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メトトレキサート療法 (HD-MTX療法)
HD-MTX療法は小児の骨肉腫において、AP療法 (シスプラチン/ドキソルビシン) 療法と組み合わせて治療します。
使用する抗がん剤
メトトレキサート注
メトトレキサート (MTX) は、核酸合成などに必要な葉酸を枯渇させ、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。
骨肉腫細胞は能動的にMTXを取り込む機構が欠落しているため、大量のMTXを投与する必要があります。しかし、正常で健康な細胞にも影響を与えるため、副作用 (骨髄抑制、粘膜障害、肝障害など) を回避するためには、MTXが体内から排泄されるまで (MTX血中濃度が0.1 µM未満になるまで) 葉酸製剤であるロイコボリンを6時間毎に投与する必要があります。大量のMTXは体内から尿中に排泄されるため、腎機能を低下させることがあります。腎臓を保護するために尿のアルカリ化や輸液投与を行います。尿が思うように出ない場合には利尿薬を使用して排尿を促します。
MTXは、身近な薬の中にも飲み合わせの悪いものが複数あるため、不明な点がありましたら医師や薬剤師にご相談ください。
HD-MTX療法の副作用
骨髄抑制
抗がん剤を使用すると血液を造る骨髄も影響を受け、白血球、赤血球、及び血小板が減少することがあります。
白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)
白血球は、病原体から身体を守る (感染を防ぐ) 働きを持った血液成分の1つです。白血球が一定レベル以下に減少すると抵抗力が低下し、感染にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は、感染予防策が大切です。また扁桃炎・虫歯・膀胱炎・おむつかぶれなどがある場合、治療開始前に担当医とご相談ください。
赤血球の減少 (貧血症状につながります)
めまい、立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。
血小板の減少 (出血しやすくなります)
血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。赤血球や血小板の輸血を必要とする場合があります。血液検査によって確認しますが、貧血症状が改善しない場合や出血傾向が続く場合は、早めに担当医へ連絡してください。
腎障害
メトトレキサートによって腎機能を悪くする可能性があります。腎機能が悪化すると、薬が体外に排泄されにくくなり、薬の副作用が出やすくなることがあります。また、老廃物が体外に排泄されにくくなったり、尿が出にくくなるために不必要な水分が体内にたまることによって電解質異常やむくみが見られることがあります。一度失った腎機能を回復させることは難しいので、退院後は意識して水分摂取を心がけることが大切です。
吐き気・嘔吐
HD-MTX療法では、吐気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が発現することがあるため、吐気止めを使用して予防します。
脱毛
脱毛の程度に個人差はありますが、薬を点滴してから2から3週間が過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。この脱毛は一時的なもので、治療を終了してから2から3ヶ月で髪が生え始めます。新しく生えてきた毛髪は、色や質が以前と変わることがあります
粘膜障害
HD-MTX療法を行ってから1週間前後に口内炎が現れ、2週間前後に下痢が現れることがあります。食事や水分が摂れない場合には、担当医へ連絡してください。
相互作用で注意が必要な薬
メトトレキサート投与前日からロイコボリン投与終了時までは、使用できないお薬があります。中止が必要な期間は、個人によって異なりますので医師の指示に従ってください。
中止が必要な薬
非ステロイド性消炎鎮痛薬 (ロキソプロフェン錠など)、スルファメトキサゾール・トリメトプリム (ダイフェン配合錠など)、ペニシリン系抗菌薬、シプロフロキサシン、プロトンポンプ阻害薬 (ランソプラゾールOD錠など) などは、メトトレキサートの副作用を増強する可能性があります。メトトレキサートは、身近な薬の中にも飲み合わせの悪いものが複数あるため、不明な点がありましたら医師や薬剤師にご相談ください。
その他、気になる症状がありましたら、 医師・看護師・薬剤師にご相談ください。