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東病院 呼吸器外科の特色ある手術について
縮小手術
人間の肺は、右肺が上葉、中葉、下葉の三葉に、左肺が上葉、下葉の二葉に分かれており、さらにそれぞれの肺葉(はいよう)は複数の区域によって構成されています。
手術適応のある肺がんが見つかった場合、その肺がんを含む肺葉を切除するのがこれまでの標準的な術式でした。一方、肺葉全体を切除するのではなく、それより小さい範囲の区域を切除したり、腫瘍のみを部分的に切除する術式を縮小切除と呼びます。近年では、一部の早期肺がんについては「縮小切除」で根治が可能なことが分かってきたり、肺のCT検診の普及などによって、生涯のうちに複数の肺がんが見つかる患者さんが増えたため、将来の切除に備えてなるべく肺を温存しておく必要があり、縮小切除が急速に広がっています。
区域切除(縮小手術)は肺の機能を温存できるというメリットがありますが、複雑な操作を要するため術後の合併症が増えてしまう可能性もあり、比較的難易度の高い術式です。国立がん研究センター東病院では、区域切除においても豊富な経験を有しており、肺葉切除と同等の高い安全性を確保しつつ、患者さんの肺機能を温存する手術を提供することができます。また転移性肺腫瘍に対しても、積極的に区域切除を行い肺機能温存を心掛けています。
肺の切除範囲
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中心に近い位置にある転移性肺腫瘍。
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左肺下葉区域切除。左下葉は半分温存。
拡大手術
拡大手術とは、進行がんに対して行われる術式です。通常の肺葉切除では、肺門という肺の入り口で気管支、肺動脈、肺静脈を処理し、肺を摘出しますが、腫瘍が進行するにしたがって肺門の方へ浸潤した場合や、肺門にあるリンパ節にがんの転移が起こってしまった場合には、片方の肺を全て切除しなければならなくなることがあります。しかし、気管支や肺動脈の形成術を行えば肺を残すことが可能です。気管支や血管の縫合は高い技術を要する手術ですが、当院には豊富な経験があります。
また、肺がんは進行すると、心臓、大動脈、肋骨(ろっこつ)、椎体(ついたい)、食道、気管などの周囲の重要な臓器へ浸潤していきますが、これらの臓器を一緒に切除する場合は、術後の合併症や手術死亡率が高く、難易度の高い手術が必要になります。がんが心臓や大血管に浸潤していたり、背骨に浸潤しているなど、他の病院では切除ができないといわれた患者さんでも、当院では心臓血管外科、整形外科、消化器外科と協力することで、切除の可能性をあきらめないことを心がけています。
特に心臓や大動脈に浸潤した進行がんでは、提携する新東京病院(千葉県松戸市)の心臓血管外科チームと密に連携し、近年は人工心肺装置を用いた切除の経験数も増加しています。
拡大切除の例
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椎体に浸潤した右上葉の肺がん(MRI)
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術前3D構築
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摘出した肺と胸椎
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椎体全切除術後
胸腔鏡(きょうくうきょう)手術
胸腔鏡手術とは
通常の開腹手術では肋間(ろっかん:肋骨と肋骨の間)を開き、直接目でみて手術を行いますが、胸腔鏡手術は「胸腔鏡」というカメラを用いて胸の中を確認し、手術器具(鉗子など)を用いモニターを見ながら行う手術です。
東病院では4つの創(きず)をつけますが、1センチメートル程の小さな創であるため術後も非常に綺麗で、従来よりも痛みは少ないです。また筋肉を切断するのも最小限になるので、術後の回復も早いことが特徴です。
近年すばらしい技術の進歩により、目で見るよりも非常に細部までモニター画面に綺麗に写すことができるため、拡大した視野でより安全に手術を行うことができます。
施設により対象とする肺がんは異なりますが、東病院 呼吸器外科では比較的早期の肺がんに限定して行っています。
術中風景
ロボット手術
2018年4月から原発性肺癌、転移性肺腫瘍といった悪性腫瘍に対して、保険診療でロボット支援下手術が行えるようになりました。当院でも早期肺がん、転移性肺腫瘍を中心に積極的にロボット支援下手術を行っています。
ロボット支援下手術の特徴は、術者がサージョンコンソール内の3次元画像で術野を立体的に細部まで見ることが可能なこと、従来の胸腔鏡手術にはない自由度の高い鉗子の動きが可能となったことで、開胸手術と同じ立体的視野、さらに人間の手以上の広い関節可動域を可能にした動きを容易に再現することができます。創は小さなものが複数箇所のみで、痛みも少ない手術を提供することが可能となります。
ロボット支援下手術は、胸腔鏡のメリットである低侵襲性、さらに開胸と同じ動き、視野を同時に得ることができる理想的な手術方法といっても過言ではありません。
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術者はコンソール内で操作し、手術を行います
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術者の動きに連動しロボットが動きます。
2名の医師がさらにサポートを行います。