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人工尿道括約筋埋込み術について
前立腺がんに対する前立腺全摘除術後は、尿道括約筋の機能低下による腹圧性尿失禁が生じます。大多数の患者さんは、時間経過とともに改善し(6ヶ月までが劇的にその後はゆるやかに)、18から24ヶ月までは改善の可能性があると報告されています。しかしながら、ごく一部の患者さんで、術後2年以上たっても、1日にパッドが3から4枚以上必要な重症尿失禁の方がおられます。こうした患者さんの治療として、人工尿道括約筋(AMS-800)埋込み手術があります。
本手術は2012年4月に保険収載されました。当科長の増田は、本手術の保険収載に貢献し、既に140例以上の経験を有しており、関東全域より多数患者さんが紹介されています。実績はこちらからご覧ください。
人工尿道括約筋埋込み術とは
人工括約筋は、尿道の周りにシリコン製のチューブを巻き付けその中に生理食塩水を充填することで尿道を圧迫し、尿失禁を治療します。
本システムは内蔵されているため、表面からはわかりません。手術時間は60から90分程度で、出血はほとんどありません。挿入後、尿道の手術に伴うむくみがとれる6から8週間後より使用開始します。
回路は生理食塩水で満たされ、尿道に巻かれたカフ(尿道を圧迫する部分)で、尿禁制が保たれます。ただし、カフ圧が過剰に高いと尿道への血流が減少し、尿道が萎縮してしまうため、カフ圧は、拡張期血圧よりやや低目に設定されています。
従って、大きな咳、くしゃみや、運動時には少量尿が漏れることがあるため、パッド1枚にする手術とご理解ください。
我々の治療経過では、45パーセントの方がパッドなし、53パーセントの方がパッド1枚(予防的なものも含む)、2パーセントの方がパッド2枚となっています。
人工括約筋は3つのパーツに分かれています。カフ(尿道を圧迫する部分)、圧力調整バルーン(液体を貯留しておく部分)、コントロールポンプ(陰嚢内に設置して尿道括約筋を動かすスイッチとなる部分)です。このうち、尿道の部分には患者さんの尿道径に合わせたサイズの部品を埋込みます。
仕組みについて
通常は、カフが70cmH2O程度の圧力で尿道を圧迫し、尿禁制を保っています。作業禁止ボタンをコントロールボタンと間違って押してしまうことがあります。術前に実物をおみせしますので、よく覚えてください。
尿意を感じたら、コントロールポンプを数回押すと、カフ内の生理食塩水がチューブを経由してバルーンに移動し、カフが開きます。カフが開放している間に排尿します。2から3分で生理食塩水は自然にカフ内に再び戻ります。