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国立がん研究センター

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国立がん研究センター東病院と朝日サージカルロボティクス株式会社が共同開発新コンセプトの腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」医療機器承認

2023年3月23日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 執刀医が一人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作できる新しいコンセプトの腹腔鏡手術*1支援ロボット「ANSURサージカルユニット」を共同で開発し、医療機器として承認されました。
  • 通常2人で行う助手とスコピストの作業を1台のロボットが担うことで、外科医のワークライフバランスの改善・向上が期待されます。また、より効率的に手術を進めることで手術時間が短縮され、より患者さんの体への負担が少ない医療の提供が可能となります。
  • 国立がん研究センター発ベンチャー*2による医療機器の承認取得は初めての成果です。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市)と朝日サージカルロボティクス株式会社(代表取締役社長:千葉 和雄、千葉県柏市、旧株式会社A-Traction)が共同で開発した、腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」が2023年2月1日に日本で医療機器として承認されました。国立がん研究センター発ベンチャーによる医療機器の承認取得は初めての成果です。

ANSURサージカルユニットは、現在世界的に市場を独占している手術支援ロボットとは異なる新しいコンセプトの手術支援ロボットです。腹腔鏡手術において、従来、執刀医の指示で鉗子を操作していた助手や内視鏡カメラを操作するスコピストに代わり、執刀医は自身の鉗子を持ちながら、ロボットが保持する鉗子・内視鏡カメラを操作することができます。通常2人の外科医が担う助手とスコピストの作業を1台のロボットが担うことで合理的な手術環境が整備され、外科医のワークライフバランスの改善・向上が期待されます。また、執刀医は一人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作できるようになるため、自身が望む視野が得られ、適切な強度で臓器を引っ張ったり患部を切除できることができます。より効率的に手術を進めることで手術時間が短縮され、より患者さんの体への負担が少ない医療の提供が可能となります。

本ロボットは、今後も増え続けることが想定される腹腔鏡手術に対して外科医の数が充足しないという重大な問題を解決し、医師の働き方改革の推進に貢献してまいります。さらに今後、国立がん研究センター東病院では「ANSURサージカルユニット」を用いた手術に関するエビデンスを構築し、本ロボットの普及とより良い医療の提供を目指します。

  • 腹腔鏡手術
  • サージカルユニット

図1:腹腔鏡手術(左)とANSURサージカルユニット(右)との比較。2人で行う助手とスコピストの作業を1台のANSURサージカルユニットが担う、新しいコンセプトの手術支援ロボットを開発。

開発背景

国立がん研究センター東病院は、日本初の革新的な医療機器創出を目指し、2015年5月にNEXT医療機器開発センター(現 医療機器開発センター運営部、医療機器開発推進部門)を設置しました。NEXT医療機器開発センターを中心に、医療現場で未だ解決されないニーズを解決するため、真に医療現場に必要な医療機器開発を推進してきました。

国立がん研究センター東病院では、大腸がんに対する手術の80%以上を腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡手術は一般的には外科医3人、多い時には5人(下部直腸がんの場合)で行い、長時間外科医を拘束する必要があり、患者さんへの手術提供機会の制限や労働時間の超過などの課題が指摘されていました。

こうした課題を解決すべく、国立がん研究センター東病院 大腸外科長・医療機器開発推進部門長の伊藤雅昭は新しいコンセプトの手術支援ロボットの創出を目指し、当時、東京大学の助教であったエンジニアの安藤岳洋(現朝日サージカルロボティクス 最高開発責任者)と同じくエンジニアの宮本寛之と共に、2015年8月7日に国立がん研究センター発ベンチャーとして株式会社A-Tractionを創業しました。その後株式会社A-Tractionは2021年7月7日に朝日インテック株式会社によって完全子会社化され、朝日サージカルロボティクス株式会社に社名が変更されました。

国立がん研究センター東病院 大腸外科長・医療機器開発推進部門長
伊藤 雅昭よりコメント

外科医の発想が出発点となり、この手術支援ロボットは生まれました。このロボットが、多くの臨床現場で使われ、多くの患者さんを治すことに役立つことを希望します。またこのロボット開発において、今まで日本にあまりなじみになかった「ベンチャー起業」による開発形態を我々は選択しました。迅速な意思決定のもと、最小の人員で最大の効果を生むこのような開発形態は今後も日本の中でも広がっていくと思います。「自分のアイデアが形になり、医療を変える」、こんなワクワク感を次の開発者にも味わっていただきたいです。
本開発に関わったすべての方々に心より感謝いたします。

研究費

  • 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
    医工連携事業化推進事業(2019-2020年度)
    「術中の臓器損傷のリスクを低減させる手術支援ロボットの製品化」

用語解説

*1 腹腔鏡手術

お腹の臓器の手術において、お腹に開けた複数の小さな穴からカメラや手術器具を入れて、カメラ映像を見ながら行う手術。大きくお腹を切り開いて手術を行う開腹手術よりも、患者さんの負担が少なく、回復までの時間が早いことが特長。開腹手術に代わり、近年増加している。

*2 国立がん研究センター発ベンチャー

国立がん研究センターでは、研究成果を社会還元するため、知的財産戦略、産学連携を積極的に推進し、その一環として、センター発ベンチャーによる研究成果の実用化を支援。当センターの役職員が成し得た知的財産権や研究成果等を活用するために設立したベンチャーからの申請に対し、研究成果の活用が期待できるベンチャーを国立がん研究センター発ベンチャーとして認定している。

問い合わせ先

研究に関する問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院
大腸外科/医療機器開発推進部門 伊藤雅昭
電話番号:04-7134-6917 (直通)
Eメール:maito●east.ncc.go.jp

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表)FAX:04-7130-0195
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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