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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第9回 鶴岡連携研究拠点における第2期目の取り組みについて
2021年12月25日
国立がん研究センター先端医療開発センター センター長 落合 淳志
国立がん研究センターは2016年から鶴岡サイエンスパーク内に2チーム(牧野嶋チーム、横山チーム)の連携研究室を作り、ヒトがん組織をメタボローム解析(がん組織で代謝された物質をすべて解析すること)し、がんに特徴的な代謝変化の検出やがん診断や治療研究のため、約3000症例の人のがん組織の代謝解析を行ってきました。
▼国立がん研究センター鶴岡連携研究拠点で第2期プロジェクトを推進する2グループ
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横山グループ
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牧野嶋グループ
がん患者さんは、栄養を摂っていても最後にはどんどん痩せていくことが特徴ですが、今回の検討では、体重が痩せる数か月前から体の代謝が既に変化していることが分かりました。この結果は体の代謝状態を指標にした新しい治療法を考えることが可能になりそうです。
年をとって筋力が低下し動けなくなる場合(フレイルと呼ばれる)においても筋肉量が減少する前に代謝変化が起こっていると思われます。筋肉が萎縮し体が動かなくなる前に代謝変化をとらえ、治療や運動を行うことができればフレイル予防ができる可能性が出てきます。
これら第1期の研究を基盤に第2期ではこれまでのがん代謝研究を推進することに加え、新たに医療・保健問題においてがん患者個人の価値と疾病予防、フレイル介護予防、がん晩期障害予防プログラムを開発し検証することを目的に次世代の研究のための可能性を求めた以下の研究を予定しています。
1)進行がん患者の症状予防と緩和&終末期の喪失に関する予防。
2)高齢者のフレイル予防として、個人の代謝変化と、生活基盤である食事、運動量、会話量など生活様式をスマートフォンなどのデバイスを用い比較する。
3)食・運動・個人の活動の継続を目的とした自治活動報酬による健康増進とがん予防(社会実装化を目指す) です。
これらの研究には、研究者だけでなく、荘内病院・行政・保健所と何よりも一般の市民の方々の研究への協力と参画が必要です。
がんの状態を研究し明らかになったこと(基礎研究)をもとに、実際の保健行政を通して市民の皆さんの健康維持に役立てることを実装化研究と呼んでいます。第2期プロジェクトで行いたい、基礎研究成果を保険医療として鶴岡の皆さんにお返しする社会実装化研究が達成できれば、新しい社会実装の鶴岡モデルとして成果を日本国内に広げ、その次のステップとして全国の人たちが安心して生活が出来る社会を作れると思います。
最後に、第1期に引き続き第2期においても鶴岡の世界に誇る加茂水族館におけるクラゲを用いた研究を進めています。これまでの検討の一部は、加茂水族館において既にパネルとして市民の皆様にわかるように示してきました。
残念ですが、クラゲ研究の詳細とがん研究とのかかわりについては紙面の都合上今回は書ききれません。可能ならば、別な機会に皆様にお伝えしたいと思います。乞うご期待。
鶴岡市加茂水族館におけるミズクラゲの研究
執筆者
- 落合淳志(おちあい・あつし)
- 広島県生まれ、広島大学医学部卒。1991年より国立がんセンター病理部研究員・室長・部長を経て、2015年研究所副所長、2016年から国立がん研究センター鶴岡連携拠点の総括責任者。2017年から現職。2002年より東京大学大学院新領域研究分野がん先端生命分野客員教授、2014年より慶応大学医学系研究科大学院客員教授