コンテンツにジャンプ

トップページ > 取り組み > 荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治療最前線」 > 第23回 病理診断について

荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第23回 病理診断について

2023年3月25日

1)病理診断とは

適切な治療のためには、適切な診断が必要とされます。病理診断は、患者さんの病変部より組織や細胞の一部分を採取してこれらを顕微鏡で観察し、病変の診断を行う業務のことです。病理診断は、「適切な治療のための適切な診断」として大きな役割を果たしていることになります。

病理診断の作業過程として、まず臨床検査技師が手術あるいは内視鏡検査で採取された組織、痰や尿などから集めた細胞を用いて病理標本を作製します。その後、病理医が顕微鏡を用いて質的な診断を行います。時には、様々な特殊染色を追加し、また遺伝子学的解析も加えることにより、最終的な病理診断がなされることもあります。
病理診断は、疾患に関する最新の知見と先端技術を積極的に導入し、病院の質を保証する医療の“かなめ”として重要な役割を担っています。

病理診断には以下のものがあります。

2)生検組織の診断

病変の一部を鉗子等でつまみとり(生検と言います)、その組織を標本にします。出来上がった標本を顕微鏡で評価することにより、病変の質的診断を行います。臨床医が治療方針を決定する上で、生検組織診断はしばしば決定的な役割を果たします。

3)手術で摘出された臓器の診断

病理医が、手術にて摘出された臓器を肉眼的に観察することにより、病変の部位、大きさ、性状などを詳細に評価します。標本を顕微鏡で観察することにより、病名を最終的に確定し、また病変はどれくらい進行しているのか、手術で病変すべてがとりきれたのか、転移があるのかなど、術後の治療方針決定に役立つ情報を臨床医に提供します。

4)手術中の迅速診断(術中迅速診断)

手術前に詳細な病理診断ができない場合は、「術中迅速診断」を行います。術中迅速診断では、手術中に採取された病変組織を用いて30分程度で病理診断が行われます。ただし、標本の作製過程が通常とは異なり、凍結した組織を用いた診断となるため、しばしば観察が困難となることがあります。診断結果は即座に執刀医に連絡され、手術方針が決定されます。

病変が完全にとりきれたかどうかの確認のために、術中迅速診断は役立ちます。例えば摘出された臓器の断端に腫瘍細胞を認めた場合は、さらなる追加切除が行われることもあります。また、リンパ節にがんの転移があるかどうかを調べることにより、手術の方針が変更される場合もあります。

5)細胞診断

肺がんや膀胱がんでは、痰や尿の中にがん細胞が混じることがあります。痰や尿などを顕微鏡で観察し、がん細胞がいるかどうかを判断するのが細胞診断です。生検組織の診断が多数の細胞の塊を対象とするのに対し、細胞診断では単個、あるいは数個の細胞を対象としています。

6)病理解剖(剖検)

病理解剖は、不幸にしてお亡くなりになられた患者さんの全身臓器を詳細に観察することにより、死因の究明、治療効果の判定、などを検証します。病理解剖の結果は臨床病理検討会(CPC)を通じて主治医に報告されます。病理解剖を通じて得られた貴重な知見は、今後の医学の進歩につながります。

インフォメーション 

荘内病院には毎月第1金曜日、通院患者と家族が治療方針などについて国立がん研究センター東病院の専門医と直接相談できる「がん相談外来」が開設される。問い合わせは荘内病院地域医療連携室=電0235(26)5155=へ。

執筆者

石井先生
  • 石井源一郎(いしい・げんいちろう)
  • 1990年金沢大学医学部卒業、1994年千葉大学大学院医学研究科博士課程修了、2001年国立がんセンター研究所支所臨床腫瘍病理部病理形態研究室長、2015年東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻客員教授(現在も継続)、2016年国立がん研究センター先端医療開発センター臨床腫瘍病理分野分野長、2018年順天堂大学大学院医学研究科連携大学院最先端がん臨床研究コース客員教授(現在も継続)、2020年国立がん研究センター東病院病理・臨床検査科長

更新日:2023年3月30日