未知の小腸がん遺伝子「COPA」を発見―新たな発がん経路を解明―
2026年6月12日
慶應義塾大学医学部
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
概要
十二指腸、空腸および回腸の総称である小腸は、栄養素や水分の吸収に必須の臓器であり、成人ではその長さは約3–4mにもなります。そこに発生する小腸がんは全消化管がんの3%以下を占めるまれな腫瘍ですが、その頻度はゆるやかに上昇傾向にあります。全小腸がん患者の5年生存率は35%前後と不良であり、新たな診断技術や治療方法の開発が求められています。しかし、小腸がん自体がまれなため、臨床検体や症例の蓄積が難しく、例えば薬物療法は大腸がんに準じた治療が実施されているのが現状です。従って、小腸腫瘍の成り立ちや進行メカニズムをより深く理解し、その知見を臨床に還元することが求められています。
小腸がんは前がん病変である小腸腺腫から発生すると考えられています。大腸では、20年以上前より腺腫とがんのいずれにおいてもAPC遺伝子変異が高頻度で認められることがわかっており、腺腫からがんが発生する「腺腫―がんシーケンス」が発がん経路の大部分を占めていることがよく知られています。しかし、小腸においては小腸腺腫の90%前後にAPC遺伝子変異が認められる一方で、小腸がんではその頻度は30%前後のみであることがわかっています。このことから、小腸がんの大半はAPC遺伝子変異を伴わないまれな前がん病変から発生すると示唆されますが、そのような病変が実際に存在するのか、また、もし存在する場合、どのような遺伝子異常があるのか、これまでほとんどわかっていませんでした。
論文情報
雑誌名
Nature Genetics電子版
タイトル
Recurrent COPA mutation drives R-spondin-independent Wnt activation in intestinal tumors
タイトル和訳
COPA変異は腸管腫瘍においてR-spondin非依存的なWnt活性化を駆動する
著者
藤井正幸、猜都尚子、岸本翔太郎、白石航也、橋本大輝、平岡伸介、野中哲、小嶋基寛、股野麻未、高橋シリラット、Gabriele Colozza、Bon-Kyoung Koo、谷田部恭、加藤元彦、佐藤俊朗、関根茂樹
DOI
https://doi.org/10.1038/s41588-026-02616-9
詳細
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