トップページ > 研究組織一覧 > 分野・独立ユニットグループ > 希少がん研究分野 > 多次元液体クロマトグラフィーと電気泳動を用いた肺がん患者血清のプロテオーム解析
多次元液体クロマトグラフィーと電気泳動を用いた肺がん患者血清のプロテオーム解析
岡野 哲也、近藤 格、藤井 清永、西村 俊秀、弦間 昭彦、工藤 翔二、広橋 説
抄録
目的
肺がんにおける血清腫瘍マーカー候補タンパク質を同定すること。
方法
多次元液体クロマトグラフィーと二次元電気泳動法を用い、健常者4症例と肺がん患者5症例の血清タンパク質を比較した。初めにアルブミンなど比較的量の多い6種類の血清タンパク質をアフィニティーカラムで除去し、さらにイオン交換カラムを用いて血清タンパク質を電荷に従って分画した。分画したタンパク質は健常者と肺がん患者とで異なる蛍光色素で標識し、標識したタンパク質サンプルを混合したあと一枚の二次元電気泳動ゲルで分離した。肺がんで発現異常を認めたタンパク質の構造解析は質量分析を用いて行った。
結果
健常者と肺がん患者間で2倍以上の発現差(p<0.05)を認める血清タンパク質スポットは合計364個あった。スポットに対応するのは57種類のタンパク質だった。アイソフォームごとに異なる挙動を示す血清タンパク質は12種類、分画を取ることではじめて発現差が検出されたタンパク質は49種類、一つの分画にしか発現差がないものが22種類あった。いくつかのタンパク質については特異抗体を用いて発現異常を確認した。同定されたタンパク質の中には、従来は血清では報告のなかった細胞内タンパク質も含まれていた。
総括
肺がんで異常を来している血清タンパク質の異常を検出した。同定したタンパク質は肺がんの新規腫瘍マーカー候補であると同時に、肺がんの病態の理解にも役立つと考えられる。
関連論文
- Tetsuya Okano, Tadashi Kondo, Tatsuhiko Kakisaka, Kiyonaga Fujii, Masayo Yamada, Harubumi Kato, Toshihide Nishimura, Akihiko Gemma, Shoji Kudoh and Setsuo Hirohashi. Plasma proteomics of lung cancer by a linkage of multi-dimensional liquid chromatography and two-dimensional difference gel electrophoresis. Proteomics, 6, 3938-3948, 2006. [PubMed](外部リンク)