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ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ)について

ダ・ヴィンチによる泌尿器がん手術症例見学施設認定

国立がん研究センター東病院 泌尿器・後腹膜腫瘍科は、ダ・ヴィンチを用いた泌尿器がん手術の技術および実績が評価され、製造元であるインテュイティブサージカル社(米国・カリフォルニア州)より、内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチXiシステム」を用いた泌尿器がん手術症例見学施設の認定を受けております。

 ダ・ヴィンチを用いたロボット支援手術が世界的に広まってきておりますが、このロボット支援手術を行うためには関連学会等が推奨する一連のトレーニングを受けることが義務化されています。そのトレーニングのひとつに、インテュイティブサージカル社から認定を受けた施設での臨床症例の手術見学が定められています。当科では、ダ・ヴィンチの症例見学を通して多くの泌尿器科医の技術の向上および患者さんへの負担が少ない手術の発展と普及に貢献していきたいと考えております。

 davinci認定証

対象疾患

  1. 前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術
  2. 腎細胞がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
  3. 腎細胞がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術
  4. 腎盂尿管がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術
  5. 膀胱がんに対するロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術

 

ロボット支援手術とは

ダ・ヴィンチは、アメリカで開発された内視鏡手術支援ロボットです。

ペイシェントカート ヴィジョンカート サージョンコンソール

術者がサージョンコンソールに座って、腹腔をCO2ガス(炭酸ガス)で気腹した状態でロボットを操作し手術を行います。ロボット本体と操作台、助手用のモニターで構成され、ロボット本体には3 本のアームと1 本のカメラが装着されています。

鮮明な3Dカメラで体内を立体的に映し出し、手術を行います。手術支援ロボットでは手術機器の先端に関節が7個あり270°の可動域を有するため、執刀医の指・手の動きの通りに操ることが可能です。また、執刀医の手の震え(カメラで言う手ぶれ)が自動的に取り除かれて手術機器に伝達されます。これにより、繊細かつ正確な手術操作が可能となります。

手術のイメージ

患者さんのメリットは、1) 出血量が少ない(輸血は極めてまれ)、2) 傷口が小さく目立たない、3)術後の回復が早い(小さな傷口のみで行われる手術なので、皮膚や筋肉を切開した痛みは少なく術後の回復も早い傾向にあります。

ロボットの操作には熟練が必要なため、執刀はダ・ヴィンチ手術の認定ライセンス受けた医師(当科では5名)とロボット手術チーム(看護師・ME)が担当します。すべての患者さんの手術ビデオを全員で毎回チェックして、技術のさらなる向上を目指しています。

当院では前立腺がん腎がん膀胱がんに対しロボット支援手術を行っています。

前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術
Robot-Assisted Laparoscopic Radical Prostatectomy: RARP

基本的な対象は転移のない限局性前立腺がんの患者様に対する手術です。前立腺と精嚢を摘除し、尿道と膀胱を吻合するもので、早期の前立腺がんに対する有効性が確立された治療方法の1つです。我が国でも2012年4月より保険診療の適応となりました。頭低位で行うため未破裂脳動脈瘤の患者様や一部の緑内障の患者様などは適応にならないことがあります。

立腺全摘除術のイメージ

局所進行がんに対する広範前立腺摘除術

局所進行がん(T3以上)やグリソンスコア(前立腺がんの悪性度)の高い症例では、高頻度で前立腺がんが前立腺を超えて周囲にひろがっています。当科では手術による根治度をより向上させるために、このような高リスクの前立腺がんに対しては前立腺の周囲も含めて大きく切除する広範前立腺全摘除術及び拡大リンパ節郭清を施行しています。術前にホルモン治療を先行する場合もあります。

放射線治療再発後の救済前立腺全摘除術

放射線治療後の局所(前立腺内)再発に対する救済前立腺全摘除を主にロボットで施行しています。

まずは、再発を前立腺生検で確認し、年齢、がんの悪性度、他に転移が存在しないかをよく検討します。悪性度が高い場合は、薬物治療だけでは、奏功期間が限られるので、施行する価値は高いと考えられます。放射線照射に伴う癒着、炎症のため、通常の手術に比べて難易度はあがりますが、選択肢の1つとして、欧米では施行されています。

