トップページ > 診療科・共通部門 > 外科系 > 形成外科 > 各種治療 > リンパ浮腫の外科的治療について
リンパ浮腫の外科的治療について
リンパ浮腫(ふしゅ)とは
体内の流れには、動脈、静脈の他にリンパ管という管があります。リンパ管内にはリンパ液が流れ、体液の灌流を担っています。何らかの理由でリンパ液の流れが滞ると、むくみが生じてきます。この状態を、「リンパ浮腫」といいます。一度発症すると、難治性で徐々に進行してゆきます。原因は2つに分けられます。
- 生まれつきリンパ管の形成不全や機能障害がある場合。
- 手術や外傷の後遺症。最も多いものは子宮がんや乳がん、前立腺がんの手術の際、リンパ節郭清を行った場合です。残されたリンパ管が頑張ってリンパ液を身体の中心に運びますが、限界に達すると感染などを契機として、急に下肢や上肢が腫れてしまいます。
治療方法
保存的治療
従来の方法です。浮腫部分の圧迫や、リンパドレナージ、スキンケアを行います。
効果:浮腫を軽減したり、悪化を防ぐ、進行のペースを抑えることができます。リンパ管の流れは障害されたままなので、完治させることは困難です。
外科的治療
貯まったリンパ液を下肢、上肢のところで静脈に流すためのバイパスを作ります。新たなリンパ管の流れを作る手術です。
リンパ管静脈吻合術
治療概要
全身のリンパ液は最終的には心臓の近くの太い静脈に流れ込みます。しかし、リンパ浮腫の状態ではリンパ路が途中で閉塞しているため、リンパ液が皮下組織に貯まってしまいます。
そこで閉塞部分(足の付け根、脇)より先(下肢や上肢)でリンパ管と静脈のバイパスをつくり、貯まったリンパ液を静脈に流します。
手術方法
局所麻酔で手術を行います。顕微鏡を覗きながら足や腕に数カ所1~3cmの小さな切開を入れて、皮膚直下の脂肪組織の中のリンパ管とそれとつなぐ静脈を探します。リンパ管は非常に細く0.5mmくらいです。
0.05mmの針付き糸を使ってそのリンパ管と静脈をつなぎます。下肢の場合は、約2~3割の方が反体側も腫れてくるため、まだリンパ管の機能が残っているうちに「予防的に」リンパ管―静脈のバイパスをつくる目的で反対側にも同時に行います。 手術は4時間程度です。
入院期間は、足の場合は1週間、腕の場合は3日間です。
効果
手術後は今のむくみを劇的に改善することはありません。この手術はバイパス(新たなリンパ路)を作るもので、リンパ管を再生させるものではありません。
そのため、術後もストッキングやマッサージなどを使ってリンパ管を収縮させる手助けをしなくてはなりません。
手術後は全員に術前と同じように圧迫療法をして頂きます。毎日必ず圧迫することが必要になります。圧迫をしないと手術の効果は期待できません。術前にしっかり圧迫療法ができた方に対してこの手術を行っています。このようにすることで、リンパ浮腫が完治する方もおります。 しかし、術後バイパス効果が認められず、浮腫が進行する場合もあります。
その他
この手術は皮下組織に貯まったリンパ液を静脈に流すためのバイパス「路」をつくるものです。「路」の本数が多ければ多いほど効果は期待できますが、時間やリンパ管と静脈の状態により、一回の手術でのバイパスの数には限界があります。よって、今後、経過をみながら、手術を追加する可能性があります。
注意点
予定した結果が必ず得られるとは限りません。効果がない可能性もあることについて十分納得していただく必要があります
手術費用について
この手術は保険適応です。
リンパ節・リンパ管移植
概要
リンパ浮腫は時間とともに悪化してゆきます。蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの感染を繰り返すと、より進行してゆきます。重症なリンパ浮腫ではリンパ管の機能がほぼ消失します。この場合、上記リンパ管静脈吻合術を行っても流れがないため、効果は期待できません。
そのため、障害のない健康なリンパ節やリンパ管を移植することで、リンパ管の機能回復を図ります。
手術方法
リンパ節、リンパ管を採取し移植します。下肢リンパ浮腫の場合は腋窩(えきか)から鼠径部(そけいぶ)に、上肢リンパ浮腫の場合は鼠径や足から腋窩に移植を行います。リンパ節の採取の際は、事前にリンパ流の検査を行い、健常部分のリンパ流にダメージを与えないように配慮します。
手術は全身麻酔で行います。乳癌術後の方は、乳房再建と共に行うことも可能です。
注意点
予定した結果が必ず得られるとは限りません。効果がない可能性もあることについて十分納得していただく必要があります。
現在、リンパ浮腫の外科治療については当センターに通院中の方、または当センターでの治療歴のある方のみの受付となっております。ご了承ください。