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シスプラチンについて
シスプラチンとは
シスプラチンはDNAなどの生体成分と結合して抗がん効果を発揮する抗がん剤です。白金原子を持っていることから、抗がん剤の中では「白金製剤」に分類されています。化学名はシス-ジアンミンジクロロ白金で、その頭文字をとってCDDPとも呼ばれています。1845年に合成されたのですが、電場の細菌に対する影響を調べている時に、プラチナ電極の分解産物が大腸菌の増殖を抑制したことから、がん細胞に対する研究が行われ、製剤化され1978年に世界で承認されました。日本では1983年に承認され、今では多くのがんに対して使われています。
副作用としては、吐き気、腎臓への障害、骨髄の機能の障害、神経への障害などがありますが、現在ではそれらの対策もしっかり行いながら治療ができるようになりました。
白金製剤の仲間
白金製剤の仲間には、化合物の名前が「-プラチン」となっています。
- カルボプラチン(商品名:パラプラチン):シスプラチンの構造を変えることで、吐き気や腎臓への障害、神経への障害が軽減されています。シスプラチンではたくさんの水分を点滴する必要がありますが、カルボプラチンではその必要がありません。
- ネダプラチン(商品名:アクプラ):日本で開発された抗がん剤です。シスプラチンよりも腎臓への障害は少ないものの、腎臓や血液への影響を注意しながら使っています。頭頸部がん、肺がん、食道がん、膀胱がん、精巣腫瘍、卵巣がん、子宮がんに使われることがあります。
- オキサリプラチン(商品名:エルプラット):はじめは日本で合成されたものの海外で研究が進んだ抗がん剤です。2005年から大腸がんに使われ、効果を発揮しています。手足の痺れが起こりやすいため、注意しながら使われています。
シスプラチン点滴中の水分摂取の理由
シスプラチンは広く治療に用いられている有用な抗がん剤ですが、腎臓にダメージを与えることが知られています。シスプラチンによる腎臓へのダメージを減らすため、シスプラチンの点滴前後には1リットルから2リットルの輸液を点滴し、尿量を増やすようにします。尿が思うように出ない場合は、利尿薬(ラシックスなど)によって2リットル以上の尿量がでるようにします。はじめてシスプラチンを点滴される方は、一日の尿量に驚くことが多いのですが、尿をできるだけ多く出すことでシスプラチンを洗い流すことが目的なので、安心してください。
尿を増やす理由としては、(1)腎臓におけるシスプラチン濃度の低下、(2)毒性の原因の一つであるシスプラチンの反応抑制、(3)シスプラチンと腎臓の接触の軽減、が挙げられています。
治療中、輸液を点滴しますが、できるだけ水分を摂取する方がよいため、シスプラチンの点滴する際は水やスポーツ飲料などによりいつもより多く水分を補給することをお願いしています。なお、水分の補給は2リットル、3リットルのような大量の水分を飲む必要はありません。いつもより多めの水分の摂取で十分です。
シスプラチンの意外な?副作用
シスプラチンの副作用として吐き気や腎障害などが知られていますが、意外なところで「しゃっくり」も副作用として起こることがあります。
しゃっくりを止める手段として、冷たい水を飲んでみる、息をこらえてみる、などいろいろな方法を試したことがあるという方は多いのではないでしょうか。
しかし、抗がん剤の副作用として起こるしゃっくりは時にしつこいこともあり、そういうときにはお薬をつかって止めることがあります。
正直なところ、しゃっくりの薬物療法として確定的な薬剤はないのですが、よくクロルプロマジン(商品名:コントミン・ウィンタミン)や、メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)などが使用されています。
その他、よく患者さんからは意外だという声が聞かれるのですが、柿蔕(シテイ)という「柿のヘタ」を煎じたものがしゃっくりに有効なことがあります。当院では柿のへた100グラムに対し400ミリリットルの水で200ミリリットルになるまで煎じたものを、1回あたり20ミリリットル服用することにしています。少し渋みがありますが飲みやすく、副作用もほとんど知られていないため、しゃっくりのお薬として多く使用されます。