子宮頸がんになったら妊娠は?どんな副作用があるの?子宮頸がんとうまく付き合うためには子宮頸がんの療養について
公開日:2025年1月14日
目次
子宮頸がん治療後の検査について
子宮頸がんの治療後は、再発や転移していないか調べたり、術後の合併症や後遺症がないか確認するため、定期的に通院して検査を受けます。検査の頻度は、がんの進行度や治療法によって異なります。標準的な経過観察の間隔として、治療終了から1~2年目は3~6カ月ごと、その後5年目までは6~12カ月ごとに検査を受けることが勧められています。
再発の多くは骨盤内で起こるため、経過観察では、腟鏡診、内診・直腸診などの検査を行います。これらの検査で再発が疑われた人や、術後の病理検査で再発リスクが高いと判断された人には、精密検査として、CT検査やPET検査、MRI検査、超音波(エコー)検査などの画像診断、腫瘍マーカー検査や細胞診などを行う場合もあります。
再発時によくみられる症状として、腰から背中にかけての痛み、下肢の痛みやむくみ、不正出血やおりものの増加などがあります。こうした症状があれば、定期的な検査で受診するタイミングでなくても、早めに受診するようにしてください。
初期のがんや前がん病変などで、妊孕性を考慮して、子宮頸部の一部だけを切除する円錐切除術を受けた場合、残した子宮にがんが再発する可能性もあります。定期的に細胞診などの検査を受け、再発がなければ、妊娠が許可されますが、円錐切除術後の妊娠では早産が起こりやすいといわれており、妊婦健診などをきちんと受けることが重要です。
どんなことに気を付けて生活すればよい?
治療後は、規則正しい生活を送りながら、体力の回復に努めることになります。焦らず、無理のない範囲で、少しずつ日常生活に体を慣らしていきましょう。どのがんの患者さんにも共通することですが、禁煙や節度を守った飲酒、栄養バランスのよい食事、適度な運動を心がけることが大切です。
副作用
手術後によくみられる合併症として、リンパ浮腫、排尿障害、便秘などがあります。また、閉経前に両方の卵巣を切除したり、放射線治療によって卵巣の機能が失われたりすると、女性ホルモンが減少して更年期のような症状(卵巣欠落症状)があらわれることもあります。
なかでも、リンパ浮腫は手術直後に起こることもあれば、術後十年以上経ってから発症するケースもあるため、生涯にわたって注意しなければなりません。
また、放射線治療の後、数カ月から数年経って、消化管や尿路、腟などに影響が出る場合もありますので、少しでも変わった症状があれば、早めに担当医に相談してください。
中央病院看護部ではがん治療の中の生活の工夫として副作用の対応をカードにまとめています。ご活用ください。
リンパ浮腫
リンパ浮腫は、手術でリンパ節を切除(リンパ節郭清)した場合や放射線治療、一部の薬物療法などによって起こることがあります。リンパ液は手足の先から胸部へ向かって流れていますが、リンパ液の通り道であるリンパ管やリンパ節を切除したことで、リンパ液の通り道が少なくなり、足や下腹部がむくみやすくなります。体重増加のほか、リンパ液の流れが悪くなった場所に虫刺されなどの感染が生じたりすると、それが引き金となってリンパ浮腫を発症することもあります。
術後すぐになる人もいれば、10年以上してから発症する人もいるなど、リンパ浮腫の原因や発症時期については分からないことも多く、確実な予防法がありません。しかし、スキンケアや体重管理を継続して行うことで、予防に効果があるといわれています。適度に体を動かしたり、リンパ液の流れを促すセルフマッサージやスキンケアの方法を身に着け、実践したりすることが大切です。
中央病院看護部ではみんなで学ぼう!やってみよう!がん患者さんのための「リンパ浮腫」セルフケア動画としてリンパ浮腫の基礎知識やドレナージ方法を分かりやすくまとめています。3本の動画でもご紹介していますのでご覧ください。
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リンパ浮腫の基礎知識
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リンパドレナージ 上肢編
