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酸素飽和度イメージング内視鏡の開発
内視鏡診断技術は消化器がんの早期発見に貢献してきましたが、さらなる微小な病変を早期に発見するために狭帯域光観察(NBIやBLI)などの精細に観察する技術の開発が進められ臨床現場に導入されています。一方、がんと酸素飽和度について、がん組織内部では無秩序な血管新生とがん細胞増殖の不均衡により血管から充分に酸素が供給されない低酸素領域が発生していること、低酸素状態のがんは抗がん剤治療や放射線治療に抵抗性であることが報告されています。この点に着目して、国立がん研究センターは酸素濃度測定による治療効果予測に繋がる機能的診断を目指して、富士フイルム株式会社と共同で酸素飽和度イメージング内視鏡技術を開発しています。
「酸素飽和度イメージング内視鏡」は、非侵襲的に粘膜表面の酸素飽和度をリアルタイムに描出し画像化できる内視鏡です。内視鏡先端から出射した光(照射光)が組織に照射され、反射光を内視鏡先端近傍の撮像素子で受光します(図1)。撮像素子におけるB画素、G画素、R画素で反射光を一括に検知して疑似的な分光特性の取得して、粘膜表面における酸化ヘモグロビン(HbO2)・還元ヘモグロビン(Hb)の吸光係数の差を検知することにより、酸素飽和度測定を測定します。このように、内視鏡先端の微細領域における簡易な機器構成により酸素飽和度を評価できます。
「酸素飽和度イメージング内視鏡」を用いて早期がん患者を対象に少数例の臨床研究を実施しました。その結果得られた胃がん患者における白色光画像と酸素飽和度画像の画像では、低酸素部が青く表示されていることがわかります(図2)。このように、少数症例ではありますが、消化管の早期癌では、癌部の酸素飽和度中央値が正常部と比較して低い症例が多いという結果が得られています[1]。今後、さらに研究開発を進めて「酸素飽和度イメージング内視鏡」の有効性(がん領域と低酸素飽和度領域の関係等)を明らかにする予定です。
- Kaneko K, Yamaguchi H, Saito T et al (2014) Hypoxia imaging endoscopy equipped with laser light source from preclinical live animal study to first-in-human subject research. PLoS One 9(6):e99055. doi:10.1371/journal.pone.0099055
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図1.酸素飽和度イメージング装置概略図
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図2.早期胃がん患者における白色光画像(左図)と
酸素飽和度イメージングの内視鏡画像(右図)