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帯状疱疹(たいじょうほうしん)について

帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは?


水痘・帯状疱疹ウイルスというヘルペスウイルスに初めて感染した場合は水痘(みずぼうそう)となりますが、この感染によってウイルスが後根神経節(こうこんしんけいせつ)という部分に潜伏することが知られています。この潜伏しているウイルスが、ストレスや免疫力の低下した時に再度症状を引き起こすことを帯状疱疹と言います。多くの場合ピリピリするような痛みを伴う皮疹が出現し、帯状疱疹後神経痛という強い痛みが続く場合もあります。それだけでなく、帯状疱疹は心筋梗塞や脳卒中のリスクを増加させることも知られています(参考文献1)

参考文献

  1. Kim MCらの報告(J Am Coll Cardiol. 2017)(外部サイトにリンクします) 

帯状疱疹はがん患者でリスクが高い

免疫不全のない人と比べると、固形がん患者さんは約5倍、血液がん患者さんは約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています(参考文献1)。また、帯状疱疹の診断から30日後の時点でも疼痛が固形がん患者さんの14.0%、血液がん患者さんの18.9%で見られ、90日後でもそれぞれ8.6%、5.7%に見られたことが報告されています(参考文献3)。イギリスの研究(2000-15年)では、帯状疱疹のリスクは少なくともがんに罹患してから2-3年以上持続することが示されました(参考文献3)。また、この研究報告では50歳以下のがん患者さんでもリスクが高いことが示されています。

表 年齢別の帯状疱疹発症リスク
(がんのない患者さんと比較したオッズ比 いずれの値も統計学的に有意にがん患者さんのリスクが高いことが示されています。)

  固形がん 血液がん
50歳未満 1.7    3.08   
50-60歳 1.34 3.36
60-70歳 1.2 12.84
70-80歳 1.13 2.12
81歳以上 1.11 1.77

参考文献


  1. Sullivan KMらの報告(Vaccine. 2023)(外部サイトにリンクします)
  2. Habel LAらの報告(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2013)(外部サイトにリンクします)
  3. Hansson Eらの報告(Br J Cancer. 2017)(外部サイトにリンクします)

注:オッズ比:がん患者さんが帯状疱疹にかかる確率を、帯状疱疹にかからない確率で割った値をオッズと呼びます。このオッズ(がん患者さんが帯状疱疹にかかるオッズ)を一般の人が帯状疱疹にかかるオッズで割った値がオッズ比です。両者のオッズが同じ場合オッズ比が1となります。がん患者さんが帯状疱疹にかかるオッズの方が高い場合にオッズ比は1を超えます。

帯状疱疹の予防

免疫力が低下した場合に帯状疱疹にかかるリスクが高まるため、普段からバランスの良い食事、睡眠などの体調管理が大切となります。また、50歳以上の人や18歳以上で帯状疱疹のリスクが高いがん患者さんへのワクチンによる予防が勧められます。

ワクチンの効果

帯状疱疹のワクチンには2種類あり、現在小児への定期接種となっている生ワクチン(ビケン�)に加え、新しいワクチンとしてリコンビナントワクチン(シングリックス�)があります。一般の60歳以上における生ワクチン効果は61%、70歳以上では55%、帯状疱疹後の神経痛への効果は67%と報告されています(参考文献1)。一方、リコンビナントワクチンは50歳以上で97%、70歳以上でも91%、帯状疱疹後神経痛は88%と非常に高い効果を示しています(参考文献2,3)。また、リコンビナントワクチンは血液がん患者さんを対象とした研究でも87%と非常に高い効果を示しています(参考文献4)。このため米国疾病予防管理センター(CDC)は50歳以上の方や19歳以上の免疫不全の方への帯状疱疹ワクチンとして生ワクチンよりもリコンビナントワクチンを推奨しています(参考文献5)

抗がん剤治療中やステロイド剤による治療中のような高度な免疫低下がある場合には生ワクチンの接種ができない点にも注意が必要です。生ワクチンには弱毒化したウイルスが含まれるため、このウイルスに感染してしまう場合があるからです。リコンビナントワクチンにはこの心配はありません。

注:ワクチン効果:ワクチン未接種のがん患者さん1万人が研究期間中に100人帯状疱疹を発症し、ワクチンを接種したがん患者さんでは1万人中40人発症した場合のワクチン効果は60%となります。(100人発症するところ、60人の発症を予防したという意味。)

参考文献


  1. Oxman MNらの報告(N Engl J Med. 2005)(外部サイトにリンクします)
  2. Lal Hらの報告(N Engl J Med. 2015)(外部サイトにリンクします)
  3. Cunningham ALらの報告(N Engl J Med. 2016)(外部サイトにリンクします)
  4. Dagnew AF らの報告(Lancet Infect Dis. 2019)(外部サイトにリンクします)
  5. CDCのHP(外部サイトにリンクします)

お問い合わせ

国立がん研究センター東病院 医療安全管理部門 感染制御室
電話番号:04-7133-1111(代表)
受付時間:平日8時30分から17時(土曜日、日曜日、祝日、年末年始を除く)

更新日:2024年2月2日