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VAC療法

VAC療法は、3種類の抗がん剤 (ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミド) を組み合わせた治療法です。3種類の薬剤を1日で投与するVAC療法とアクチノマイシンDを5日間に分割して投与するiVAC療法があります。病気の進行状況によってVAC療法とiVAC療法のどちらかを選択します。

使用する抗がん剤

ビンクリスチン注

ビンクリスチンは、ニチニチソウという植物に含まれる成分から作り出された抗がん剤で、細胞が分裂する際に必要な細胞構成成分のひとつである微小管に作用します。微小管を構成しているチュブリンという蛋白質の結合を阻害することによって腫瘍細胞の増殖を阻害し、死滅させます。ビンクリスチンは、短時間で静脈内に投与します。ビンクリスチンを投与すると、手や足がピリピリするなどの異常な感覚、便秘 (便通がない、便が硬いなど)や腸閉塞 (お腹が痛む、お腹が張る、嘔気・嘔吐など)などの末梢神経障害が起こることがあります。上記のような症状が出た場合は、症状が軽いうちに医師、看護師または薬剤師に報告してください。

アクチノマイシンD注

アクチノマイシンDは、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。薬は橙赤色をしています。アクチノマイシンDは、短時間で静脈内に投与します。お腹が痛む、脚がむくむ、浮腫を伴った紅斑、眼球粘膜の充血などの症状が見られた場合は、すぐに医師、看護師または薬剤師に報告してください。初期の軽い症状のうちに発見できれば危険性を回避できますが、そのまま放置すると命にかかわることがあります。

シクロホスファミド注

シクロホスファミドは、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。シクロホスファミドは体内で分解され、尿中に排泄されます。この分解物 (アクロレイン)が膀胱障害 (出血性膀胱炎)を誘発することがあります。水分を多めに摂取し、たくさん排尿することによって膀胱炎を予防することができます。排尿時痛や残尿感、子どもの場合、トイレに行く様子がおかしいと感じた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。

VAC療法の副作用

骨髄抑制

抗がん剤を使用すると血液を造る骨髄も影響を受け、白血球、赤血球、及び血小板が減少することがあります。

白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)

白血球は、病原体から身体を守る (感染を防ぐ) 働きを持った血液成分の1つです。白血球が一定レベル以下に減少すると抵抗力が低下し、感染にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は、感染予防策が大切です。また扁桃炎・虫歯・膀胱炎・おむつかぶれなどがある場合、治療開始前に担当医とご相談ください。

赤血球の減少 (貧血症状につながります)

めまい、立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。

血小板の減少 (出血しやすくなります)

血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。赤血球や血小板の輸血を必要とする場合があります。血液検査によって確認しますが、貧血症状が改善しない場合や出血傾向が続く場合は、早めに担当医へ連絡してください。

末梢神経障害

末梢神経には、運動神経、感覚神経、自律神経の3種類があり、私たちの日常生活で重要な働きをしています。どの神経の働きが悪くなるかによって現れる症状が異なります。

  • 運動神経障害・・・「手や足の力が入らない」、「物をよく落とす」、「歩行がうまくできない」、「足先が垂れてつまずきやすい」など
  • 感覚神経障害・・・手や足が「ピリピリとしびれる」、「ジンジンと痛む」、「感覚がなくなる」、「手袋やストッキングを着けているような感覚になる」など
  • 自律神経障害・・・「便通がない」、「お腹が痛む」、「手や足の皮膚が冷たい」、「下半身に汗をかかない」など

吐き気・嘔吐

VAC療法では、吐気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が発現しやすいため、複数の吐気止め (注射薬と内服薬) を組み合わせて予防します。抗がん剤の点滴当日に現れる急性のものと、点滴終了後2から7日目に現れる遅発性のものがあります。吐気止めを使用して症状を和らげます。

脱毛

脱毛の程度に個人差はありますが、薬を点滴してから2週間から3週間が過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。この脱毛は一時的なもので、治療を終了してから2か月から3ヶ月で髪が生え始めます。新しく生えてきた毛髪は、色や質が以前と変わることがあります。

口内炎

VAC療法を行ってから1週間前後に現れることがあります。

点滴部位における皮膚障害

点滴の針を刺している場所やその付近に痛み、熱感、又は違和感等の不快感を感じた場合には、すぐにお知らせください。薬が血管外に漏れている可能性があります。点滴の際のわずかな漏れでも、放置すると漏れた部位に炎症や壊死を起こすことがあります。点滴投与後、数日してから上記症状が出現した場合にも、すぐに担当医へご連絡ください。

その他、気になる症状がありましたら、 医師・看護師・薬剤師にご相談ください。

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