トップページ > 共通部門のご案内 > 手術室 > 周術期患者管理チーム
周術期患者管理チーム
東病院では、侵襲の高い手術を受ける方や合併症のある方、高齢者など、手術前後のリスクが高いと考えられる患者さんを対象に、より安心して手術を受けられる環境づくりを行う「周術期患者管理チーム(East Surgical Support Team: ESST)」が活動しています。
周術期患者管理チーム(ESST)とは
「周術期」という言葉は耳慣れない方も多いと思いますが、術前~術後の一連の期間の総称です。手術を安全に乗り切るには、周術期のさまざまなリスクを察知して適切に対応することが大切です。リスクには、手術の方法や内容に伴うものとともに、併存症や習慣、体格、精神状態、年齢などからくる患者さん固有のものがあります。具体的には、(1)手術や術後の回復に影響を与えるもの(併存症、肥満、高齢、飲酒習慣など)、(2)術後の生活に影響を与えるもの(リハビリやセルフケアが必要な手術、外見上の変化が予想される手術など)、(3)手術に対する不安、などがあげられます。そのため、一人ひとりの患者さんについて、リスクの有無や種類、その程度などを詳しく評価する必要があります。
今までは、担当医や担当看護師が入院後に評価を行い、必要に応じて各専門部門に相談して対応していました。しかし、最近は高齢化が進み、心臓病・糖尿病・呼吸障害などの併存症をもつ方の割合が多く、各部門への相談が必要なケースが増えています。また、リスクの種類によっては、術前から対応が必要な場合もあります。さらに、多くの患者さんに迅速に手術を受けていただくため、入院から手術までの準備期間が短くなっており、入院後に担当医や担当看護師がリスクの評価・対応を始めると、対応が遅れて予定通り手術が受けられなかったり、リスクを見逃してしまったりする可能性が出てきました。
そこで、このような問題を解決し、患者さんが安心して手術を受けられるように、外科医、麻酔科医、看護師、栄養士、理学療法士、歯科医、薬剤師、糖尿病専門医などが連携して、周術期のケアやサポートを行う周術期患者管理チーム(ESST)を発足させました。
侵襲(身体的負担)の高い手術を受ける方や併存症のある方、高齢の方など、周術期のリスクが高いと考えられる患者さんを対象に、入院前に専門の『手術準備外来』を受診してもらい、リスクを詳細に評価して、必要に応じて専門家によるケアやサポートを行います。手術に対して不安が強い患者さんも受診していただくことができます。
図1:周術期患者管理チーム(ESST)とは
チームの構成
周術期患者管理チームは、外来での窓口とチームのコーディネーター役を担う看護師、麻酔科医、歯科医、理学療法士、薬剤師、栄養士、精神科医、糖尿病専門医などから成ります(図2)。個々の患者さんのリスク要因(表1)や状態に応じて、さまざまな職種が連携し、手術を受ける患者さんの身体的・精神的サポートを行います。
図2:周術期患者管理チーム(ESST)の構成
表1:周術期患者管理チームが対象とする手術・患者さんの状態
入院準備センター
チームの核となる活動が「入院準備センター」です。入院準備センターでは、看護師が患者さん・ご家族とお話をしながら、病歴や周術期のリスク要因の確認、手術のオリエンテーションなどを行っています。手術オリエンテーションを行うことで、入院中から退院後までをイメージして治療に向けた準備をできるように支援しています。また、禁煙・禁酒のサポートなどもしています。担当医に聞けなかったことやちょっとした疑問、不安などにもお答えしますので、お気軽にご相談ください。
図3:入院準備センターの流れ
注: 入院準備センターは、外科担当医が手術の内容や患者さんの体調などから判断して紹介するシステムとなっています。担当医の紹介がない場合は基本的に受診できませんのでご注意ください。
専門家によるケア、サポート
入院準備センターでの面談により、専門家によるケアやサポートが必要と判断された場合には、主治医に相談した上で、歯科医や理学療法士、栄養士、精神科医などに紹介します。こうして専門家が外来からかかわることによって、患者さん・ご家族が安心して手術に臨めるようにサポートするとともに、術前から術後まで一貫した質の高い医療を提供します。
活動実績
2010年度から活動を開始し、近年は毎年5000名程度の患者さんが入院準備センター(外科)を受診しています(図4)。外来から患者さんにきめ細かく対応することにより、次のような効果がみられています。
- 薬剤師が初診時に服薬内容を確認することによって、抗凝固剤などの重要な薬に対する介入が早くなり、手術を予定通り実施することができるようになりました。
- 手術に影響を与える喫煙や飲酒を早めに止めることで、少しでも手術のリスクを減らして手術を迎えられる患者さんが多くなりました。
- 介護保険申請など、手術した後に必要な手続きについて、手術する前から準備することができる患者さん・家族の方が増えました。
入院準備センターを受診した患者さん・家族の方からは、「入院する前にいろんなお話が聞けてよかった」「手術すると聞いて驚くばかりだったけど、落ち着くことができた」といった感想をいただいています。
図4:入院準備センター(外科)の受診者数
新たな取り組み
患者さん支援のため、IT (Information Technology)を用いた支援方法を順次導入しています。現在ではご自宅にいながらもタブレットや携帯電話で医療者からの説明・オリエンテーション動画を視聴できる環境を整備しています。また、院内でも事務手続きの方法などは動画によるご案内を行っています(図5)。
(実際の動画はこちら→治療に関すること | 国立がん研究センター 東病院 (ncc.go.jp))
図5: 入院準備センターにおける動画視聴スペース
また、外来診療や入院治療がより円滑に行われるよう各部門における連携体制の整備にも力を入れています(図6)。
図6: 入院準備センター/外来予約カウンター連携体制