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DCT(分散型臨床試験)
DCTとは
DCT(Decentralized Clinical Trial)とは、分散型臨床試験とも言われ、オンライン診療などのデジタル技術を用いて、試験参加者が医療機関に来院しない、あるいは来院する頻度を減らすことを意図した臨床試験のことです。
通常は臨床試験の実施にあたり、患者さんにはあらかじめ定められたスケジュールに従って研究実施機関へ繰り返しご来院いただく必要がありますが、遠隔地在住の患者さんにとっては、通院に伴う時間的・経済的・体力的な負担が大きな障壁となっていました。一方DCTでは、患者さんが自宅あるいは自宅近隣の医療機関(パートナー施設)から治験実施医療機関にオンラインでアクセスすることによって、遠方の研究実施機関への通院の負担を減らすことができるようになります。
研究実施機関にとっても、より広い範囲から臨床試験への参加を促進することができるというメリットがあります。
こうした仕組みによって臨床試験への参加が容易となり、医薬品開発のスピードが速くなることで、特に患者さんが少ない希少疾患や小児疾患の領域でのドラッグラグ・ドラッグロスの解消につながることが期待されています。
DCTのタイプ
DCTの典型的なタイプとして、直接診察タイプ、派遣タイプ、パートナー施設タイプが挙げられます。
直接診察タイプは研究実施機関の研究責任医師もしくは研究分担医師(以下、研究担当医師)と患者間で直接オンライン診療を行います(Doctor to Patient; D to P)。このタイプは、新型コロナ感染症など、隔離が必要な患者を対象とした治験でよく用いられます。
次いで、派遣タイプは、訪問看護師等が患者の自宅に訪問し、検査・投薬を行うものです。神経難病などで患者が容易に移動できず医療機関に来院するケースによく用いられ、遠隔でもデータ取得が可能な場合に用いられます。訪問看護師が患者の自宅へ訪問し、検査や投薬を行うという形式や(Nurse to Patient; N to P)、研究実施機関の研究担当医師と患者間のオンライン診療に訪問看護師が同席する形式があります(D to P with N)。
最後に、パートナー施設タイプは、研究実施機関の研究担当医師と患者間のオンライン診療にパートナー施設の医師が同席する形式です(D to P with D)。パートナー施設タイプは、がん領域など必要とされる検査が医療機関でしか出来ない臨床試験で多く用いられます。
当院におけるDCT(パートナー施設タイプ)
当院では希少がんを対象とした医師主導治験に対してDCTを実装しています。
パートナー施設には、各種検査(血液検査、心電図、胸部X線、CT/MRI等)を医薬品GCP省令39条の2に基づき委託し、当院まで来院することが難しかった地域の患者さんに対し、居住地近隣のパートナー施設に通院することで、治験への参加を可能としました。
DCTへ参加するためには、パートナー施設へ受診していただき、治験へ参加する条件を満たすかどうかを検査する必要があります。
条件を満たした場合、パートナー施設と当院をオンラインでつなぎ、パートナー施設の主治医同席のもと、当院の医師から患者さんに治験に関する説明を行い、治験参加への同意を得ます。治験薬(治験薬が経口薬の場合)は、当院から患者さんの自宅へ直接配送し、患者さんは当院の医師の指示のもとで内服を行っていただきます。治験期間中の検査については、決められたスケジュールでパートナー施設にて検査を受けていただき、検査結果はパートナー施設から当院に共有されます。
こうした仕組みによって、患者さんは一度も当院へ来院することなく、治験へ参加することが可能となります。
パートナー施設タイプのDCTを行うための仕組み
DCTを可能とするためにはオンライン診療システムをはじめとして、多くの仕組みが必要となりますが、DCTのタイプによって必要な要素は異なります。当院で構築したパートナー施設タイプのDCT要素の例は以下の図のとおりです。
DCTオンライン診療システム
パートナー施設タイプのDCTでD to P with Dにてオンライン診療を実施する場合、パートナー施設の「かかりつけ医師」が患者のオンライン診療に同席することから、医学的情報を十分に把握することが出来ます。患者さんはパートナー施設に準備したオンライン診療システムに入っていただくので患者さん自身の機器の作業などは少なくなります。
DCTデータ共有システム
がん患者を対象とした治験では、治験データとして測定したバイタルサインやCT/MRIによる腫瘍評価のデータが、診察において治療方針を決定する際の必要な判断材料となります。当院ではでクラウド型のデータ転送システムを構築し、セキュリティを担保した形で施設間のデータ転送と、タイムリーな電子カルテへのデータ格納を可能としました。
治験薬配送(治験薬が経口薬の場合)
実際の治験薬の直接配送では、登録後から第1サイクルの1日目に実施するオンライン診療の前日までに患者宅へ送付します。パートナー施設でのオンライン診察にて、実施医療機関の治験担当医師が治験薬の投与が可能と判断すれば、患者に治験薬の内服開始の指示を出すことになります。
パートナー施設の一覧
- 四国がんセンター
- 島根大学医学部附属病院
- 熊本大学病院
- 鹿児島大学病院
- 高知大学医学部附属病院
- 愛知県がんセンター
- 岡山大学病院
- 琉球大学病院
- 富山大学病院
- 新潟大学医歯学総合病院
- 東海大学医学部付属病院
DCTを実施中の臨床試験
- 局所進行・再発類上皮肉腫に対するタゼメトスタットの第II相医師主導治験(TAZETTA試験:NCCH2107/MK012)
- BRAF融合遺伝子陽性の膵がんまたは低悪性度神経膠腫を対象とした医師主導治験(Perfume試験:NCCH2101/MK011)
DCTコンサルテーション
当院は、DCTの実施を予定する外部の医療機関等が、DCTを実施する際に直面する種々の問題点についてのコンサルテーションを、中央病院DCTコンサルテーションとして、受けつけています。
詳細は、中央病院DCTコンサルテーションのページをご覧ください。
DCTに関する実務手順書の公開
当院で実施した2つの医師主導治験の経験に基づく、手順書、マニュアル、各種文書を一般公開しました。各資料のダウンロードをご希望される場合は、下記のフォームにご記入のうえ、ダウンロードをお願いいたします。
お問い合わせ先
国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門
DCT事務局
Eメール:dct_ctm●ml.res.ncc.go.jp