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腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術について

腹腔鏡下手術とは

腹腔鏡下胃がん手術はお腹に5から12ミリメートルの小さな傷を5つだけつけて、細長い手術器械を挿入して行う手術です。1991年に日本で初めて行われ、すでに25年以上の歴史があり、国の健康保険で認められている手技です。現在はハイビジョンの内視鏡(腹腔鏡)を用いて、非常に鮮明な画面を見ながら手術が行えるようになりました。切除した胃は、おへそに近い傷を3から4センチメートルに広げて取り出します。(胃は空っぽであれば縮みますのでこの程度の傷から取り出せます)

 長所

  1. 拡大した画面でより繊細な切除が行うことができる
  2. 傷が小さく目立たないため美容的に優れている
  3. 術後の痛みが開腹手術よりも少なく早期回復が可能
  4. 傷の感染などのトラブルが少ない
  5. 出血量が少ない

短所

  1. 手で臓器を触ることができない
  2. 手術時間が長くなる(術式により異なりますが、30分から1時間程度)
  3. 技術を習得するのに時間や経験を要するため、術者・施設間で技術の差が大きい

図:腹腔鏡下手術のイメージ(左)と実際の風景(右)

  • 腹腔鏡下手術のイメージ
  • 実際の風景

図:開腹手術と腹腔鏡手術の創(きず)の違い

  • 1.開腹手術の創(きず)
    開腹手術では、みぞおちから臍の横くらいまでを縦に切開して手術を行います。

    開腹手術の創(きず)イメージ
  • 2.腹腔鏡手術の創(きず)
    腹腔鏡手術では、0.5から1センチ位の創が4か所と、切除した胃を取り出す創が数センチの計5カ所の創になります。

    腹腔鏡手術の創(きず)イメージ

東病院胃外科における腹腔鏡下手術について

胃外科長の画像

胃外科長 木下敬弘

東病院胃外科の科長、木下敬弘は、腹腔鏡下胃がん手術を2003年に開始して、これまでに約2000件の経験を有しており、国内・国外でのオピニオンリーダーとして知られています。当科では、幽門側(ゆうもんそく)胃切除・胃全摘・噴門側(ふんもんそく)胃切除・幽門保存胃切除などの手技は、定型化(手術方法が定まっており、常に同様の方法で行うこと)され、安定した術後成績が得られています。

腹腔鏡下胃がん手術は全国で年間約2万件が行われており、大部分が比較的容易な早期胃がんを対象としています。胃がん治療ガイドラインではステージI胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除が日常診療の選択肢として強く推奨されています。腹腔鏡下胃全摘は食道と小腸を吻合(ふんごう)する手技が難しいとされてきましたが、経験のある術者であれば安全に行えるということが、多施設臨床試験で確認されました。ステージII以上の進行がんに対する幽門側胃切除に関しても、多施設臨床試験の結果から、手術の安全性と長期予後は従来の開腹手術と同等であることが証明されたため、外科治療の選択肢として推奨されるようになりました。ただし、臨床試験の結果は適応症例にも、医療者側(施設、術者)にも厳格な適格基準が定められているため、日本内視鏡外科学会の定めた技術認定取得医が術者として施行する、または技術認定取得医の指導のもとで施行することが望ましいとされています。

東病院胃外科では多くの腹腔鏡下胃がん手術の経験をもとに、これらの臨床試験に参加し貢献してきました。現在は、患者さんに背景を説明したうえで、患者さんのご希望に合わせてベストと思われる手術法を選択しています。

 


更新日:2023年6月6日