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リンパドレナージ 下肢編
また中央病院看護部ではリンパ浮腫についての基礎知識として基礎知識や最も注意すべきリンパ浮腫の合併症蜂窩織炎(ほうかしきえん)についても解説しています。ぜひご覧ください。
排尿障害
子宮頸部の周囲にある組織のひとつである基靭帯の中には、排尿に関係する神経が走っています。そのため、基靭帯も広く切除する広汎子宮全摘出術(右図)を行った場合は、排尿障害が起こりやすくなります。症状としては、尿がたまった感じが分かりにくい、尿が出しにくい、尿が出し切れない、尿が漏れるなどがありますが、手術後しばらくすると改善がみられることもあります。ただ、手術前と同じ状態まで回復することは難しいため、尿をためすぎず、一定間隔で排尿するようにする、おなかを押したりして無理やり尿を出そうとしない、などの注意が必要です。
便秘
排尿障害と同じく、広汎子宮全摘出術を受けた場合に起こりやすくなります。頻度は排尿トラブルよりも少なく、短期間で回復しますが、食事の調整や下剤の服用などの対応が必要になる場合もあります。
卵巣欠落症状
閉経前に卵巣を切除する手術を受けたり、放射線治療によって卵巣の機能が失われたりすると、女性ホルモンが減少して、更年期障害と似たような症状(ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸、不眠、腟からの分泌液の減少、骨粗鬆症、脂質異常症など)が起こる場合があります。症状の種類や強さ、発症期間は人によってさまざまですが、年齢が若いと症状がより強くなるといわれています。対処法としては、お風呂や運動で体を温めて血行をよくしたり、十分な睡眠や休養をとって、心身ともにリラックスすることも大切です。症状がつらいときは、ホルモン療法薬や漢方薬などの薬で症状が軽減できることもありますので、我慢せず、担当医に相談してください。
放射線治療の晩期合併症
放射線治療に伴う副作用には、治療中から治療後数カ月以内に起こる急性期合併症と、治療後数カ月から数年たって起こる晩期合併症があります。晩期合併症には、直腸からの出血や穿孔(穴が開くこと)、小腸閉塞のほか、直腸腟ろう(直腸と腟がつながって、腟からガスや便がもれる症状)などがあります。また、尿路障害も起こりやすく、出血、感染、膀胱尿管腟瘻ろう(膀胱や尿管と腟がつながって、腟から尿がもれる症状)などが起こることもあります。その他、腟が狭くなったり、腟粘膜の癒着がみられることもあります。
性生活について
性生活が、がんの進行に悪影響を与えることはありません。しかし、選択した治療法、治療の期間、年齢などによって、その後の性生活に影響が出る場合もあります。
手術後、特に子宮を摘出したり腟の一部を切除した場合は、性交渉中に出血しやすくなり、感染のリスクが高まります。また、閉経後に卵巣を摘出した場合などは、腟の潤いが低下して、性交渉中に痛みを感じることもあります。手術後に性交渉を再開するタイミングは、担当医と相談するようにしましょう。
放射線治療後は、女性ホルモンの分泌が低下して、腟の粘膜が乾燥したり、弾力が低下したりして、炎症を起こしやすくなります。性交渉が難しくなったり、性交渉時の不快感や痛みが強くなることもあるため、違和感があれば我慢せず、パートナーに伝えるようにしましょう。
抗がん剤による薬物療法を受けている場合は、出血しやすく感染症にかかりやすい状態になっています。白血球や血小板が少ない時期は、そのリスクがさらに高まりますので、性交渉は避けるようにしましょう。また、薬物療法中や後は、腟の分泌物に薬の成分が含まれることもあるため、パートナーが影響を受けないよう、コンドームを使うなどの対応が必要となることもあります。
相談窓口について
がんやがんの治療は、性機能そのものや性に関わる気持ちに影響を与えることがあります。
がんやがんの治療による性生活への影響や相談先などに関する情報は、以下の窓口で聞くことができます。
国立がん研究センター中央病院の患者さん
患者サポートセンター(病院8階)にお尋ねください。
当院以外の患者さん
- がん相談支援センターのがん相談専用電話03-3547-5293(平日10時から16時)にご連絡ください。
