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手術の合併症を減らし回復を早める「リハビリ指導」

術後の合併症を減らし回復を早める「術前リハビリテーション」

2021年6月撮影(福島さん)呼吸練習器の使い方を指導する理学療法士

中央病院・病院棟8階の患者サポートセンターでは、主に、手術を受ける前の患者さんに対して、術前リハビリテーションを行っています。中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科の理学療法士が同センターでのリハビリテーションについて紹介します。

 

個別指導による術前リハビリテーション

患者サポートセンターでの術前リハビリテーションの内容

手術前の患者さんを対象に、呼吸練習や筋力・持久力トレーニングなどの方法を説明し、一緒に実演もします。手順を覚えて、自宅や入院中にご自身で実践していただくためです。また、術後のリハビリテーションの必要性についても説明します。食道がんの手術を受ける患者さん、頭頸部がん、胃がん、大腸がん、肝がん、胆道がん、膵がん、骨軟部腫瘍、婦人科がんなどの手術を予定していて合併症リスクが高い患者さんが対象です。

術前・術後リハビリテーションの必要性

一般的に、手術後は肺活量が低下します。手術前から呼吸練習を行い、腹式呼吸や痰の出し方を身に付けておくことで、肺炎や無気肺(痰などで気管支がふさがれ肺の一部に空気が入らなくなる状態)など術後合併症のリスクを軽減することができます。また、術前から筋力・持久力トレーニングで体力を維持することも、合併症の予防には重要です。さらに、手術の翌日からリハビリテーションを行うことで社会復帰も早まります。

がんと診断されると、安静にしなければと思い込んで運動をやめてしまう患者さんもいますが、活動量が減って体力が落ちると、手術や抗がん剤治療、放射線療法などがんの治療が受けられなくなることもあります。医師に運動を控えるように言われている患者さん以外は、積極的に体を動かすようにしてください。また、喫煙者は禁煙することも大切です。

呼吸機能と筋力・持久力をアップ

具体的に、手術の前後にはどのようなリハビリをするとよいのですか。

まずは、呼吸練習器という器具を使って、肺を覆っている呼吸筋を鍛えます。手術前から術後1カ月後まで、1日に10回×3セットの呼吸練習を続けます。

腹式呼吸練習は、手術後に呼吸が浅くならないようにするリハビリテーションで、鼻から息を吸いながらお腹を膨らませ、ゆっくり口から息を吐きながら腹部を凹ませます。自己排痰法は、安静呼吸と深呼吸、息を大きく吸った後に口を開いて「はっ」と強く短く息を吐き出すハフィング、咳を意識的に繰り返す方法です。手術後、自分で痰を出す方法を身に付けます。

筋力トレーニングは患者さんの年齢や体力に合わせ、脚、腕、お腹の筋肉などの鍛え方を指導します。さらに、歩行、早歩き、自転車、ジョギングなどの有酸素運動(持久力トレーニング)を週5回以上続けていただきます。継続できるように、患者さんの生活スタイルに合ったやり方で提案することを心がけています。

どの段階でもリハビリテーションの活用を

抗がん剤治療中や放射線治療中、積極的な治療が受けられなくなった段階でもリハビリテーションは有効ですか?

これまでは手術前後のリハビリテーションについてお伝えしてきましたが、抗がん剤治療中や放射線治療中、積極的な治療が受けられなくなった段階でもリハビリテーションによって、体力維持・向上、倦怠感などの軽減が期待できます。リハビリテーションに関して知りたいことがありましたら、患者サポートセンターにご相談ください。自分らしい生活を続けるために、リハビリテーションを活用してほしいと思います。

 

がん術前・術後のリハビリテーションの画像