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小径腎がんに対するラジオ波焼灼術(らじおはしょうしゃくじゅつ、RFA: radiofrequency ablation)について
国立がん研究センター東病院では、転移を有さない腎がんに対して、ロボット支援手術を中心とした、体への負担が少ない低侵襲手術を施行しています。
特に、小径腎がんでは、腎がんの部分だけを摘出し、正常組織を温存する腎部分切除を積極的に施行しています。一方、高齢者、持病があることで全身麻酔のリスクがある患者さんには、局所麻酔で、CTやエコー下での経皮的な局所治療も選択肢として挙げられます。
その方法の一つとして、当院ではCool-tipTMRFAシステムという器具を用いたラジオ波焼灼術を開始しました。RFAは、皮膚表面から腎がんのある場所に電極を刺入し、ラジオ波帯の高周波電流により腫瘍組織を焼灼凝固する治療です。同様の治療は、肝臓がんでは、保険診療で施行されていましたが、適応が拡大され、2022年9月からは、肺がん、小径腎がん、悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍、四肢・胸腔内および腹腔内に生じた軟部腫瘍、類骨骨腫(良性腫瘍)も保険診療で受けられることになりました。
小径腎がんとは最大腫瘍径が4cm以下の小さい腎がんですが、RFAは手術が困難な場合または希望されない場合の新たな治療選択肢として、期待されています。小径腎がんの中でも1~3cm以下で、転移や脈管侵襲のない腎がんがRFAの良い適応とされます。また、繰り返し施行できるため、両側の腎がん、多発する腎がん、再発例なども治療選択肢となります。ただし、止血凝固機能が保たれていること、針を刺す際に安全な穿刺経路が確保できる場合に限られます。泌尿器科と放射線科の綿密な協議の上、治療適応を決定します。
『腎癌診療ガイドライン』(日本泌尿器科学会編)では、RFAを予定している場合には、針を刺して、腫瘍細胞を採取する針生検による診断が推奨されています。
治療の流れ
治療前にCTまたはMRIの画像を基に、穿刺経路に大腸や血管がないか、焼灼部位の周囲に腸管や膵臓など重要な臓器が近接していないか確認し、治療の際の体位や穿刺経路の計画を立てます。
治療時には、開始前に尿量や血尿の状態を確認するための尿道カテーテル(管)を留置し、CT画像を確認して穿刺経路を最終決定します。消毒後に局所麻酔を施行し、腫瘍に腸管などの臓器が近接している場合には、造影剤入りの水を注入して臓器との間を離す手技が必要となります(安全が担保できない場合は、本治療は中止となります)。腫瘍と腸管などの間が少なくとも1cm以上離れたところで、病変に電極針を穿刺し、1カ所当たり10分程度ラジオ波を通電します。実際の穿刺は、IVR(画像下治療)を専門に行っている放射線科医師が担当します。
針を刺す際や処置の際に痛みが出ないよう、局所麻酔に加え、さらに眠くなる薬を併用することもあります。また、ラジオ波焼灼術を行う前段階として、がんを栄養する血管を塞栓することで、がんの血流を遮断する治療を行うケースもあります。ラジオ波焼灼が終わったら、腹部CT画像を撮影し、合併症がないかを確認します。
腎RFAの合併症には、臓器に傷が付くことによる血腫、血尿、尿瘻(にょうろう)、仮性動脈瘤、尿管狭窄(にょうかんきょうさく)、消化管損傷、感染/膿瘍(のうよう)、気胸/胸水貯留などがあります。
手術の場合は、全身麻酔という負担がかかりますが、障害をおこしたくない臓器や尿路を、手術操作で腫瘍から確実に離すことができます。
一方、ラジオ波は局所麻酔でできますが、部位や腫瘍の深さによってはこれが難しいこともあります。どの治療も利点、欠点がありますので、担当医にご相談ください。患者さんの状況に応じた治療を提供します。