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乳がんについて

乳房とは

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乳房はおもに授乳期に母乳を作る乳腺組織と、その周囲の脂肪組織から出来ています。乳腺組織の中でも実際に母乳を作る場所を小葉(しょうよう)と言い、母乳を乳頭まで運ぶ管を乳管(にゅうかん)と言います。「乳がん」とは「乳腺組織」ががん化したものをと言います。

乳がんについて

乳がんは女性が患うがんの中で最も多いがん腫で、11人に一人の女性が一生の間に乳がんにかかると言われています。診断のきっかけは乳房腫瘤(しゅりゅう:胸のしこり)のほか、乳頭・乳輪部の湿疹やただれ、乳頭異常分泌、乳房皮膚のくぼみなどが知られています。また、近年は検診をきっかけに発見される無症状の乳がんの方も増加傾向にあります。

検査と診断

マンモグラフィや超音波検査で腫瘤が指摘され乳がんが疑わしい場合には、腫瘤に直接針を刺して細胞や組織を採取し、顕微鏡で確認します。そこでがん細胞が確認されると乳がんという診断になります。

マンモグラフィ

マンモグラフィは、板と板の間に乳房を引き出して圧迫し、薄く伸ばしてX線撮影します。

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乳腺超音波(エコー)検査

超音波検査では通常の乳腺は白く、多くの乳がんは黒く描出されます。腋(わき)の下や、鎖骨の上下のリンパ節転移があるかどうかも同時に確認します。

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細胞診・組織診

細胞診

超音波検査などで腫瘍の位置を確認しながら、注射器の針を刺して細胞を吸引し、良性か悪性かを調べます。

組織診

超音波検査などで腫瘍の位置を確認しながら、腫瘍に局所麻酔下にやや太めの針を刺して、組織を取り出して調べます。細胞診に比べて調べられる細胞や組織の量が多いので、より確実な診断と詳しい情報を得ることが可能になります。

ステレオガイド下吸引式針組織生検

マンモグラフィをしながら太めの針を刺して組織を採取する方法です。マンモグラフィでしかわからない石灰化*の診断に役立ちます。

注)石灰化:乳腺の中にカルシウムが沈着した状態

MRI

乳房の中の病気の広がりを診断したり、多発する病変を検出したりすることで切除範囲の参考にします。MRI検査では磁気とガドリニウム造影剤を使用します。ペースメーカーなどの金属が入っている方や腎臓病や喘息、アレルギーのある患者さんは医師に申し出てください。

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CT・骨シンチ・腹部超音波 (エコー) 検査

進行がんの方を中心に、全身に転移があるかどうかを確認します。CT検査ではヨード造影剤を用いますので、腎臓病や喘息、アレルギーのある患者さんは医師に申し出てください。CT検査は紹介元で撮影された画像をCD-ROM等の形で持参いただければ、当院での検査を省略できる場合があります。

病期(ステージ)

病期とはがんの進行の程度を示す言葉で、乳がんは0期、I期、II期(A、B)、III期(A、B、C)、IV期に分類されます。

乳がんの治療は、臨床病期(予想進行度)とサブタイプ(後述)によって、4通りの治療(手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン療法)を組み合わせて行います。

乳がんの進行と大きさ分類

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乳がんは乳管や小葉から発生しますが、初期の段階では乳管や小葉の中で増えていきます。そして徐々に乳管や小葉の壁を突き破って外側に広がっていきます。これを浸潤(しんじゅん)と言います。乳管や小葉内にとどまっている乳がんを非浸潤がん(0期)、浸潤している乳がんを浸潤がん(I期からIV期)と分類しています。

 

臨床病期

0期

  • 非浸潤がんといわれる乳管や小葉内にとどまっているがん、または乳頭部に発症するパジェット病(皮膚にできるがんの一種)で極めて早期の乳がん。

I期

  • しこりの大きさが2センチメートル以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない。

IIA期

  • しこりの大きさが2センチメートル以下で、わきの下のリンパ節に転移がある。または、しこりの大きさが2から5センチメートルで、リンパ節や別の臓器への転移がない。

IIB期

  • しこりの大きさが2から5センチメートルで、わきの下のリンパ節に転移がある。または、しこりの大きさが5センチメートルを超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がない。

IIIA期

  • しこりの大きさが5センチメートル以上で、わきの下のリンパ節への転移がある。

IIIB期

  • しこりの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、皮膚にしこりが顔を出したり、崩れたり、むくんでいるような状態。炎症性乳がんもこの病期に含まれる。

IIIC期

  • しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある。

IV期

  • 別の臓器に転移している。
  • 乳がんの転移しやすい臓器:骨・肺・肝臓・脳など

乳がんのサブタイプ

 乳腺に発生するがんを乳がんと言いますが、その性質はさまざまで現在は4つに分類(サブタイプ)され、サブタイプごとに治療方針が決められます*。

サブタイプ分類 ホルモン受容体 HER2 Ki67
  ER PgR    
ルミナルA型 陽性 陽性 陰性
ルミナルB型 (HER2陰性) 陽性 弱陽性・陰性 陰性
ルミナルB型 (HER2陽性) 陽性 陽性 ・ 陰性 陽性 低~高
HER2型 陰性 陰性 陽性 低~高
トリプルネガティブ 陰性 陰性 陰性 低~高

*本来は発現する遺伝子による分類ですが、がん組織の免疫染色の結果をもとに分類されることが多いです。

  • ER(estrogen receptor:エストロゲン受容体) 、PgR(progesterone receptor:プロゲステロン受容体):エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが増殖に関与している乳がん。ルミナル型の乳がん(ホルモン受容体陽性乳がん)にはホルモン剤が使われる。
  • HER2(human epidermal receptor 2:上皮成長因子受容体2/ハーツー):細胞の増殖なのに関係しているタンパク質。ルミナルB型(HER2陽性)やHER2型の乳がんにはハーセプチンなどの分子標的薬が使われる。
  • トリプルネガティブ:ER、PgR、HER2の3つすべてが陰性の乳がん。
  • Ki67:腫瘍の増殖能。高いほど腫瘍が増えるスピードが速いとされる。

乳がんと遺伝について

乳がんの原因として喫煙やアルコールの摂取、肥満などの生活習慣が知られていますが、5-10%の乳がんの発症には遺伝が関与しているとされています。ご家族に乳がんや卵巣がんなどのがんを発症した方がいたり、若くして乳がんを発症されたりした場合などは遺伝性乳がんの可能性があり、遺伝学的検査(血液検査)で調べることが出来ます。乳がんの一部の方と卵巣がんの方は保険診療として実施することも可能です。

更新日:2020年10月21日