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国立がん研究センター

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子宮頸がんのステージを知って最適な治療法を選択しましょう子宮頸がんの治療

作成日:2024年12月9日

ステージによって治療法は異なります

子宮頸がんの治療には、手術、放射線治療、薬物療法があり、それぞれの治療を単独、もしくは組み合わせて行います。
実際には、がんの進行の程度(ステージ)やがんの広がり、患者さんの年齢や治療後の妊娠希望の有無、生活環境などを総合的に検討したうえで、主治医とよく話し合って最適な治療法を選択することが大切です。

子宮頸がんでは、がんになる以前の高度異形成といわれる前がん病変から治療になります。

子宮頸部高度異形成・上皮内がん(CIN3)や上皮内腺がん(AIS)、IA期の子宮頸がんでは、まず子宮頸部円錐切除術で組織診を行い、その結果によって治療方針を決定します。
IB期やII期では、手術や放射線治療、放射治療と化学療法を同時に行う同時化学放射線治療が行われます。
III期やIVA 期では同時化学放射線治療、IVB期では薬物療法が中心となります。

どのような治療法においても国立がん研究センター中央病院では婦人腫瘍科、腫瘍内科、放射線治療科など診療科で連携し、患者さんの治療にあたります。

ステージにおける詳しい治療法を見ていきましょう。

前がん病変(CIN3・AIS)とIA期の治療

前がん病変(CIN3またはAIS)からIA期の治療では、子宮の入り口付近だけ部分的に切除する子宮頸部円錐切除術を行い、組織診を行います。そして、その結果により、再度手術を行ったり、放射線治療を行うこともあります。

妊娠・出産の希望がある場合は、子宮頸部円錐切除術が選択されます。この方法だと、子宮を温存できますが、子宮の入り口が狭くなり、月経(生理)血が出にくくなったり、妊娠しにくくなることもあります。高度異形成(CIN3)の場合は、病変部をレーザーで焼く治療を行うこともあります。子宮頸部円錐切除術やレーザー治療は、腟から器具を入れて行うため、お腹に傷は残りません。

子宮を残すことを希望されない患者さんには、子宮を摘出する手術(単純子宮全摘出術)、子宮周囲の組織も含めて切除する手術(準広汎子宮全摘出術)、がんを完全に切除するためさらに広範囲に子宮を切除する手術(広汎子宮全摘出術)を行います。なお、子宮全摘出術が適応となる場合でも、将来妊娠したいという希望がある患者さんには、子宮頸部とその周辺を広範囲に切除し、子宮体部と卵巣は温存する手術(広汎子宮頸部摘出術)を行うこともあります。

子宮頸がん前がん病変と子宮頸がんの資料選択

出典:日本婦人科腫瘍学会編,子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.2022年,金原出版を参考に作成

IB1期~IV期の治療 

がんが大きくなってくると、がんを完全に取りきるため、子宮周辺を広範囲に切除する広汎子宮全摘出術を行います。手術を選択しない場合は、放射線治療、同時化学放射線治療が行われます。

III期以降で、がんが子宮を超えて骨盤内や周辺の組織に広範囲に広がっていたり、リンパ節や臓器に転移している場合は、基本的には手術は行わず、同時化学放射線治療、または薬物療法、放射線治療を単独で行います。進行したがんで、痛みなどのつらい症状がある場合には、緩和療法を行いながら治療を進めることもあります。

がんの広がりに応じてはIIIC 期でも手術を検討する場合があります。

子宮頸がん1B1期~4期の治療選択
出典:日本婦人科腫瘍学会編,子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.2022年,金原出版.を参考に作成

手術では、がんのタイプや広がりによって、子宮頸部の一部や子宮全体を切除します。患者さんの年齢や妊娠の希望も踏まえて、よく相談したうえで治療法を決定します。

子宮頸がんの手術

子宮頸がんの手術については切り取る部分によって異なる呼び方をします。手術は婦人腫瘍科が担当します。
イラストを交えて紹介します。

円錐切除術

子宮頸部の一部を円錐状に切除し、切り取った組織を顕微鏡で観察します。がんの広がりを詳しく調べることで、その後の治療方針を決定することができます。
また、CIN3では、病変を完全に取り除く治療としても行なわれます。子宮の大部分を温存できますが、子宮の入り口を切除するため、妊娠や出産に影響が出る場合もあります。
子宮頸がん 円錐切除術

