コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > がんの解説 > 子宮頸がん > 子宮頸がんの検査・診断

子宮頸がんの検査を徹底解説子宮頸がんの検査・診断

公開日:2024年12月9日


子宮頸がんは婦人科または産婦人科、婦人腫瘍科などで検査・診断されます。
検査の方法と検査で診断されるステージ(病期)について学んでいきましょう。

子宮頸がん検査は細胞診から実施

検査では、まず子宮頸部の細胞診を行います。細胞診の結果によって、子宮頸がんを発症するリスクが高い種類のHPV(Human Papillomavirus)に感染しているかどうかを調べるハイリスクHPV検査を行うこともあります。(細胞診とハイリスクHPV検査は、1回の細胞採取で行うことも可能です。)⼦宮頸がんの前段階(前がん病変)である異形成や上皮内がんの疑いがある場合には、コルポスコープ(腟拡大鏡)で子宮頸部を観察し、病変部の組織を採取(生検)して、顕微鏡で詳しく調べます(病理組織検査)。子宮頸がんと診断された場合は、子宮周辺の組織へのがんの広がりやリンパ節・他臓器への転移の有無を確認するため、内診や直腸診などの触診、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査を行います。また、膀胱や直腸の様子を内視鏡で確認して、浸潤(がんの広がり)*の有無を調べることもあります。そのほか、診断の補助、治療の効果判定、再発の早期発見のため、血液検査で腫瘍マーカーを調べることがあります。
子宮頸がん細胞診検査のフロー
出典:日本産科婦人科学会及び日本婦人科がん検診学会、対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアルを改変し作成

子宮頸がんの検査方法

細胞診

子宮頸部を小さなブラシでこすって細胞を採取し、色素で染めて顕微鏡で調べる検査です。子宮頸がんだけでなく、がんの前段階である異形成の状態の細胞を発見することもできます。
子宮頸がんのスクリーニング検査として子宮がん検診でも行われている検査です。痛みも少なく、すぐに終了しますが、月経(生理)中は正しく検査できないため、避けるようにしましょう。

ハイリスクHPV検査

細胞診で採取した細胞が、子宮頸がんの原因であるHPVに感染しているかどうかが分かります。
子宮頸がんのスクリーニング検査として子宮がん検診でも行われている検査です。痛みも少なく、すぐに終了しますが、月経(生理)中は正しく検査できないため、避けるようにしましょう。

コルポスコピー(腟拡大鏡診)・組織診

細胞診で異常が見つかった場合、精密検査として、コルポスコープという拡大鏡を用いて、腟や子宮頸部の表面を観察し、正常、異常、浸潤がんなどに分類します。さらに、病変が疑われる部分の組織を採取して、顕微鏡で詳しく調べます。採取する組織は5ミリメートルくらいの大きさですが、必要な場合は、子宮頸部を円錐状に切除して(円錐切除術)、組織診を行うこともあります。
コルポスコピー(腟拡大鏡診)

組織診とはがんの診断でよく行われる病理検査のひとつで、病変の一部の組織片をとって顕微鏡で調べる検査です。生検と同様の意味で使われることが多い検査です。組織診は細胞異型に加え、構造異常の情報も調べられるので、細胞診に比べて診断率が高く、しばしば確定診断となります。

子宮頸がんの検査は痛い?

検査には痛みや出血を伴う場合があります。個人差もあるため、分からないことや不安なことがあれば、検査の前に医師や看護師に相談してください。

子宮頸がん検査

子宮頸がんの検査では、内診台に上がり、腟の奥(子宮頸部)が見えるように座って行うものがあります。恥ずかしく感じるかもしれませんが、検査中はお腹のあたりにカーテンが引かれるなどの配慮がされています。医師や看護師はそばにいて、安心して検査を受けられるよう声かけなどを行いますので、深呼吸したり、足の力を抜くなど、リラックスして検査を受けましょう。不安なことや痛みなどがあれば、我慢せずに伝えてください。

    触診

    これらの検査では、子宮や子宮頸部周辺の組織への浸潤(がんの広がり)の程度を確認します。

    • 内診:片手の指を腟に入れ、もう片方の手は下腹部にあてて、両方の手で挟みながら、子宮の位置や形、かたさなどを調べます。
    • 直腸診:肛門から指を挿し入れて、直腸やその周辺に異常がないか調べます。
    • 子宮頸がん 内診

      内診

    • 6.png

      直腸診

    画像診断

    画像を見てがんの広がりや子宮頸部の状態を確認する検査です。
    中央病院では婦人腫瘍科、放射線診断科、泌尿器・後腹膜腫瘍科、内視鏡科などが担当します。

    • 超音波(エコー)検査:腟の中から超音波をあてて、子宮や卵巣の状態を観察したり、がんの広がりを確認します。X線を用いないので、放射線被ばくの心配はありません。
    • CT検査:X線を照射し、体を輪切りにした状態で、体の内部の様子を画像で確認します。がんの広がり、リンパ節やほかの臓器への転移がないか調べるために行います。より詳しく調べるために造影剤が用いられることがあります。
    • MRI検査:体に強い電磁波をあて、体内の状態を鮮明に画像化し、子宮と周辺の状態観察を行います。より詳しく調べるために造影剤が用いられることがあります。
    • PET検査:ブドウ糖ががんに集まる性質を利用し、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)という薬剤を用いて、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を確認することで、がんの位置や広がりを調べる検査です。超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査で診断が難しい場合転移の有無などを調べるために用います。がんの再発や治療効果の確認などにも使用されます。
    • 内視鏡検査(膀胱鏡検査・直腸鏡検査):膀胱や直腸にまでがんが広がっていないかを調べる検査です。膀胱鏡検査では、尿道から内視鏡を挿入して、膀胱の中を調べます。直腸鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入して、直腸の中にがんが広がっていないか確認します。膀胱鏡検査は泌尿器・後腹膜腫瘍科で、直腸鏡検査は内視鏡科で実施します。

