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カルボプラチン・パクリタキセル療法

カルボプラチン注

カルボプラチンは、プラチナ(白金)を含む金属化合物です。がん細胞内の遺伝子本体であるDNAと結合することにより、がん細胞の分裂を止め、やがて死滅させます。

パクリタキセル注

パクリタキセルは、太平洋イチイの樹皮から取り出した成分です。細胞の分裂に必要な「微小管」とよばれるタンパク質が作られる段階を途中で止めるはたらきがあります。その結果、がん細胞が増えることを阻止し、やがて死滅させます。パクリタキセルの成分や溶解補助剤が原因と考えられるアレルギー症状が報告されています。この症状を予防するために、あらかじめ抗アレルギー薬を点滴します。また添加剤として無水アルコールを含んでおりますので、アルコールに対しアレルギーのある方やお酒に弱い方は、お伝えください。

カルボプラチン・パクリタキセル療法による副作用

以下のような箇所に副作用が現れやすいです。

  •   消化管(口内炎・下痢など)
  •   骨髄*(貧血・感染しやすくなる*など)
  •   皮膚や毛根(脱毛・皮膚障害・爪の変化など)
  •   神経組織 
  •   生殖機能

*自覚症状はなく検査を実施してわかる副作用です。

アレルギー症状(慎重な観察を行います)

アレルギー症状は点滴中又は点滴後比較的早くに現れます。頻度は高くはありませんが、重症となる場合もあり、すぐに対応することが大切です。このような副作用を防ぐためにあらかじめ別の薬を点滴や内服していただきます。万が一治療中に次のような症状が現れたら、すぐに医師・看護師・薬剤師に伝えてください。

こんな時はすぐにお伝えください

  • 息苦しい、顔がほてる、胸が痛い、発疹が出る、汗が出る

パクリタキセルとアレルギー症状
アレルギー症状が起きる時間帯は、パクリタキセル点滴開始後2~3分以内であり、ほとんどが30 分以内に発生します。但し、時間をおいて症状がでることもあります。また、初回とは限らず、2 回目以降の点滴の際に症状が現れることもあります。

吐気・嘔吐(長く続くと脱水などから全身状態の悪化に)

抗がん剤によって引き起こされる吐気や嘔吐には、次の3種類があります。 

  •  点滴直後から数時間以内にみられるもの
  •  点滴終了後24時間以降にみられ、数日間続くもの
  •  薬を点滴すると思っただけで起こる吐気・嘔吐

最近は吐気止めの薬でコントロールできるようになっています。 患者さんによって症状の程度はさまざまですが、症状が長く続く場合は、水分や栄養の補給が必要になってきますので、医師・看護師・薬剤師にお伝えください。

関節や筋肉の痛み(つらい時はがまんせずに相談)

治療2から3日後あたりから、肩や背中、腰や腕などの筋肉が痛くなったり、関節が痛くなることがあります。ほとんどは一時的で、5から6日以内に回復しますが、つらい時はがまんせずに医師や看護師・薬剤師に相談しましょう。

感染症(予防と早期発見で重症になる前に)

抗がん剤の治療で、白血球の数が減少するため、抵抗力が落ちてくることがあります。抵抗力が落ちた人では感染症が重くなりやすく、全身の臓器が正常にはたらかなくなる可能性も高くなります。特に、白血球の数が最も少なくなる点滴後7から14日目は注意が必要です。感染症を引き起こさないため、また、感染しても重篤化させないために、次のような症状があったらすぐに医師・看護師・薬剤師に連絡しましょう。

こんな時はすぐにお伝えください

  • 熱がある、せきが出る、寒気がする、のどが痛い、排尿時に痛みがある、トイレが近い、下痢をしている

感染症の防止のために

  • 必ずうがい、手洗いをしましょう
  • なるべく人ごみを避けましょう
  • 風邪をひいている人になるべく近づかないようにしましょう

病院では、抗菌剤 (細菌などの病原体を殺す薬です) や顆粒球増加因子 (白血球の数を増やす薬です) を使うことがあります。

脱毛(避けられない副作用でも治療が終われば約半年で回復)

個人差はありますが、治療2から3週後あたりから毛が抜け始めます。脱毛は一時的なもので、治療が終了して6から8週後には毛がはえ始め約半年でほぼ回復します。新しく生えてきた毛の質が一時的に変わってしまうことがありますが、やがて以前の髪質に戻ってきます。また、髪の毛が抜けるときにピリピリ感が出てくることもあるので、頭皮への刺激はなるべく避けましょう。

