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ドキソルビシン/イホスファミド療法 (AI療法)
AI療法は、2種類の抗がん剤 (ドキソルビシン、イホスファミド) を組み合わせた治療法です。
使用する抗がん剤
ドキソルビシン注 (アドリアマイシン)
ドキソルビシンは、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。薬は赤色をしているため、薬を注射してから1から2日の間、尿や汗に色 (赤色・桃色・橙色など) が着くことがあります。その後、元に戻りますので心配はいりません。心疾患の既往がある方は、治療を開始する前に医師へ報告してください。
イホスファミド注
イホスファミドは、シクロホスファミドよりも有効性にすぐれ、かつ毒性の少ない化合物を探索する過程において発見された薬です。腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。イホスファミドは体内で分解され、尿中に排泄されます。この分解物 (アクロレイン)が出血性膀胱炎 (尿が赤みを帯びる、尿の回数が増える、残尿感がある、排尿時に痛みがあるなど)を誘発することがあります。出血性膀胱炎を予防するために、アクロレインを無毒化するメスナを使用します。水分を多めに摂取し、たくさん排尿することによって膀胱炎を予防することができます。排尿時痛や残尿感、子どもの場合、トイレに行く様子がおかしいと感じた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。
AI療法の副作用
骨髄抑制
抗がん剤を使用すると血液を造る骨髄も影響を受け、白血球、赤血球、及び血小板が減少することがあります。
白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)
白血球は、病原体から身体を守る (感染を防ぐ) 働きを持った血液成分の1つです。白血球が一定レベル以下に減少すると抵抗力が低下し、感染にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は、感染予防策が大切です。また扁桃炎・虫歯・膀胱炎・おむつかぶれなどがある場合、治療開始前に担当医とご相談ください。
赤血球の減少 (貧血症状につながります)
めまい、立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。
血小板の減少 (出血しやすくなります)
血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。赤血球や血小板の輸血を必要とする場合があります。血液検査によって確認しますが、貧血症状が改善しない場合や出血傾向が続く場合は、早めに担当医へ連絡してください。
腎障害
イホスファミドによって腎機能を悪くする可能性があります。腎機能が悪化すると、薬が体外に排泄されにくくなり、薬の副作用が出やすくなることがあります。また、老廃物が体外に排泄されにくくなったり、尿が出にくくなるために不必要な水分が体内にたまることによって電解質異常やむくみが見られることがあります。一度失った腎機能を回復させることは難しいので、退院後は意識して水分摂取を心がけることが大切です。
吐き気・嘔吐
AI療法では、吐気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が発現しやすいため、複数の吐気止め (注射薬と内服薬) を組み合わせて予防します。抗がん剤の点滴当日に現れる急性のものと、点滴終了後2日目から7日目に現れる遅発性のものがあります。吐気止めを使用して症状を和らげます。
脱毛
脱毛の程度に個人差はありますが、薬を点滴してから2週間から3週間が過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。この脱毛は一時的なもので、治療を終了してから2か月から3ヶ月で髪が生え始めます。新しく生えてきた毛髪は、色や質が以前と変わることがあります
口内炎
AI療法を行ってから1週間前後に現れることがあります。
心毒性
ドキソルビシンには、心臓に影響を及ぼす副作用があるため、生涯にわたって投与する累積量の上限が決まっています (500 mg/m2)。心機能を評価するために心電図検査や心臓超音波検査を行います。検査は治療開始時だけでなく、治療期間中や治療終了後にも行うことがあります。主な心臓への副作用症状として、息切れ、動いた時の息苦しさ、胸痛、足の浮腫み、頻脈 (脈が速くなる) などがありますので、症状が現れた場合には担当医にご相談ください。
中枢神経障害
イホスファミドによって傾眠 (日中に眠ったり、うとうとする時間が増える) や焦燥感 (落ち着かない、ソワソワする) などの軽度の症状から、痙攣や昏睡などの重篤なものまで様々な中枢神経症状が現れることがあります。多くの場合、イホスファミドの中止によって自然に回復しますが、完全に回復せずに後遺症が残った事例が報告されています。確立した予防法はなく、投与量に比例して発現が増えるため、発現した症状によって、お薬の減量や中止を検討します。
点滴部位における皮膚障害
点滴の針を刺している場所やその付近に痛み、熱感、又は違和感等の不快感がある場合には、すぐにお知らせください。薬が血管外に漏れている可能性があります。点滴の際のわずかな漏れでも、放置すると漏れた部位に炎症や壊死を起こすことがあります。点滴投与後、数日してから上記症状が出現した場合にも、すぐに担当医へご連絡ください。
その他、気になる症状がありましたら、 医師・看護師・薬剤師にご相談ください。