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頭頸部再建について
概説
頭頸(とうけい)部は食事、会話、呼吸といった生活に重要な組織があります。そのため、切除によって大きな欠損を生じた場合、そのままでは食事、会話、呼吸に重大な障害がもたらされるため、欠損部を修復する必要があります。この欠損部に体の他の部分から皮膚、皮下組織、筋肉、骨などを移植して修復することを再建といいます。移植には顕微鏡を使用して血管吻合を行う、マイクロサージャリ―の技術を用います。
対象疾患
- 口腔がん(舌がん)
- 上顎洞(じょうがくどう)がん
- 中咽頭がん
- 下咽頭がん
- 喉頭(こうとう)がん
- 頸部食道がん
部位別再建方法
舌がん切除後の再建
舌が半分以上切除された場合、腹部や大腿部から組織の移植を行い、舌の形を再建します。切除する範囲や個々の体形などに応じて適切な組織を選択します。移植した組織には動きや感覚がないため食事や会話のためにリハビリを行います。
下咽頭がん・頸部食道がん切除後の再建
下咽頭や頸部食道が切除された場合、空腸の移植を行い、食物の通り道を再建します。再建に使用する空腸は20~30cmで、小腸の長さは6~7mあるので採取することによる影響は限定的です。下咽頭部分切除の場合、空腸をパッチ状に加工して移植します。下咽頭喉頭部分切除の場合、前腕皮弁を移植することもあります。また、喉頭温存頸部食道(こうとうおんぞんけいぶしょくどう)切除の場合も遊離空腸移植(ゆうりくうちょういしょく)で対応しています。
下歯肉(かしにく)がん切除後の再建
下顎を切除された場合、自家骨を移植したり金属プレートを用いたりして、下顎の形や機能の再建を行います。主に腓骨皮弁(ひこつひべん)、再建プレート、腹直筋皮弁(ふくちょくきんひべん)による再建を行っており、切除範囲や残った歯、年齢、身体状況などを考慮して適切な再建方法を選択します。
中咽頭がん切除後の再建
通常、病変はPull-through法(プル・スルー法/口腔内のがんと頸部のリンパ組織を一塊として切除することで、下顎骨を切断しなくてすむ方法)で切除され、前外側大腿皮弁(ぜんがいそくだいたいひべん)で再建しています。工夫の一つとして、中咽頭側壁に皮弁を縦に配置して、舌根(ぜっこん)が付着する範囲を脱上皮して縫合する「脱上皮法」を用いて良好な成績を得ています。
参考文献:櫻庭 実ほか、 耳鼻と臨床 (0447-7227)61巻Suppl.1 Page S48-S54,S58-S60(2015.11)
上顎洞(じょうがくどう)がん切除後の再建
上顎骨が切除された場合、腹直筋皮弁や肩甲骨皮弁、腓骨皮弁などで再建しています。
頬粘膜(きょうねんまく)がん切除後の再建
頬粘膜がんは口腔がんに含まれます。主に前外側大腿皮弁で再建しています。
耳下腺(じかせん)がん切除後などの神経再建
マイクロサージャリ―の技術を用いて、顕微鏡下に神経の移植を行い、神経の再生を促します。
その他
口唇、鼻、顔面皮膚、鼻の再建を行います。
各種移植組織
遊離空腸(ゆうりくうちょう)
管状の構造を利用して咽頭・食道など食べ物の通り道を再建します。空腸の採取は上腹部の短い切開から行います。使用する小腸は20~30cmで、小腸の長さは6~7mあるので採取することによる影響は限定的です。
腹直筋皮弁(ふくちょくきんひべん)
“腹筋”に皮膚と脂肪を付けて採取します。豊富なボリュームの組織が採取できるため、広範囲の舌再建や上顎再建、下顎の軟性再建などに用います。腹筋の筋力低下、脱腸などが起こる可能性がゼロではありませんが、日常生活に支障がでることは稀です。
前外側大腿皮弁(ぜんがいそくだいたいひべん)
比較的薄い組織が採取できるため、舌再建や中咽頭再建などに用います。手術後、通常2日目から歩行が可能です。採取によって日常生活に支障がでることは稀です。
腓骨皮弁(ひこつひべん)
すねにある2本の骨のうち細い方の1本を採取し、下顎再建などに用います。足の病気がある方や足腰が弱っている高齢者には不向きです。それ以外の方では歩行など日常生活に支障がでるほどのことは稀です。自分の骨を使うことで残った骨と癒合し、他の方法よりしっかりとした強度の再建が行えます。皮膚を大きくとる場合には採取した部位に別の部位から皮膚移植が必要になることがあります。