市民公開講座「ゲノム医療が導くがん治療の未来─国立がん研究センター東病院の取り組み─」を開催(2019年11月30日)

「1.がんと遺伝子」では、がんとはどんな病気なのか、そしてなぜがんになるのかについて、先端医療開発センター　臨床腫瘍病理分野　分野長の石井源一郎が解説しました。

「がん」は、遺伝子が傷つくことによって起こる病気で、「がんゲノム医療」はがん腫別ではなく、がんの原因となる遺伝子の変異に基づいて診断・治療を行う医療です。東病院では、多数の遺伝子を同時に調べ、患者さんの治療選択に役立てる遺伝子検査（がん遺伝子パネル検査）を、2019年7月3日より保険診療で実施しています。

2019年12月現在、国内では2種類のがん遺伝子パネル検査が保険適用されていますが、このようなゲノム情報を扱う医療ができるのは、厚生労働省が指定した全国の医療機関（がんゲノム医療拠点病院）に限定されています。

「2.がんの遺伝子検査」では、パネル検査の業務に携わっている病理・臨床検査科の説田愛弓より、検査の目的や流れ、２種類の検査の違い等についてご紹介しました。

「3.がんの遺伝子と治療選択」では、胃がんや食道がんなどのがん種別でなく、遺伝子異常を対象とした治療について、先端医療科の高橋秀明が解説しました。

また、より早く患者さんに新しい薬を届けるため、まだ承認されていない薬の効果と副作用を調べるための「治験」や、適応のない薬剤を患者さんに届けるための制度（患者申出療養）についてご紹介しました。

「4.がんゲノム医療の遺伝カウンセリング」では、遺伝子診療部門で遺伝カウンセラーを務める平岡弓枝から、がん遺伝子パネル検査からわかる可能性がある「遺伝要因」（遺伝性腫瘍）について、詳しくお話しました。

東病院の家族性腫瘍外来（遺伝カウンセリング）では、遺伝性腫瘍のリスク評価を行い、遺伝学的検査に関する情報を提供しています。また遺伝性腫瘍の診断がついた場合、患者さんのケアやご家族のサポートについて一緒に考えていきます。

「5.家族性腫瘍とリスク低減手術」では、家族性腫瘍と診断を受けて治療をした著名人の例や、現在国内外で取り組んでいる研究内容について、婦人科　科長の田部宏よりご紹介しました。

リスク低減手術とは、がんになるリスクが高い遺伝子変異を持つ患者さんが、予防のためにがんを切除する手術です。ただし、手術をした場合でも全てのリスクが取り除かれるわけでないため、遺伝に関する専門的な知識・経験を持つ医療者と十分相談することが大切となります。