またはがん情報サービスの「がんやがんの治療による性生活への影響」をご覧ください。
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/sexual_health_issues/sexual_health_issues_03.html〇
がんってうつるの?パートナーが心配です。
がんそのものは性交渉でうつることはありませんが、HPVは異性間、同性間を問わず性交渉によって感染します。HPV感染は、子宮頸がんのほか、外陰がん、中咽頭がん、肛門がんなどの危険因子にもなりますが、多くの場合は、感染しても免疫によって排除されます。
性の悩みについて解決が難しい場合は…
恋人や家族、夫婦関係のことなど、女性としてのつらい気持ちや悩み、心配ごとが重なることは少なくありません。自分はどうしたいのか、現在の気持ちを落ち着いて整理してみる、担当医や看護師などの医療者に不安を相談する、自分と似た経験をした人の話を患者会などで聞くといったことが役に立つかもしれません。
また、性生活においては、パートナーの理解が不可欠です。一人で無理をしたり、我慢したりせず、心配なこと、つらい気持ち、できることとできないことをパートナーとよく話し合い、理解してもらうこと、配慮を求めることも大切です。パートナーとのコミュニケーションを大切に、手をつないだり、抱きしめたり、キスをしたり、添い寝をするなどのスキンシップをとったり、お互いの気持ちを素直に話 し合うこともたいせつな愛情表現です。 いきなり性交を試みるのではなく、パートナーと相談しながら新しい性生活の形を見つけていきましょう。
治療後、前向きな気持ちになれない日々が続くのはごく自然なことです。あまり否定的になりすぎず、率直な気持ちをパートナーや家族、担当医に伝えるようにしましょう。
中央病院看護部ではがん治療の中の生活の工夫として「治療中の性生活について」の対応をカードにまとめています。ご活用ください。
妊娠は可能ですか?
子宮頸がんになっても、早期発見できれば、妊娠・出産をすることは可能です。しかし、子宮頸がんの治療は、妊娠や出産に少なからず影響を及ぼします。そのため、将来、妊娠の希望があれば、治療前に担当医とよく話し合ったうえで、治療法を選択する必要があります。
がんになる手前の状態である前がん病変や初期の子宮頸がんであれば、子宮の一部を切除することで治療ができるため、妊娠や出産は可能となります。これは、妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合でも同じです。しかし、ステージ1B2期以降のある程度進行した子宮頸がんでは、手術で子宮を摘出したり、放射線治療の影響で、妊娠や出産は難しくなります。 また、たとえ手術で子宮を温存できたとしても、子宮の入り口が狭くなって、妊娠しにくくなることもあります。 子宮全摘出術が適応となる場合、将来妊娠したいという希望がある患者さんには、子宮頸部とその周辺を広範囲に切除し、子宮体部と卵巣は温存する手術(広汎子宮頸部摘出術)を選択する場合があります。
しかし、当センターは、根治を目的とした手術を基本としているため、妊孕性温存のための広汎子宮頸部摘出術は行っていません。治療方針は、妊娠の希望や術後の再発・転移などのリスクを考慮したうえで、慎重に決定する必要がありますので、担当医とよく相談してください。
生殖機能(妊孕性)温存支援
中央病院では治療を受けられる患者さんの妊孕性温存に関するご相談に対し、ご希望に沿って円滑に生殖医療専門機関へ受診できるようなお手伝いをしています。
相談方法 相談をご希望の方は、がん相談支援センターのがん相談専用電話03-3547-5293(平日10時から16時)にご連絡ください。 患者サポートセンターの看護師が相談に応じます。
がん治療と妊娠・出産についての相談
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/AYA/050/index.html
中央病院看護部ではがん治療の中の生活の工夫として「子どもをもつこと」の対応をカードにまとめています。ご活用ください。