単純子宮全摘出術

子宮周囲の組織はそのままで、子宮だけを切除します。最初に円錐切除術を行い、採取した組織にCIN3やAIS、ごく早期のがん(IA1期)が見つかった場合に選択されます。手術は、お腹を切って行う開腹手術、腟から器具を入れて子宮を切除する腟式手術、お腹に穴を空けて行う腹腔鏡下手術、またはロボット支援下手術のいずれかの方法で行います。子宮を摘出するため、妊娠はできなくなりますが性交渉(性行為)は可能です。
単純子宮全摘出術

準広汎子宮全摘出術

がんを取り残さないよう単純子宮全摘出術よりも少し広く子宮を切除します。子宮を支えている子宮頸部周辺にある組織(基靭帯)の一部や腟の一部を切除します。膀胱の機能は温存できるため、術後の排尿障害などはほとんど起こりません。妊娠はできなくなりますが性交渉は可能です。
準広汎子宮摘出術

広汎子宮全摘出術

がんを完全に取りきるために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに広範囲に子宮を切除します。子宮周辺の組織や腟も大きく切除するほか、骨盤内のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清)します。がんを取りきる可能性は高くなりますが、リンパ浮腫、排尿障害、性生活への影響などが起こることもあります。がんのタイプや広がりによっては、卵巣を残せる場合もあります。
広汎子宮全摘出術

広汎子宮頸部摘出術

妊娠するための力(妊孕(にんよう)(せい))を保つため、子宮体部と卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ方法で広く切除します。手術方法には、お腹を切って行う開腹手術と腟から子宮を切除する腟式手術があります。本来は切除すべきである子宮体部と卵巣を残すため、この適応となるには、IA2 期またはIB1期で、明らかなリンパ節転移がないなどの一定条件を満たす必要があります。

当院では行っていないため、適応となる場合は、実施している施設へご紹介します。
広汎子宮頸部摘出術

がんの病状によっては、お腹に小さな穴をいくつか開けて、そこから手術器具などを挿入して行う腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術が可能な場合があります。しかし、腹腔鏡下手術は特別な技術を要するため、行っている施設が限られています。治療を希望する場合は担当医に相談しましょう。

副作用

子宮頸がんの治療では、手術で子宮を摘出したり、放射線治療や抗がん剤などの影響で、妊娠や出産に影響を及ぼすことがあります。妊娠を希望する場合は、治療が将来の妊娠や出産に及ぼす影響について、治療前に主治医に確認するようにしてください。

IB1期までなら、妊娠の可能性を残す治療(妊孕性温存治療)ができる場合もあります。しかし、本来切除すべき部分を残すことになりますので、ご自身のがんの状態や再発のリスクも理解したうえで、主治医に希望をきちんと伝え、よく相談しましょう。

手術後の合併症として、リンパ浮腫や排尿のトラブル、便秘などが起きることがあります。また、閉経前に両側の卵巣を切除したり、放射線治療によって卵巣の機能が失われたりすると、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同様の症状が起こることがあります。放射線治療を受けたあと数カ月から数年たってから、消化管や尿路、腟などに影響が出ることもあります。

生殖機能(妊孕性)温存支援

中央病院では治療を受けられる患者さんの妊孕性温存に関するご相談に対し、ご希望に沿って円滑に生殖医療専門機関へ受診できるようなお手伝いをしています。

相談方法

相談をご希望の方は、がん相談支援センターのがん相談専用電話03-3547-5293(平日10時から16時)にご連絡ください。
患者サポートセンターの看護師が相談に応じます。

がん治療と妊娠・出産についての相談 https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/AYA/050/index.html

妊孕性チーム写真

子宮頸がんの放射線治療

放射線治療は、子宮頸がんでは手術と並んでよく行われます。高エネルギーのX線やガンマ線などを照射し、細胞内のDNAを直接傷つけることでがん細胞を死滅させる治療法です。
中央病院では放射線治療科と連携し対応します。

子宮頸がんの放射線治療は、骨盤の外から照射する外部照射と、子宮・腟に器具を挿入してがんに直接照射する腔内照射、さらに、放射線を出す物質をがんや周辺組織に直接挿入して行う組織内照射があります。当院では、根治性の高い内部照射を積極的に行っています。

子宮頸がんでは、病期(ステージ)にかかわらず放射線治療を行います。手術を行った場合、病理診断で再発リスク因子があることがわかったときには、手術後に放射線治療を追加します。手術後の放射線治療では、外部照射のみで治療を行うのが基本ですが、腟への浸潤が高度であった場合には、腔内照射を追加することもあります。また、比較的進行して手術が困難ながんでは、他の臓器や子宮から離れたリンパ節に転移している場合を除き、放射線治療と細胞障害性抗がん剤による治療を同時に行う同時化学放射線治療が検討されます。この治療は、術後の再発リスクが高い人や初回の治療で放射線治療を行わず再発したケースなどにも用いられることがあります。