    病型とステージ(病期)

    病型とステージ(病期)よる分類があります。

    病型による分類

    がん組織の細胞のタイプの分類としては、「扁平(へんぺい)上皮がん」と「腺がん」があります。以前は扁平上皮がんが大多数を占めていましたが、最近は腺がんの割合も増加しており、扁平上皮がんが全体の約70%、腺がんが約20%を占めています。扁平上皮がんも腺がんも、前がん病変といわれるがんになる前の状態が存在し、この段階から治療が必要になります。


    子宮頸がん「扁平(へんぺい)上皮がん」と「腺がん」

    前がん病変

    扁平上皮がんでは、がんになる前にCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)という状態が存在し、CIN1、CIN2、CIN3と進行します。CIN3には、以前は「上皮内がん(CIS)」と分類されていた病変も含まれており、治療が必要な扁平上皮がんの前がん病変としています。前がん病変を経て、微小浸潤がん、浸潤がんへと段階的に進展していきます。腺がんでは、上皮内腺がんを前がん病変としています。CIN1、CIN2の場合、すぐに治療を必要としませんが、 引き続き定期的に検査を行って進行していないか確かめます。

    子宮頸がんの前がん病変の進行

    ステージ(病期)分類

    子宮頸がんと診断されたら、がんの種類や進行の程度からステージ(病期)を決定し、治療法を選択します。子宮頸がんのステージ(病期)は、I期からIV期(IA1期、IA2期、IB1期、IB2期、IB3期、IIA1期、IIA2期、IIB期、IIIA期、IIIB期、IIIC期、IVA期、IVB期)に分けられます。

    I期 がんが子宮頸部にとどまるもの(子宮体部浸潤の有無は考慮しない)
     IA期  病理学的にのみ診断できる浸潤がんのうち、間質浸潤が5mm以下のもの*1
      IA1期   間質浸潤の深さが3mm以下のもの
      IA2期   間質浸潤の深さが3mmをこえるが、5mm以下のもの
     IB期  子宮頸部にとどまる浸潤がんのうち、浸潤の深さが5mmをこえるもの(IA期をこえるもの)
      IB1期   腫瘍最大径が2cm以下のもの
      IB2期   腫瘍最大径が2cmをこえるが、4cm以下のもの
      IB3期   腫瘍最大径が4cmをこえるもの
    *1浸潤がみられる部位の表層上皮の基底膜より計測して5mm以下のものとする。脈管(静脈またはリンパ管)への浸潤があっても進行期は変更しない。
    II期 がんが子宮頸部を越えて広がっているが、腟壁3分の1または骨盤壁には達していないもの
     IIA期  腟壁浸潤が腟壁上3分の2にとどまっていて、子宮傍組織浸潤は認められないもの
      IIA1期   腫瘍最大径が4cm以下のもの
      IIA2期   腫瘍最大径が4cmをこえるもの
     IIB期  子宮傍組織浸潤が認められないが、骨盤壁までは達しないもの
    III期 がんの浸潤が腟壁下3分の1まで達するもの、ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの、ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの、ならびに/あるいは骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
     IIIA期  がんは腟壁下3分の1に達するが、骨盤壁までは達していないもの
     IIIB期  子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの(がん浸潤以外の原因による場合を除く)
     IIIC期  骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
      IIIC1期   骨盤リンパ節にのみ転移が認められるもの
      IIIC2期   傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
    IV期 がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔をこえて広がるもの
     IVA期  膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの
     IVB期  小骨盤腔をこえて広がるもの

    出典:日本産科婦人科学会,日本病理学会編.子宮頸癌取扱い規約 病理編 第5版.p16-17.2022年,金原出版.より改変

    がんの解説「子宮頸がん」

    • HPV.png
    • C1.png
    • 検査
    • 治療バナー

    参考情報

    国立がん研究センターが提供する子宮頸がんに関する情報を紹介します。

    監修

    国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科 科長 石川光也

    石川 光也 (いしかわ みつや)

    1996年慶應義塾大学卒業。大学病院での研修の後、国立埼玉病院、東京歯科大学市川総合病院、当院婦人腫瘍科医長などを経て、2023年より現職。

    「一生涯にがんになる確率は男性のほうが高いのですが、25歳から55歳までに限定すると、女性のほうががんの罹患率は高くなっています。 中でも、仕事や育児などに忙しい現役世代の女性に多いのが、子宮頸がんです。子宮頸がんは予防できるがんですので、このページで子宮頸がんの事やHPVワクチン、検診での早期発見の大切さについてについて知っていただけたらと思います。」

    • 専門医・認定医資格など:
      日本産科婦人科学会 専門医・指導医
      日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・指導医
      日本臨床細胞学会 細胞診専門医
      日本がん治療認定医機構  がん治療認定医
      日本遺伝性腫瘍学会 遺伝性腫瘍専門医

    担当診療科のご紹介

     

    ページの先頭へ