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~放射線治療およびレディースセンターを中心に~
荘内病院×国立がん研究センター東病院 医療連載「つながる医療 がん治最前線」第10回 国立がん研究センター東病院における患者さんのトータルサポートを目指した取り組み
~放射線治療およびレディースセンターを中心に~
2021年2月26日
国立がん研究センター東病院 副院長(教育担当) 放射線治療科 科長 秋元 哲夫
がん治療は年々進歩をしており、最新の統計では2009年から2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64・1%とされており、がんと診断されても多くの方々が治療により治癒する時代になりつつあります。一方で、日本の高齢化も進んでおり、全人口に占める65歳以上の割合は28・8%、75歳以上でも14・8%であり、今後更に割合が高くなることが予想されています(総務省統計局データ)。加えて、乳がんや子宮頚がんなどの女性特有のがんの罹患率の上昇が認められており、好発年齢はAYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)を含む比較的若年です。これはがん罹患の中心的な年代が上下に拡がってきていることを示すもので、各年代の患者さんに応じた様々なサポートや配慮が重要であることを意味しています。
放射線治療は低侵襲な治療法として認知されていますが、技術的な進歩で強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療、画像誘導放射線治療(IGRT)および粒子線治療の高精度放射線治療が様々ながんで保険適用となっています(図1)。
国立がん研究センター東病院では陽子線治療を含めた高精度放射線治療を、頭頸部がん、肺がん、食道がん、前立腺がん、小児がんなど多くの患者さんに安全に提供できる体制が整っています。加えて治療中のサポートやケアを適切にするために、放射線治療看護外来を開設して、専門看護師が治療前、治療中から治療後まで皮膚炎や粘膜炎の副作用対策を含めたサポートを行っています(写真)。これは国内でも初の試みで、患者さんやそのご家族が安心して放射線治療ができる環境を提供できていると自負しており、AYA世代の若年から高齢の患者さんまで、それぞれの世代の問題点に応じた対応ができる体制と考えています。
既述のように女性のがんの罹患率の上昇が認められますが、それぞれの疾患に対する最適な治療の提供を行うだけにとどまらず、女性がん患者さん特有の身体的、精神的および社会的なサポートが必要になります。このサポートを適切に行うためには、職種を超えた幅広い専門職による有機的な連携が必須です。そこで国立がん研究センター東病院では、各職種のがん治療に関する実績やヒューマンリソースが豊富である基盤を活用してレディースセンターを開設し、女性がん患者が安心し、かつ日常生活ならびに社会生活の大きな変化を強いられることなく、治療を受けられる環境を実現しました。対応の窓口の女性看護外来で患者さんの問題点を把握し、関連する診療科や多職種が有機的に連携を図ることを目的に、図のようなセクションを設置して対応をしています(図2)。
今後も国立がん研究センター東病院では時代に即したがん治療の開発のみならず、患者さんの視点に立ったサポートやケアに関しても取り組みを進めていきます。
執筆者
- 秋元哲夫(あきもと・てつお)
- 東京都出身。1986年群馬大学医学部卒業。国立がん研究センターレジデントなどを経て2001年群馬大学医学部附属病院放射線治療科講師、2006年東京女子医科大学病院准教授、2010年同臨床教授、2011年国立がん研究センター東病院放射線治療科長、2014年同副院長(教育担当)、2018年レディースセンター長、2019年人材育成センター長併任で現在に至る。