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荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第22回 がんの画像診断について
2023年2月24日
がんの画像診断
がんはどうやって見つかるのでしょうか。たとえば人間ドックなどの検診では、胸部X線写真、胃内視鏡検査、胃のバリウム検査、腹部超音波検査などの画像診断が行われており、検診で異常が見つかると精密検査となります。精密検査として行われる画像検査としては、CT検査、MRI検査が挙げられます。CT検査、MRI検査はともに体を輪切りや縦切りにして体の内部を覗いたような画像を得ることが可能であり、画像診断を専門としている放射線診断科の医師が画像の詳細を観察し、病気があれば異常所見として診断しています。MRI検査は磁石の力を応用して画像データを得ており、人体にはほぼ影響がないとされています。CT検査は放射線を使って画像データを得ているため放射線の被ばくが避けられませんが、被ばく量としては非常に少ない量となっています。また、検査により得ることのできる画像データによる詳細な診断という利益が放射線被ばくという不利益よりも勝っていると考えられており、過度な心配は必要ありません。
CT検査の変遷
CT検査は、体を輪切りにして内臓の画像を得る検査です。より詳細な検査を行う場合には造影剤という薬剤を静脈から注入して検査を行うことで、血液の流れを考慮した画像を得ることが可能です。がんは通常の組織とは異なった血液の流れであることが多いため、造影剤を使用したCT画像がより重要な診断材料となります。1990年初頭に開発されたヘリカルCTは、それまで二次元平面で行われていた画像診断を三次元の立体的な画像診断へと進化させた画期的なCT装置であり、その技術は現在まで引き継がれています。近年では、高精細CT装置が臨床に導入されており、通常のCT画像の最大16倍の画素数での撮影が可能となっており(図)、がんの範囲診断に大きく寄与しております。また、最新のCT装置としてフォトンカウンティング検出器を用いたCT装置が開発され、研究と臨床応用が開始されています。同装置は、より低被ばくかつより高精細な撮影が可能となり、患者さんへの負担を軽減しつつ診断性能を向上させることが期待されています。
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通常CT
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高精細CT
図:通常CTと高精細CTの比較画像。高精細CTの方が画面右側のスリットが明瞭に見えている。
人工知能への期待
近年、将棋や囲碁などでAI(人工知能:artificial intelligence)の活用が話題となっています。医学でもAI技術を活用すべく内視鏡領域ではすでに臨床現場で導入され始めています。画像診断においてもAI技術を活用するべく研究が行われており、医師の画像診断を助けるソフトの導入が始まっています。AIが医師の代わりに画像診断を行い、患者さんの病気を診断する、という世界は当分先の話になりそうですが、画像診断もAIも日進月歩であり、夢物語という訳ではなさそうです。
執筆者
- 小林達伺(こばやし・たつし)
- 1993年筑波大学医学専門学群卒。筑波大学附属病院放射線診断・IVR科入局。栃木県立がんセンター、国立がん研究センター東病院、国立がん研究センター中央病院を経て2007年より国立がん研究センター東病院放射線診断科に勤務。2018年より現職。