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再発・転移唾液腺がん
再発・転移唾液腺がんの治療方針は、組織型にて腺様嚢胞がん(ACC)か腺様嚢胞がん以外(non-ACC)で大きく異なります(図14)。
ACCは基本的に急速増大、症状がなければ経過観察が推奨されています。急速増大、症状があれば、殺細胞性抗がん薬が実施されますが、確立したものはありません。遺伝子パネル検査を実施しても、治療の標的となる遺伝子異常の頻度は高くありません。
Non-ACCに関しては実臨床でアンドロゲン受容体(AR)、HER2の免疫染色が実施し、
HER2陽性であれば、ドセタキセル+トラスツズマブ併用療法が使用可能です。
AR陽性の場合、ホルモン療法の医師主導治験を実施していましたが、患者登録は終了しました。
遺伝子パネル検査にてNTRK融合遺伝子陽性の場合は、TRK阻害薬であるラロトレクチニブまたはエヌトレクチニブが使用可能です。頻度は非常に低いですが、MSI high/TMB highが認められた場合はペムブロリズマブが使用可能です。
当院での治療
組織型がACCであり、急速増大、症状がなければ、定期的な画像撮影をしながら経過観察をします。組織型がnon-ACCの場合は、腫瘍検体のAR, HER2の有無を確認し、さらにNTRK融合遺伝子の有無を検索するため、遺伝子パネル検査を実施します。
AR陽性の場合、治験が終了しているため、ホルモン療法は適応外使用による投与となります。HER2陽性の場合は、ドセタキセル+トラスツズマブ併用療法あるいはHER2陽性乳がん・非小細胞肺がん、胃がんに承認されているトラスツズマブ デルクステカンの治験参加を検討します。
ACCにて急速増大、症状が出現した場合、あるいはNon-ACCにてAR, HER2ともに陰性である場合は、以下の当院の治療成績からタキソテール+シスプラチン併用療法を投与します。
再発・転移唾液腺がん(ACC含む)に対してタキソール+カルボプラチン併用療法あるいはタキソテール+シスプラチン併用療法を投与した患者さんの治療成績を後方視的に比較したところ、タキソテール+シスプラチン併用療法の方が奏効率、無増悪生存が良好でした(図15)。特にACCに対する奏効率は、タキソール+カルボプラチン0%に対して、タキソテール+シスプラチン60%でした。この結果、再発・転移唾液腺がん(ACC含む)に対してタキソール+カルボプラチン併用療法よりタキソテール+シスプラチン併用療法が優れていることが示唆されます。