腎細胞がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
Robot-Assisted Laparoscopic Partial Nephrectomy: RAPN

腎部分切除術とは、腎細胞がんを一部正常な腎実質を付けて切除する術式で、ベースとなる正常な腎臓自体を温存する術式です。ロボット支援手術は、2016年4月に保険診療の適応となりました。

基本的には4センチメートル以下の腎細胞がん(小径腎がん)に対して行います。腎部分切除術は腎機能の保持において有用で、がん制御においても従来の腎摘除術と同等であることが示されており、推奨されるようになりました。また、手術後長期にわたる心血管合併症(狭心症や脳梗塞など)の発症を減らせるとの研究報告もあります。

本手術では、腎動脈の血流を一旦遮断(腎動脈の阻血)して腫瘍を切除します。開いた腎実質や腎杯・腎盂(尿の流れる所)を縫い合わせ、止血します。止血後、腎動脈の血流を再開させて腫瘍を摘除します。術前に、三次元画像解析システムボリュームアナライザー「SYNAPSE VINCENT」による画像解析を行い、切除範囲の参考にしています。

当科では、腎がん手術の70%近くが腎部分切除であり、国内でも極めて高い比率で施行しています。最大限の腎機能温存を目指し、腎部分切除が可能かの判定を最初に行うためです。

腫瘍の位置や深さなどで適応の有無が決まることがあります。また、4センチメートル以上の腫瘍でも部位によっては本手術が可能な場合があるため外来またはセカンドオピニオンでご相談ください。

腫瘍切除のイラスト

腎細胞がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的腎摘除術
Robot-Assisted Laparoscopic Radical Nephrectomy: RARN

がんのある腎臓を周囲の脂肪織を含めて摘出する手術です。部分切除術の対象とならない径の大きな腫瘍や、埋没型の腫瘍などが治療対象となります。ロボット支援手術は2022年4月に保険診療の適応となりました。腎動脈、静脈、尿管を切断し、腎臓の周囲脂肪を付けた状態で腎臓を摘出します。このとき、ポートの一部を 5から7cm に広げてその創部から、腎臓を袋に入れた状態で取り出します。

腎摘除術のイメージ

腎盂尿管がんに対するロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術
Robot-Assisted Laparoscopic Nephroureterectomy: RANU

腎盂がんおよび尿管がんに対して行う、腎臓と尿管を膀胱の一部を含めて摘出する手術です。ロボット支援手術は2022年4月に保険診療の適応となりました。腎臓の遊離および下部尿管処理(膀胱壁の部分切除及び縫合・閉鎖を含む)の2つのパートにわけて手術を行います。腎臓の遊離は腎細胞がんの摘除術と同様の手技で行います。臓器摘出の際は、ポートの一部を 5から7cm に広げてその創部から、腎臓と尿管を袋に入れた状態で取り出します。

腎尿管全摘除術のイメージ

膀胱がんに対するロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術
Robot-Assisted Laparoscopic Radical Cystectomy: RARC

筋層(きんそう)浸潤性膀胱がんの治療として行われる手術です。ロボット支援手術は2018年4月に保険診療の適応となりました。

筋層非浸潤性膀胱がん(以前は表在性がんと呼ばれていました)であっても、悪性度が非常に高いがん、再発を繰り返すうちに悪性度や深達度が進行するがん、BCG膀胱内注入治療に反応しない上皮内がんの場合などにも適用されることがあります。
男性では前立腺を同時に摘除します。女性では原則として子宮・卵巣・膣前壁を同時に摘除します。膀胱を全摘除した後は、尿路変更といって、尿の排泄する経路を作成します。一般的には回腸導管造設、回腸利用新膀胱造設、尿管皮膚瘻造設などの尿路変更を行います。がんの状態や年齢、全身状態、腎機能障害の程度や手術歴などを考慮し術式を決定します。

通常は膀胱全摘除をダ・ヴィンチで行いますが、術式によっては尿路変更術もダ・ヴィンチで行っております。開腹手術と比べると術中出血量が少なく、術後回復も早いため患者様の負担の軽減につながる手術です。

回腸導管 回腸利用新膀胱

更新日:2022年12月1日