周囲の人との関係等について過度に悩んだり、疎外感や社会的な孤立感を抱いたりすることがないよう支援するために、ピアサポートを活用できる場を確保し、ピアサポートの提供者、利用者双方にとって安心かつ安全に実施できる体制づくりと普及啓発を国が支援すべきである。

提言2 : がん教育の推進において、がんに関する国民の理解を深め、がんやがん患者に対する偏見をなくすことを目標とした内容をより意識するとともに、その効果について、継続的に評価をしていくべきである。

提言3 : 患者だけではなく、その家族に焦点を当てて支援する場を確立するべきである。

「臨床試験の推進」

提言 : 本邦の臨床試験の活性化と同時に、患者が情報格差による不利益を被ることがないような体制を構築するべきである。

「ゲノム医療の認知」

提言 : 本邦のゲノム医療の認知度を向上させ、より多くの患者がその恩恵を享受できるような体制づくりをするべきである。

「AYA世代のがん対策」

提言1 : AYA世代のがん患者に関して治療と療養生活のバランスをはじめ、個々の患者の多様なニーズに対応できるノウハウを集中的に蓄積し、それを生かした確実な診療体制、情報提供、相談支援の実施体制を整備するべきである。

提言2 : AYA世代のがん患者については、本解析をもとに具体的な問題の所在とその大きさについて考察するとともに、対応した追加調査を行い解決策の同定と実行に向けた計画策定を行うべきである。

「希少がん対策」

提言1 : 希少がん患者については、がん種ごとの実情をさらに詳細に検討し、それぞれにおいて最適な専門病院との連携や医療の充実に向けての対策が必要である。

提言2 : 希少がん診療に特に有用な可能性のあるゲノム医療、臨床試験、あるいはセカンドオピニオンの情報は、特に希少がん患者に対しては普及を進めていくべきである。

注:抜粋のため、「3.医療者に対する周知」は提言書と表現が異なる部分があります。ご留意ください。

報道関係からのお問い合わせ先

【患者体験調査に基づく提言書について】

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん臨床情報部

東 尚弘、渡邊 ともね、市瀬 雄一、松木 明、今埜 薫

〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1

電話番号:03-3542-2511(内線1606)

E-mail:hsr●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)

【その他全般について】

国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室

担当:がん対策情報センター がん登録センター 院内がん登録室 高橋 ユカ

〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1 

電話番号:03-3547-5201(内線 3548)(担当:高橋)

電話番号:03-3542-2511(代表)

E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えてください)

関連ファイル

Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

ページの先頭へ