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2.体に負担の少ない、創(きず)の小さな腹腔鏡(ふくくうきょう)手術(ロボット支援下手術)
腹腔鏡手術はおなかに小さな創(きず)を5か所から6か所程度開けて行う手術です。開腹手術と比べて、創が小さく、体への負担は少なくなります。腹腔鏡手術は開腹手術よりも高度な技術を要しますが、肝胆膵外科領域でも拡がりつつあり、国立がん研究センター東病院では2022年度からはロボット支援下での膵臓や肝臓の手術も行っています。多関節のロボットアームにより高精度な手術を行えることがメリットだと考えております。
現在、膵臓の手術では早期がんや低悪性度腫瘍に対してロボット支援下膵頭十二指腸切除術を行っています。また、膵がんを含めた膵腫瘍に対してロボット支援下膵体尾部切除術を行っています。膵臓の手術はロボット支援下手術か開腹手術で治療を行うことが多くなっています。
肝臓の手術もロボット支援下肝切除術を行っていますが、肝腫瘍の大きさや場所によって腹腔鏡の手術、ロボット支援下手術のいずれか、適した方を選択して行っています。また腫瘍が大きいときや開腹手術の既往があり高度な癒着が予想される場合は肝臓の手術も開腹で行うことがありますが、その割合は少なく肝臓の手術の8割以上は創の小さな手術で行えています。
肝臓の開腹手術は図1のような大きなおなかの創となることが多いですが、腹腔鏡手術の創は図2のように小さい創となります(病変を取り出す部分だけは少し大きめの創となります)。腹腔鏡手術では、図3のように、おなかに開けたいくつかの小さな創から、二酸化炭素でおなかをふくらませた状態で、腹腔鏡用のカメラと、鉗子と呼ばれる手術器具などを使って、病変を切除します。図4のように、腫瘍を含む肝臓の一部を摘出します。ロボット支援下手術では同じ小さい創になりますが、少し位置が異なります。
創が小さいため、術後早期の痛みは少なく、腹腔鏡下(ロボット支援下)肝切除術の場合、術後5日から7日程度で退院されています。
図1 開腹の肝臓手術の創
図2 腹腔鏡の肝臓手術の創
図3 腹腔鏡の肝臓手術のやり方(イメージ)
図4 腹腔鏡の肝臓手術の術中写真
肝臓の手術では、切除する範囲が大きくなるとより難易度も高くなります。肝臓では亜区域切除、区域切除や右葉切除、左葉切除のような術式が腹腔鏡手術として保険収載されており、膵臓では膵体尾部切除や膵頭十二指腸切除のような高難度の術式も腹腔鏡手術として保険収載されていますが、正式な認可を受けて実施できる施設は限られています。
国立がん研究センター東病院は症例数等の施設基準を満たし関東信越厚生局より認可を受けていますので、保険適応となっているすべての術式を、腹腔鏡手術で行うことが可能です。
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腹腔鏡下肝切除術の認可
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腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の認可
大腸がんと転移性肝がんが同時に見つかった患者さんに対しては、大腸がんの切除と転移性肝がんの切除を、1回の手術で行うことも可能です。もともと肝臓は上腹部、大腸は下腹部で離れた場所を手術することになりますが、図5のように、腹腔鏡手術によってこれらを1回の手術(1回の全身麻酔)で摘出することも可能となります。その場合、1回の手術中に、肝胆膵外科チームが転移性肝がんの切除をして、その後大腸外科チームが大腸がんの切除を行うことが一般的です。
転移性肝がんの個数、大きさ、位置などにもよりますが、我々肝胆膵外科医と大腸外科医で密に連携して、患者さんにとってなるべく負担の少ない、安全な方法をとるようにしています。
図5 (例)開腹の肝臓・大腸同時手術の創 (例)腹腔鏡の肝臓・大腸同時手術の創
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