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診療について
数多い皮膚がんの中でも代表的なものについて私たちが行っている診療内容を示します。
悪性黒色腫
皮膚がんの中でも悪性黒色腫(メラノーマ、または「ほくろのがん」などとも呼ばれます)は最も代表的なもので、非常に悪性度の高い腫瘍として恐れられています。悪性黒色腫は皮膚のメラニン細胞(メラノサイト)や母斑細胞(ほくろ細胞)から発生し、早い時期から転移する力を持っていますので、完全に治すには早期に発見し、初回治療として適切な手術を行うことが最も重要です。当科のスタッフは、高度な手術技術を備えており、患者さんに適切な外科治療が可能です。また近年、悪性黒色腫の薬物治療は急速に進歩しています。日本では、2014年に世界に先駆けて免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが承認されて以降、複数の新しい薬剤による治療ができるようになり、進行した患者さんでも、がんの進行を抑えることや、治癒を目指せるようになりつつあります。私たちは悪性黒色腫の薬物療法においても多くの治療経験をもっています。悪性黒色腫は非常に悪性度が高く手強いがんですが、当科では豊富な経験と科学的根拠に基づき、個々の患者さんにとってより良い治療を提供いたします。
有棘細胞がん
誘因や発生母地がいくつも知られている皮膚がんです。古くは広い範囲のやけどのあとから発生するものや放射線照射後の慢性皮膚炎から発生するものが多かったのですが、近年は紫外線の影響を受けた頭皮、顔面の皮膚に発生するものが増えています。これらの部位に治りにくいびらんや潰瘍、紅色の結節で出血しやすいもの、硬い結節などが出現した場合、有棘細胞がんを疑います。皮膚表面にできますので気が付きやすく、早めに専門医を受診して診断がつけば90%は手術だけで治癒が期待できます。ただし、がんが再発、転移して広がっている場合は、手術のほか、抗がん剤や放射線治療など組み合わせた治療となります。
基底細胞がん
基底細胞がんは、日本人の皮膚がんにおいて最も多いがんで、表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞から発生するがんです。多くは高齢者に発生し、7割以上が顔面、特に顔の中心寄り(鼻やまぶたなど)に発生します。基底細胞がんは、放置すると局所で周囲の組織を破壊しながら進行することがありますが、転移をすることは非常にまれです。
基底細胞がんの治療は、手術による外科的切除が第一選択となります。初回の手術で病変が完全に切除できれば、根治する可能性は非常に高くなります。顔面にできることが多いがんのため、手術を行う場合には整容面も考慮し、できるだけ顔面の変形を最小限にとどめるための切除と再建術の工夫を行っています。
乳房外パジェット病
乳房外パジェット病は、高齢者の陰部や肛門周囲に発生することが多い皮膚がんです。最初はその見た目から湿疹や真菌症間違えられ、塗り薬を塗っても軽快しないとのことで紹介されることもあります。比較的進行は緩徐なことが多く、前がん状態でみつかるとよいのですが、病状が進行するとリンパの流れに乗って転移を来します。国際的にみても、病気の時期を判断するための病期分類(ステージ)さえつくられておらず、専門病院以外では対応の難しい疾患です。また、陰部や肛門周囲に好発するため、手術が難しく、また手術により排尿機能や、肛門の機能が損なわれる可能性があります。当科ではできるだけそのような機能を温存することを考えた手術を行っています。
血管肉腫
血管肉腫は非常に発生数の少ない腫瘍ですが、その悪性度は悪性黒色腫をしのぐほどです。高齢の方の頭皮や顔面に、外傷をきっかけにできることが多いほか、乳がん、子宮がんなどの手術後の腕や足のむくみが続く部位や、がん治療のために行った放射線照射部位の皮膚にできることがあります。赤紫色の内出血やあざのようにみえるものから始まりますが、正確な範囲がわかりにくく、手術だけで治すことは非常に困難です。そのため血管肉腫に対する治療は、通常、手術だけではなく、放射線治療や抗がん剤治療などを組み合わせた治療となります。専門知識に基づいて適切な時期に必要な治療を上手に組み合わせて行う治療が必要となります。