間質性肺炎(せき、発熱、息切れなどをチェック)

間質性肺炎は、肺が炎症を起こし、機能が低下する病気です。その結果、息切れ、発熱、せき、呼吸困難などの症状が起こり、ときに重い症状になることもあります。抗がん剤治療を受ける前に肺に炎症があったり、肺線維症を指摘されたことのある方は起こりやすいと考えられています。間質性肺炎の初期には、軽度の発熱、せきなど風邪とよく似た症状が起こることが多く、ただの風邪と見過ごされやすいことがありますので、このような症状が少しでも現れたら、自分で判断せず、すぐに受診しましょう。 

手足のしびれ(ボタンがかけづらい・手先足先がつめたい)

治療3から5日後から手足のびりびり感や、刺すような痛み、感覚が鈍くなったりすることがあります。治療の継続に伴って、症状が強まる傾向にあり、時には、しびれのために治療を中止することもあります。気になった時は、がまんせずに医師や看護師・薬剤師に相談しましょう。  

点滴中の血管外への漏れ(違和感・腫れ・痛みがあったらすぐにお伝えください)

注射液が血管(静脈)の外に漏れてしまうと、注射部位が硬くなったり、腫れて痛みを感じたりすることがあります。点滴を受けながら、体勢を変えたり、歩いたりすることもできますが、点滴の前にはトイレをすませておいた方が良いでしょう。点滴の間、体や腕をまったく動かさずにいる必要はありませんが、腕の静脈に針を挿入している場合、体や腕を動かして点滴の針が抜けやすくなることがあります。点滴の管が引っ張られたり、体のどこかで踏んでしまわないように気をつけましょう。 

貧血症状

息切れ・動悸・手足が冷たい・倦怠感など。
激しい運動は控え、無理のない範囲でゆっくり動き始めましょう。疲れやすい場合には、十分な休養をとってください。貧血にはまれではありますが輸血で対処することがあります。

出血症状

圧迫による内出血・鼻血・血便・血尿など。
けがや打撲に注意しましょう。かみそりは使わず電気かみそりを使うようにしましょう。正座は下肢を圧迫するので避けましょう。出血にはまれではありますが輸血で対処することがあります。

食欲不振

食べたいときに、好きなものを食べるようにしましょう。長く症状が続く場合は医療スタッフに相談しましょう。

下痢

脱水予防のため、水分補給を心がけましょう。消化によいものを食べ、食事は何回にも分けて少しずつとるとよいでしょう。排便時は、肛門周囲を清潔に保ちましょう。

便秘

水分を十分にとり、繊維の多い食べ物をとるとよいでしょう。十分に時間をかけて、おなかをさすりながら排便したり、排便を我慢せず毎日同じくらいの時間にトイレに座ってみると効果的です。

口内炎

しみる・痛み・歯ぐきの腫れ・潰瘍など。
治療前に虫歯を治し、常に口腔内を清潔に保ちましょう。歯ブラシはやわらかいものを使いましょう。こまめにうがいをしましょう。料理は熱いものを避け、冷まして食べると炎症部位への刺激が少なくなります。やわらかい料理を多めにすると食べやすいです。

重大な副作用 こんなときは連絡を

「重大な副作用」と呼ばれるものには次のようなものがあります。抗がん剤に限らず、どんな薬にもそれぞれの「重大な副作用」があり、まれではあるものの起こると重篤になってしまうものをいいます。もし気になる症状があればすぐにご連絡ください。

ショック

発赤・蕁麻疹・唇や手足のしびれ・動悸

心臓障害

 手足首のむくみ・息切れ・動悸

聴覚障害

難聴・耳鳴り

消化管障害

吐血・激しい腹痛

肝障害

皮膚や目の白い部分が黄色くなる・右側腹部痛

急性腎不全

 手足首のむくみ・側腹部痛・頭痛

腸炎

水のような下痢・下血

血栓・塞栓症

手足の痛み・急な息切れ・胸の痛み

脳梗塞

片側の手足のしびれ・ろれつがまわらない

肺梗塞

息苦しい

膵炎

急激な胃痛

麻痺性イレウス

ひどい腹痛

溶血性尿毒症

排尿困難・あざ・血便

成人呼吸促迫症候群

38度以上の急な発熱・呼吸困難

Stevens-Johnson症候群・Lyell症候群

皮膚の灼熱感・水ぶくれ・口内のあれ

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