トップページ > 共通部門のご案内 > 薬剤部 > 患者さんへのお役立ち情報 > がん種別化学療法について 使用薬剤とその副作用 > 膵がん > ティーエスワン(R)による治療
ティーエスワン(R)による治療
注:(R)は登録商標(Registered Trademark)マークの記載です。
ティーエスワン(R)は膵がん・胆道がんの治療に用いられる代表的な抗がん剤(内服薬)です。
使用する抗がん剤
ティーエスワン(R)
ティーエスワン(R)は世界中で広く治療に使われているフルオロウラシルという抗がん剤の効果を高め、副作用を少なくするために開発された薬(内服薬)で、3つの成分(テガフール・ギメラシル・オテラシル)が配合されています。
テガフール(抗がん剤)
体の中で徐々にフルオロウラシルに変わり、抗がん作用を発揮します。
ギメラシルフルオロウラシルの分解を抑えて効果を持続させます
オテラシル
消化器系の副作用(下痢など)を軽くします
ティーエスワン(R)による治療の副作用
予想される主な副作用
自覚症状があるもの
吐き気・嘔吐・食欲不振・口内炎・下痢などの消化器症状、色素沈着、発疹、疲労感 など
自覚症状がないもの
骨髄抑制(白血球減少・赤血球減少・血小板減少など)、肝機能低下 など
消化器症状
吐き気・食欲不振 (食事の工夫を)
吐き気は服用開始後1週間以内に起こることがあり、場合によっては吐いてしまうこともあります。薬を吐いてしまったときは記録を残し、その回は飲まずに診察時に医師に伝えてください。食欲不振は服用開始後約1週間ごろから現われてきます。
骨髄抑制
白血球の減少(感染症にかかりやすくなります)
白血球は体内へ細菌が入り込まないように守り、感染症を防ぐ重要な役割があります。白血球が減少すると、体の抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなります。一般的に薬を服用開始してから1週間前後に白血球の数が少なくなるといわれています。発熱や感染症の可能性がある場合は、抗菌剤を服用したり、点滴を受けたりすることもあります。感染症を引き起こさないようにするため、感染しても悪化させないためにも、早めの対策を心がけましょう。
赤血球減少(貧血症状につながります)
めまい・立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。貧血の程度が著しい場合は、輸血を行うこともあります。
血小板減少(出血しやすくなります)
血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。血小板の数が少なくなり、出血傾向がみられる場合は、輸血を行うこともあります。身に覚えのない内出血や血便・血尿・鼻血などが見られたら、すぐに連絡してください。
下痢(脱水になる危険性も)
脱水予防のために、水分補給を心がけましょう。排便後は、強くこすらないようにし、肛門周囲を清潔に保つようにしてください。症状がひどいときには、下痢止めの薬を服用することもあります。腹痛を伴ったり、1日4回以上の下痢や、夜中に下痢があるような時は、すみやかに医師に相談してください。
口内炎(食べ物がしみたり、痛みや歯ぐきの腫れ など)
口内炎が感染症の原因にもなることがあります。口腔内を清潔に保つためにうがいをこまめにしましょう。歯ブラシは毛の柔らかいものを使いましょう。食べ物は熱いものを避け、なるべく柔らかいものを食べるとよいでしょう。症状によっては、うがい薬や塗り薬を用いることがあります。
色素沈着(皮膚や爪が黒くなったりします)
皮膚や爪、指先などが黒くなったりします。直射日光にあたるところにできやすいとの報告もあるので、日差しの強い場所を避け、外出時は帽子や衣類で直射日光を避けることで予防になるかもしれません。
発疹(皮膚が赤くなったりかゆくなったりします)
首筋や手、足、背中などの皮膚が赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。刺激の少ない木綿の肌着を着用するなど、皮膚への刺激を避けましょう。特に飲み始めて数日以内に全身にかゆみや痛みを伴う場合は、医師・看護師・薬剤師に相談してください。
流涙(涙がでたり、目が充血したりします)
涙が止まらなくなったり、目が充血したり、目がかすんだりすることがあります。ひどい場合は、結膜炎や角膜炎になったり、涙が流れる管がつまることもあります。治療を始めたころよりも治療期間が長くなると症状が現れやすくなります。流水で目を洗うと症状が和らぐことがあります。また、目薬をさして対処する場合もあります。
ティーエスワン(R)による治療の重大な副作用
「重大な副作用」と呼ばれるものには次のようなものがあります。どんな薬にもそれぞれ「重大な副作用」があり、まれではあるものの起こると重篤になってしまうものをいいます。
間質性肺炎(0.3%)(咳、息切れ、発熱など)
日頃から自分の体調に変化がないか意識し、風邪に似た症状がないかどうかをチェックするようにしてください。
間質性肺炎は、頻度はごく少ないものの、ときに重い症状になる恐れがあり、特に注意すべき副作用です。肺が炎症を起こし、機能が低下するので、息切れ・咳・呼吸困難などの症状が現れます。初期には、軽度の発熱や咳など、風邪とよく似た症状が現れることが多く、ただの風邪と見過ごされやすいことがあるので、このような症状がある場合は、自分で判断せずにすぐに相談してください。疑いがあるときには、速やかに必要な検査を行い、適切な治療を行います。
その他の重大な副作用
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)(0.4%):内出血・血が止まりにくい
- 劇症肝炎(頻度不明):食欲不振・倦怠感・吐気・嘔吐・発熱・皮膚や目の白い部分が黄色くなる
- 脱水症状(頻度不明):口の渇き・頭痛・吐気・めまい・皮膚の乾燥・体温上昇・倦怠感
- 腸炎(0.5%):激しい腹痛・下痢
- 消化管潰瘍(0.5%)、消化管出血(0.3%)、消化管穿孔(頻度不明):腹痛・血便(黒色)・吐血
- 心筋梗塞、狭心症、不整脈、心不全(頻度不明):胸痛・失神・動悸・息切れ
- 急性腎不全(頻度不明):尿量が減る・手足のむくみ・頭痛
- 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)(頻度不明):皮膚の灼熱感・水ぶくれ・口内のあれ
- 白質脳症等を含む精神神経障害(頻度不明):記憶力低下・言語障害・眠気・手足の動きが鈍る・失禁
- 急性膵炎(頻度不明):腹痛・吐気・嘔吐
- 横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛・脱力感・尿が赤くなる
- 嗅覚障害(0.1%):においの感覚が弱くなる
その他、気になる症状がありましたら、医療スタッフにご相談ください。