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乳がんの治療について

乳がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(内分泌療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的治療など)があり、それぞれの治療を単独で行う場合と、複数の治療を組み合わせる場合があります。がんの性質や進行病期、身体の健康状態、年齢、合併する他の病気の有無などに加え、患者さんの希望を考慮しながら治療法を決めていきます。

手術

ステージ0-III(3)期の人に対して外科的に腫瘍を切除します。

詳しくは「乳がんの手術について」をご覧ください。

注)ステージ0-III(3)期:病巣が乳房とその周囲のリンパ節にとどまっている状態

ラジオ波熱焼灼(しょうしゃく)療法

ラジオ波熱焼灼療法(RFA)とは、腫瘍を切除するのではなく、腫瘍に針を刺して、数分間通電することによりがん細胞を死滅させる治療方法です。先進医療制度として早期乳がんに対する実施が承認され、治療成績が乳房切除に劣らないこと、乳房を切らないために整容性が優れていることを証明するための臨床試験(登録期間:2013年8月~2017年11月)が実施され、現在は患者申出療養としての施行が可能です。

注:患者申出療養制度とは、困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものです。

放射線治療

 手術後の局所再発を防ぐために行います。部分切除後の残存乳房や乳房周囲のリンパ節に照射します。また、骨や脳に転移した方にも症状の緩和のために照射します。

なお、再発には「局所再発(乳房周囲の再発)」と「遠隔再発(他の臓器:肺、肝臓、骨などへの転移)」があります。放射線照射が防ぐことができるのは局所再発です。

ホルモン療法

 ホルモン感受性陽性乳がん(ルミナル型の乳がん)の増殖には女性ホルモンの刺激が関与することが知られています。そのため再発の予防や病気の進行を抑えるためには、女性ホルモンの刺激を抑えるホルモン療法が推奨されます。

化学療法

 化学療法は乳がんのタイプによって効果に違いがあり、ホルモン感受性のない乳がん(HER2型、トリプルネガティブ)やホルモン感受性の少ない乳がん(ルミナルB型)にはより効果的であることがわかっています。再発の予防や病気の進行を抑えるために行われますが、脱毛や倦怠感、神経障害、骨髄(こつずい)抑制などの副作用があります。

 腫瘍を小さくしたり化学療法の効果を判定したりするために、手術前に行うこともあります(術前化学療法)。

分子標的治療

 従来から使われている抗がん剤は、がん細胞とともに正常な細胞を攻撃するために、副作用が避けられませんでした。抗HER2(ハーツー)治療に代表される分子標的治療はがん細胞の増殖に関係するタンパク質(分子)に作用するため、一般に少ない副作用で大きな効果が期待できます。標的となる分子と対応する薬がある方に適応されます。現在ではHER2に対する薬に加えて、血管新生阻害薬、mTOR阻害薬、CDK4/6阻害薬、PARP阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬など様々な作用機序の分子標的治療が用いられるようになっています。

ちょっと気になる乳がん治療について(Q&A)

Q1. 浸潤性乳がんと非浸潤性乳がんの違いがわかりません。

A1. がん細胞が乳管内や小葉内にとどまっている状態を「非浸潤性乳がん」と分類し、乳管や小葉の外側まで広がっている状態を「浸潤性乳がん」と分類しています。

乳管内(小葉内)には血管やリンパ管は存在しないため非浸潤性乳がんの方には転移の心配はありません。一方浸潤性乳がんの方は、乳管(小葉)周囲の血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる可能性があるため、全身療法が必要になってきます。

 乳がんの治療1

Q2. 再発と転移の違いは何ですか?

A2. 再発には、手術をした側の乳房や周囲の皮膚やリンパ節に再発する「局所再発」と、肝臓や肺などの全身の臓器に転移する「遠隔再発」の二つのタイプがあります。

転移とは手術の有無にかかわらず、リンパ節や全身の臓器にがん細胞が広がっている状態を言います。

局所再発の場合は、早期に発見することで切除が可能であり治癒が目指せます。症状としては、乳房内の腫瘤や乳頭・乳輪部の湿疹やただれ、乳頭異常分泌や皮膚のくぼみなど、初回手術時の症状と変わりありません。

他臓器への転移を認める場合には、治癒を目指すのが困難な場合が多く薬物療法が中心となります。乳がんの場合、肺、肝臓、骨や中枢神経(脳など)への転移が知られています。

  • 乳がんの治療3
  • 乳がんの治療2

Q3. 再発の予防(補助療法)は必要ですか?

A3. がん診療の基本はなるべく早い段階で診断・治療し、再発を防ぐことで、乳がんでも同じです。乳がんでは手術後の再発を防ぐために術式や進行具合、がんのタイプに応じて放射線や全身療法(化学療法、ホルモン療法)が行われます。

 

Q4. どういった人に放射線照射が必要ですか?

A4. 部分切除を受けた人や、リンパ節への転移が認められた人が対象となります。放射線の目的は手術をした側の乳房や周囲のリンパ節に照射することで、「局所再発」を防ぐことです。全摘かつリンパ節に転移を認めなかった方には放射線照射は必要ありません。

 

Q5. どういった人に全身療法が必要ですか?

A5. 化学療法やホルモン療法といった全身療法の目的は血管やリンパ管の中に入り込んでいるがん細胞をコントロールすることで、「遠隔再発」を防ぐことです。血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる可能性のある浸潤性乳がんの方が対象となります。

 

Q6. 化学療法やホルモン療法は選べますか?

A6. 乳がんのタイプ によって選択する全身療法が異なります。例えば、ルミナルタイプの乳がんにはホルモン療法が効果的ですが、トリプルネガティブ乳がんやHER2タイプ(ルミナルHER2を除く)タイプの乳がんにはホルモン療法は効きません。

 

Q7. 乳房切除(全摘)をすれば抗がん剤は不要になりますか?

A7. 補助療法によって予防する再発のタイプが異なるため、全摘でも抗がん剤が必要な場合もあります。化学療法やホルモン療法といった全身療法の目的は、血管やリンパ管の中に入り込んでいるがん細胞をコントロールすることで、「遠隔再発」を防ぐことです。

一方放射線の目的は、手術をした側の乳房や周囲のリンパ節に照射することで、「局所再発」を防ぐことです。全摘でかつリンパ節に転移を認めなかった方には放射線照射は必要ありません。

 

Q8. I期のような早期乳がんでも、化学療法(やホルモン療法)は必要ですか?

A8. 病期(ステージ)によって再発のリスクが異なりますので、同じ化学療法でも再発の予防効果は異なります。

例えば、乳がんの再発リスクを半分に減らすXという抗がん剤があるとします。再発のリスクの低いAさんと、再発のリスクの高いBさんに同じXを使用すると、どちらも再発のリスクを半分に減らすことができますが、Bさんの方が期待される効果は大きくなります。病期が進行するほど補助療法の必要性は強くなりますが、早期がんの方でも一定の効果は期待できます。

乳がんの治療4

更新日:2020年8月26日