がんの状態によっては、放射線治療は手術と同程度の効果があるといわれていますが、卵巣の機能がほぼ失われてしまうリスクもあります。一方で、排尿障害や性生活への影響は手術よりも軽いといわれており、年齢や出産希望の有無、全身状態の指標となるパフォーマンスステータス(PS)なども考慮しながら、主治医とよく相談して治療法を選択するようにしましょう。

副作用

放射線治療の副作用として、照射開始後数週間以内に起こる急性反応と、治療数ヵ月から数年たって起こる晩期合併症があります。

  • 急性反応…だるさ、吐き気、下痢などのほか、照射された部位の皮膚炎、粘膜炎、直腸炎、膀胱炎などがあります。これらの症状は、治療終了後、しばらくすると自然に治ってきます。
  • 晩期合併症…消化管や膀胱からの出血が起こる場合があります。また、卵巣の機能が失われることで更年期障害のような症状があらわれる卵巣欠落症状がみられることもあります。

子宮頸がんの薬物療法 

子宮頸がんでは、薬物療法は主に、遠隔転移のある進行したがんや再発した際に行われます。生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)を保ち、できるだけ長く生きられるようにすることが治療の目的です。
細胞障害性抗がん薬や分子標的薬による単独治療のほか、何種類かの薬剤を組み合わせる多剤併用療法も行われます。
腫瘍内科が担当します。

細胞障害性抗がん薬

細胞の増殖するしくみに注目して、そのしくみの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。ただし、がん細胞以外の正常な細胞も影響を受けてしまいます。

子宮頸がんでは、白金製剤(細胞障害性抗がん薬の中でも白金を含むグループの薬)が中心で、単独もしくは白金製剤以外の細胞障害性抗がん薬と併用する治療が行われています。放射線治療の効果を高める目的で白金製剤を用いることもあります。

白金製剤には、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチンなど、白金製剤以外の薬として、パクリタキセル、イリノテカン、ノギテカンなどがあり、白金製剤に他の薬を併用する多剤併用療法がよく行われています。

分子標的薬

がん細胞の増殖にかかわるタンパク質を標的にして、がんを攻撃する薬です。細胞障害性抗がん薬とともに使用されます。

副作用

細胞障害性抗がん薬の主な副作用として、吐き気、嘔吐、脱毛、末梢神経障害(しびれ、感覚低下、痛み)などがあります。現在は、副作用を予防する薬も開発され、吐き気や嘔吐をコントロールできるようになっていますので、つらい症状があれば、我慢せずに主治医に相談してください。

分子標的薬の副作用としては、消化管出血、傷が治りにくい、高血圧、蛋白尿などが報告されています。新しい薬が登場し、これまでの抗がん剤とは異なる副作用なども報告されていますので、気になる症状があれば、迷わず相談しましょう。

中央病院の治療について

中央病院では、II期までは手術を基本治療としています。婦人科腫瘍専門医による根治性の高い手術を実践しています。術後病理診断で再発リスクが高いと判断された場合には、放射線治療を追加します。また、手術を行わない場合には、放射線治療専門医による放射線治療を実施します。放射線治療では組織内照射を積極的に行い、根治性の高い治療を実践しています。転移がみられたり、再発の場合には、薬物療法専門医による抗がん薬治療を主体に、手術や放射線による局所治療も検討します。なお、当院では妊孕性温存を目的とした広汎子宮頸部摘出術は行っていないため、この手術が適応となる方には、実施施設へご紹介しています。治療方針については、担当医とよく相談して決めていくことが重要です。

がんの解説「子宮頸がん」

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参考情報

国立がん研究センターが提供する子宮頸がんに関する情報を紹介します。

監修

国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科 科長 石川光也

石川 光也 (いしかわ みつや)

1996年慶應義塾大学卒業。大学病院での研修の後、国立埼玉病院、東京歯科大学市川総合病院、当院婦人腫瘍科医長などを経て、2023年より現職。

「一生涯にがんになる確率は男性のほうが高いのですが、25歳から55歳までに限定すると、女性のほうががんの罹患率は高くなっています。 中でも、仕事や育児などに忙しい現役世代の女性に多いのが、子宮頸がんです。子宮頸がんは予防できるがんですので、このページで子宮頸がんの事やHPVワクチン、検診での早期発見の大切さについてについて知っていただけたらと思います。」

  • 専門医・認定医資格など:
    日本産科婦人科学会 専門医・指導医
    日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・指導医
    日本臨床細胞学会 細胞診専門医
    日本がん治療認定医機構  がん治療認定医
    日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

担当診療科のご紹介

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